仕事を通しての出会いやフラメンコ、美味しいものを食べること以外に、山口さんの人生を彩っているのは、何と言ってもパートナーの唐沢寿明さんだろう。31歳で結婚した山口さんに、ズバリ、「結婚はオススメですか?」と聞くと、聞いているこちらが赤面するような答えが返ってきた。

 
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悩んだり迷ったりしても
しっかりと時間をかけることで
見えてくる答えがある

画像: ブラウス¥121000、スカート¥220000/マイケル・コース ジャパン(マイケル・コース コレクション)

ブラウス¥121000、スカート¥220000/マイケル・コース ジャパン(マイケル・コース コレクション)

「人生において大事なのは、自分のスタイルを見つけることだと思います。結婚も、 〝人それぞれ〞の形があると思う。人を真似する必要はない。私はもちろん、世界で一番幸せだと思って生きてます。すっごく幸せです(笑)!

何を結婚の定義にするかにもよると思います。私は特殊な育ち方をしているので、血の結びつきを全く信用していない。私はずっと、『親』というものになりたくないと思って育ちました。私は、『子供のいる人生』とは違う人生を歩みたいなと。だからこそ、血の繫がりはなくとも、伴侶という人生のパートナーを強く求めていました。唐沢さんは、夫であり、家族であり、友であり、恋人であり……。唐沢さんと一緒に生きることは、ほんとうに楽しいです」

 
 と、ここまで一気に話してから、「でも、なかなか結婚当初はそういう境地にはたどり着けないものですけどね」と言って優雅に微笑んだ。

「若い頃はきっと誰でも、『この決断は果たして正しいのか』と悩んだり迷ったりしますよね。でも、しっかりと時間をかけることで見えてくる答えがある。人間同士、たとえ何十年一緒にいても、ええ? こんな一面があったんだと驚くことばかり。人間にはバイオリズムがあるから、自分でも『同じ人間か?』と思うぐらい、ものの見方や判断ががらっと変わることがある。だから結論をそんなに焦ることはないんです。時が経てば、知らなかった世界がどんどん広がる幸せが待っている。

私も若い頃は、パートナーに対して、あまりにも趣味が違いすぎることにフラストレーションを感じることもありました。夫は私とは真逆の嗜好。彼の興味は、好きな仕事と車、あとブルース・リー、たった3種類だけ(笑)。でも、私は多種多様なことに興味津々で、一緒に旅をしても興味の対象が全く違うから、食べるとき以外はいつも別行動。

若い頃は、『なぜ同じものを見て感動できないんだろう』って思ってました。でも今では、私を好きなだけ放っておいてくれることに大感謝。私はのびのび自分の興味の的に邁進できるから。考えてみたら、私に何かを強制をしたこともないし、あれダメこれダメと、命令されたことは一度もない。いつも私が一番心地いい状態になるように、放っておいてくれる。私が旅の仕事で長期間留守にしても、彼は自分できちんと健康管理しながら、サバイバルしていてくれる(笑)。

彼曰く、『自分がしてほしいことを相手に押し付けるのではなくて、相手が幸せでいてくれることが自分の幸せ』なんですって。私が楽しく幸せでいることを望んでくれる人に出会えて、私は本当に幸せ。彼には心から感謝してます」

 
 結婚して20年のあいだ、唐沢さんが山口さんに怒りをぶつけたり、山口さんが、その趣味の違いに対して憤ったりしたことはない。ただ、一度だけ、友人を交えて家で食卓を囲んでいるとき、食事の途中に一人でテレビゲームを始めた時は、『許せない』と怒ったと言う。

「『ありえない!』って、子供を躾ける親みたいに怒りました。彼も身に染みたのか、二度と同じ〝事件〞は繰り返していません」
 

子供を産んで育てる人生ではない、
別の人生を望んでいました。
今でも、一片の後悔もないです

画像: 子供を産んで育てる人生ではない、 別の人生を望んでいました。 今でも、一片の後悔もないです

 話題が結婚に及んだ時、山口さんはさらりと「私は、子供のいる人生じゃない人生がいい」と語っていた。実際、二人の間に子供はないけれど、それは最初から決めていたことなのだろうか。子供というデリケートな話題に言及した時も、山口さんの口調はサバサバしていた。

「私はずっと、子供を産んで育てる人生ではない、別の人生を望んでいました。今でも、一片の後悔もないです。人それぞれ、いろんな選択があっていいはず。もちろん、子供を持って初めてわかる感動もあると思います。実際に産んでみないとわからないことだと思うけれど。でも私は、自分の選択に微塵の後悔もないです。夫としっかり向き合って、二人の関係を築いていく人生は、本当に幸せです」

 
 仕事だけではない。結婚も、趣味も、出産についても。全ての決断に、自分なりのスタイルがある。流されるのではなく、自分の意思で選択する。そして、やると決めたからにはとことん楽しむ。それも、軽々とやってのけるのではなく、もがき苦しんでいる部分もちゃんとさらけ出してくれる。文章にすると当たり前のことのようだが、そうやって〝一瞬一瞬を生き切る〞ことは、誰にでもできるわけではない。

