独身子ナシ、作る予定もないんですが……もし自分に子どもがいたら読ませたい5冊です。

1冊目:『高村光太郎詩集』(岩波文庫)

まずは『高村光太郎詩集』(岩波文庫)にも収録されている「ぼろぼろな駝鳥」を小学校へ入学する頃に。

画像: 『高村光太郎詩集』 「言葉と向き合う原体験にもなった」という「ぼろぼろな駝鳥」ほか、93の詩を収録。作者の真実への思いから生まれた13行の短い詩は、生前自ら編んだ詩集で読むことができる。

『高村光太郎詩集』
「言葉と向き合う原体験にもなった」という「ぼろぼろな駝鳥」ほか、93の詩を収録。作者の真実への思いから生まれた13行の短い詩は、生前自ら編んだ詩集で読むことができる。

簡単な言葉で書かれた短い詩ですが、文字の羅列が情報を記すだけではなく、メッセージを伝えられること、感情に訴えかけることができることを、この詩で学んでほしい。詩の最後にある「人間よ、もう止せ、こんな事は。」という一文は、5〜6歳でも何かしら感じることがあると思うし、人生の色々な局面で思い返してほしい。

今の世の中は、背中を押してくれる言葉ばかりが溢れているけど、時には立ち止まって考えることも、後戻りする勇気を持つことも必要だと思うんですよ。俺は塾の国語のテストで初めてこの詩を読んで、もうテストどころじゃないくらい衝撃を受けました。直球勝負、13行の詩の中にある全ての言葉が問題提起になっている。未だにこれを超える詩には出会えていません。

2冊目:三田村信行『おとうさんがいっぱい』(フォア文庫)

2冊目は、読書感想文の課題図書に選定してほしい、三田村信行『おとうさんがいっぱい』(フォア文庫)を、小学校2〜3年生の夏休みに。

画像: 『おとうさんがいっぱい』 「表題作以外の4編もトラウマ級。大人が読んでも絶対ハマる!」。三田村信行のシュールな文学世界を、佐々木マキの挿絵が押し拡げるロングセラー。小学校中・高学年向きの児童文学。

『おとうさんがいっぱい』
「表題作以外の4編もトラウマ級。大人が読んでも絶対ハマる!」。三田村信行のシュールな文学世界を、佐々木マキの挿絵が押し拡げるロングセラー。小学校中・高学年向きの児童文学。

5つ入った短編、全部不条理。表題作は、3人に増えたお父さんから、主人公の少年が1人を選び、選ばれなかったお父さんたちはどこかへ連れて行かれ、日常を取り戻したと思ったら、最後にもう1人の自分が現れて終わる。この裏切りの1行、これこそ物語の一番のカタルシス!

国語の教科書に載っている物語は、人も死なないし誰も騙されない、綺麗事ばかり。でも世の中は違うじゃないですか。子どもが読み終わったらオレンジジュースで晩酌しながら、書かれていなかった部分について話したいです。どうなると思う? って。

3冊目:『驚愕の曠野』(新潮文庫)

中学2年、俺は筒井康隆先生の本を読んで小説家を目指すのやめました。それまでは俺も将来なんか書いてやるぞ! と意気込んでたけど、こんな面白い文章書けるわけないと打ちのめされた。中でも『驚愕の曠野』(新潮文庫)はヤバかった。

画像: 『驚愕の曠野 自選ホラー傑作集2』 初版1988年のホラー小説。死んでも死んでも魔界で新しい生を得てしまう少年の運命は。「人を不快にさせる天才、筒井康隆先生の面目躍如! 白紙のページもあったり反則連発です」

『驚愕の曠野 自選ホラー傑作集2』
初版1988年のホラー小説。死んでも死んでも魔界で新しい生を得てしまう少年の運命は。「人を不快にさせる天才、筒井康隆先生の面目躍如! 白紙のページもあったり反則連発です」

332章から始まる作中小説を読み聞かせてる人がいて、その人もその小説の登場人物で……って、もう視点がどこにあるのか分からなくなる。こんなことしていいの? 反則なんじゃないの? って読みながら混乱しつつ、度肝を抜かれて。俺のメタフィクション初体験です。いきなり読ませるんじゃなく、ある程度本を読んで正統を知ったうえで、この反則技を仕掛けたい。小学校高学年から中学生くらいかな。にしても、30年くらい前にこれを書いてる筒井先生、バカ攻めです。先見の明がイカれてますよね。

