最近忙しくて本も読んでなければ、映画も観てないな。そんなひとも多いはず。でも、夜中ふとひとりの時間ができそうな日には、ちょっと無理にでも、自分のためにエンタメを用意してほしい。今回はエンタメ好きな3人の女性たち(トミヤマユキコさん、小川知子さん、湾岸A子さん)推薦の作品を紹介! まず手始めに、このなかのものから手にとってみてもいいかも。

『東京タラレバ娘』みたいな
本音トークがもっと読みたい!

<COMIC>
『A子さんの恋人』
近藤聡乃(エンターブレイン)

画像: <COMIC> 『A子さんの恋人』 近藤聡乃 (エンターブレイン)

ヒロインは、アメリカから帰国したばかりのA子。彼女の元恋人であるA太郎と、新恋人のA君による三角関係は、じれったいけど目が離せない。文系インテリ青年・A君もいいけれど、みんなの人気者・A太郎もチャーミングだしな……などと、A子になりきって悩むのも楽しい。A子、U子、K子の三人娘による、手加減ナシのガールズトークは必読。『タラレバ』より低温で、けれど言うべきは言う独特のバランス感覚がたまらない。(トミヤマユキコさん・以下:ト)

29歳のA子さんは、焦ってもいないし、結婚も考えていないし、何もかも先延ばしにしてしまう女の子。30歳前のモラトリアムな時間を周りの目も気にせず、成り行き任せにやりすごしている様がうらやましく、ずっと見ていたくなる。登場人物たちの名前がアルファベットで記号化されているので、彼女たちの言動からまわりにいる友人らの顔が思い浮かびニヤける。常に人を観察するような彼らの視線のゲスさは知性を感じさせて楽しい。(小川知子さん・以下:小)
 

これだけは外せない!

<COMIC>
『この世界の片隅に』こうの史代(双葉社)

画像: <COMIC> 『この世界の片隅に』こうの史代 (双葉社)

2016年、映画版が公開されたばかりの原作漫画は、漫画家こうの史代が約6年前まで「漫画アクション」で連載していたもの。原作を片渕須直監督が細部まで丁寧にアニメ化し、のんが奇跡的な名声優ぶりを披露している映画も素晴らしいが、原作も主人公のすずの日常が、突然降ってきた戦争によって変化していく様子が描かれる。

野草を摘んだり、絵を描いたり、食料がなくなったら何で代用できるかを楽しむことができる、すずさんのなんてことない日常生活がとても愛おしく、満たされた気持ちでいっぱいにさせられる。だからこそ、その当たり前の日々が一方的に奪われていく様や、感情に対して無感覚になっていく姿を見ていると胸が苦しくて仕方ない。

そして、私たちの生きている今とすずさんが生きていた時代が、地続きのものであると気づかされる。泣きたいわけじゃないのに涙が止まらず、まさに「悲しくてやりきれない」気持ちにさせられるのだが、同時に今ここに生きていられることを大切にしたくなる作品。(小)
 

雨宮まみさんが教えてくれたこと

<ESSAY>
『まじめに生きるって損ですか?』
 雨宮まみ(ポット出版)

画像: <ESSAY> 『まじめに生きるって損ですか?』 雨宮まみ (ポット出版)

他人の愚痴にじっくりとつきあう。安易なアドバイスはしない。そんな忍耐力の要る仕事を雨宮さんはこの本の中でやっている。しかも「煎茶とすみれの花の砂糖漬けをお出ししますね」なんて粋な計らいまでしてくれる。想像の中でそのお茶を飲み、愚痴ることで救われるのは、相談者であり、読者のわたしたちでもある。弱っている人を慈しむ言葉がいっぱい詰まった本書は、何かと厳しい現代社会を生きるすべての女性に必要な「座右の書」だ。(ト)

特に印象に残るのが、「私という存在をなかったことにしてほしい」と嘆く相談者に対して、「消えてしまいたくなるのは当たり前のこと」と応えている一節。どうしようもない孤独感そのものは消えなくても、「それはそれで『普通』だと思います」というひと言がどれだけ気持ちを楽にしてくれるか。自分自身、そして多くの女性の生きづらさに向き合い続けた雨宮さんの真摯な言葉は、受け取った読者のなかで消えることなく生き続けると思う。(湾岸A子さん・以下:湾)
 

もしかしたら
生き方が変わるかもしれない

<HUMANITIES>
『村に火をつけ、白痴になれ―伊藤野枝伝』栗原康(岩波書店)

画像: <HUMANITIES> 『村に火をつけ、白痴になれ―伊藤野枝伝』栗原康 (岩波書店)

アナキズム研究を専門とする政治学者・栗原康の本は「いま読むべきもの」のひとつ。『ひとつになっても、ひとつになれないよ』など、クセのある章タイトルや文体によって、読者を栗原ワールドへと誘うのが得意で、読めばきっと世界の見方が変わる。アナキストにして、ウーマンリブの元祖ともいわれる野枝について書かれたこの本は、貧乏でも気高く生きる女の烈しさが活写されており、そのエネルギーには圧倒されっぱなしだ。(ト)

1895年生まれの伊藤野枝は、婦人解放家という堅い肩書を持っているものの、出身地では変人として忌み嫌われていたほど、破天荒で自由に生きた人だった。その人生は短く、甘粕事件で28歳にして大杉栄と共に憲兵に殺害されてしまう。著者の栗原氏は、これまで真面目な文脈で紹介されてきた彼女の人生を、ひらがなばかりで嚙み砕いて表現。「あの淫乱女! 淫乱女!」から始まる目次を読んだだけで、この本の世界が伝わるだろう。(小)
 

キラキラとかじゃない、
結婚と恋心と生活って?

<ESSAY>
『かなわない』植本一子(タバブックス)

画像: <ESSAY> 『かなわない』植本一子 (タバブックス)

写真家・植本一子が夫(ラッパーのECD)や育児や恋愛について本音を吐露した一冊。家庭がありながら好きなひとができてしまったと夫に告げる(!)シーンも出てくる。恥ずかしいことや隠しておきたいことを、こんなにも素直に書けてしまうなんて、とんでもない才能だ。しかも、本人はセンセーショナルなことをしているつもりなどなく、ちょっと変わった人生を淡々とつづっているだけ、という平熱っぷり。これぞ大人の淒味だ。(ト)
 

ほかのオススメ☆エンタメ作品は
FRaU 1月号 をチェック!

2016年12月12日(月)発売 750円(税込)

画像1: これだけは読んでおきたい!タラレバ女子へ捧ぐエンタメ5選 画像2: これだけは読んでおきたい!タラレバ女子へ捧ぐエンタメ5選 画像3: これだけは読んでおきたい!タラレバ女子へ捧ぐエンタメ5選

選んでくれた人は……

トミヤマユキコさん
ライター・研究者。「文學界」や「yomyom」などで書籍・漫画紹介の連載を持ち、早稲田大学では少女漫画研究をメインとしたサブカルチャー関連の講義も受け持っている。

小川知子さん
ライター・編集者。弊誌をはじめ、女性誌「GINZA」「Numero TOKYO」などを中心に、カルチャーにまつわるインタビューや編集・執筆を行う。

湾岸A子さん
漫画編集、週刊誌編集、ウェブメディアの記事執筆も担当する編集者。もうすぐアラフォーだが、別冊マーガレットはいまも毎月発売日に買いに走るほどの少女漫画好き。

Composition:Ryuji Ogura

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