4冊目:塩野七生『ローマ人の物語』(新潮文庫)

そしてとにかく長い、文庫なら43巻続く塩野七生『ローマ人の物語』(新潮文庫)。

画像: 『ローマ人の物語』 イタリア在住の塩野七生の代表作で、15年に渡り連続刊行された歴史小説。「戦術家ハンニバルの無双譚が大好き。まずは1巻と2巻をぜひ!」。文庫版は全43巻。

『ローマ人の物語』
イタリア在住の塩野七生の代表作で、15年に渡り連続刊行された歴史小説。「戦術家ハンニバルの無双譚が大好き。まずは1巻と2巻をぜひ!」。文庫版は全43巻。

これは中学3年間かけても読ませたいです。これ読んだらローマが好きになる。そこから世界史の授業を受けると、小説と歴史の違いに気づく。たとえば、教科書には侵略者と書かれていても、小説を読むとその人にも人生のドラマがある。教科書にある一行のバックボーンを勉強する欲求を感じてほしい。勉強をつまらないって感じたときに、実はすごい面白いもんが隠されてるんじゃないかって想像することができたら最高じゃないですか。

5冊目:アーサー・C・クラークのSF『幼年期の終り』(ハヤカワ文庫SF)

最後の1冊は、俺の最初のセンスオブワンダー。アーサー・C・クラークのSF『幼年期の終り』(ハヤカワ文庫SF)です。高校生か、本好きだったら中学生でもいけるかな。

画像: 『幼年期の終り』 1953年発表の傑作SF長編。21世紀末、地球に到来した異星人。その管理の下で恵まれた生活に安住する人類の未来は? 「読めばカロリーも消費できちゃいます」。福島正実訳。

『幼年期の終り』
1953年発表の傑作SF長編。21世紀末、地球に到来した異星人。その管理の下で恵まれた生活に安住する人類の未来は? 「読めばカロリーも消費できちゃいます」。福島正実訳。

高校卒業までのどこかで読んで、世の中知った気になってるかもしんねえけど、もっとすごい人がいるぞ、想像力って無限大なんだぞって教えたい。俺は映画『2001年宇宙の旅』の原作者ね、と手に取ったはいいけど、バカ難しくて本棚に戻しかけた。でも読めないのが悔しくてなんとか読了。

初読のときは頭の中に映像を思い浮かべるのも一苦労でした。エンタメ作品は展開の面白さでどんどんページをめくっていけるけど、その読み方では太刀打ちできない。今どういう状況なんだ? 何が起きてるんだ? って迷いつつ、ひたすら文字だけで想像する。難しい本を嚙み砕く楽しさを教えてくれた1冊です。もうそれこそ、1500mダッシュしたくらい疲れるんですよ。日本語訳も硬かったりして、でもそれが段々クセになっていく。

アーサー・C・クラークの作品って、人間賛歌なんですよね。人生捨てたもんじゃないよってことを、とにかく難しく、いろんな方法で表現してる。まぁ、とりあえずこれを読んだら、もう怖いものなし。なんでも読めると思います。SFには漫画や映画の元ネタも大量に詰まってるから、知ったかぶりできるのもいい。読書ってつくづくコスパのいい娯楽だと思います。

 
子どもって、図鑑でも辞書でも全集でも、まとまったもん渡しとけば勝手に面白さを見つけるんですよ。魚偏ばっかりの読み方表とか渡しても覚えちゃう。覚える楽しさは誰しもあると思うので、面白い本を読ませて、世の中を斜めに歩く子になって欲しいです!

PROFILE

画像: PROFILE

カズレーザー(メイプル超合金)
1984年埼玉県生まれ。2015年にはM-1グランプリ決勝に進出。レギュラーテレビ番組「教えて!アプリ先生」(TOKYO MX)や、映画『アイアムアヒーロー』への出演も話題。金髪、全身赤ルックの肉体派キャラにして、年間数百冊の本を読むインテリ系芸人。

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