奇しくも、山口さん自身がフラメンコの魅力を、「変化していく中での形。その形の、一期一会のハッとするカッコよさにある」と話していたが、山口さんの美しさが宿っているのは、何と言ってもその〝心の形〞だ。目には見えないし、常に変容していくけれど、じっくり手間暇かけて作り上げた、オリジナルの心の形――。
 

丸顔コンプレックスだった私に、
唐沢さんは「丸顔じゃなきゃダメ」って
言ってくれた

 田舎で育ったこと以外にも、彼女にコンプレックスはたくさんある。モデルになりたての頃は、モデルの華奢な体型からはほど遠い、たくましい骨格に悩まされ、女優になりたての頃は、自分の丸顔がどうしても好きになれなかった。

「丸顔コンプレックスだった私に、唐沢さんは『丸顔じゃなきゃダメ』って言ってくれた。捨てる神あれば拾う神ありですね(笑)。たとえ世の風潮の型にはまらなくても、人と違うものを誇っていいんだと思えるようになりました。

また、自分の夢を考えないようにして育った反動なのか、自分の好きだと思えることを、仕事として選び取っている人への憧れがありました。唐沢さんはまさに、自分の夢に邁進する人。でも彼と出会った頃は、あまりに自分と違う感覚に戸惑ったこともあります。それは、常に周りの社会と戦闘態勢にあること。私は全てを平和的に受け入れて肯定していくタイプですが、彼はいつも世間や自分に対して、戦いを挑みながら進んでいく。

あと他に? 彼の何に惹かれたか? ……なんだかんだ言って、私は踊れる人が大好きなので、若い頃ディスコで磨いたという、唐沢さんのソウルフルなダンス!(笑)」
 

憧れられる大人になることは、
大人の責任だと思う

 唐沢さんが〝常に戦いを挑んでいくタイプ〞であることに影響されたのだろうか。協調派の山口さんも、〝美しく老いる〞ことを「人間として、一生賭けた勝負」と表現した。

「醜く老いたくない。やっぱり、知恵や話術を磨いて世の中の役に立って、大人として若い人から憧れられるバアさんになりたい(笑)。年のとり方って、人生における最大の課題だと思います。老いに対しては、喜んで挑んでいきたいですね。まだまだ見なきゃいけないこと、学ばなきゃいけないことが山積みで、人生楽しくてしょうがない。

人間、常にちゃんと勝負していれば、老化なんてしないと思う。憧れられる大人になることは、大人の責任。カッコいい大人が増えないと、若者がついてこないでしょ? でも、美しく老いるためには、見えない努力が必要。心身の健康を自分で律して、チャレンジ精神や向上心を持ち続けること。女性としての可愛さやお洒落も忘れず、美しいオーラを放てる人間を目指したいです」
 

自分が取り入れるものは、
すべて自分という形になる

画像: コート¥204000、キャミソールドレス¥48000、パンツ¥140000、サンダル¥100000/ドリス ヴァン ノッテン

コート¥204000、キャミソールドレス¥48000、パンツ¥140000、サンダル¥100000/ドリス ヴァン ノッテン

 3〜4年前から、毎日続けられる軽い運動を日課にしている。30分歩いて、最低限の筋トレと腹筋。過激なジムのハードな運動は苦手。さらに今年から週2回のフラメンコが加わった。

「○○しなきゃ、ってストイックに制限すると、必ず反動が来る。私は暮らしから『ダメ』を極力減らして、逆に何が『欲しい』かを真剣に考える。体と心が喜ぶ声に、本気で耳を傾けますよ(笑)。本当に食べたいものは? どのくらい食べたい? いつ食べたい? って。ポテトチップスでも何でも、体が欲する時は喜んで食べる。欲しない時は食べない。心身の声を聞いていると、細胞が勝手にベストな状態をキープしてくれるようになる。

身につける服や髪だって同じ。オーガニックコットンや自然素材は、本当に体が喜んでいる実感がある。髪も自然の風をバサバサと感じられるスタイルでいると気持ちいい。衣食住すべて、自分をとりまくものは、心と体が『心地いい』という指標で選び取ること。最高の環境を自分自身で作り出して、疲れをちゃんと癒やして、次なる挑戦への英気を養わないといけないでしょ(笑)」

 
 食事をするときも、写真を撮られるときも、瞬間瞬間のエネルギーを大切にしている。料理は、「10分以内でできる勢いのある料理が好き」で、「ちまちま飾りつけして、勢いを殺している料理は許せない」とバッサリ。

「料理は、素材そのものを生かした調理で、エネルギーを瞬時に凝縮した瞬間にいただくのが最高。料理は勢いが大事。たまに作るエネルギーいっぱいの超簡単料理が、アヒージョ。ぐつぐつ煮えたぎる大きな土鍋をテーブルに出すだけでイベント感満載。エネルギーをいただくから元気になれる」

「自分が取り入れるものは、すべて自分という形になる」と山口さんは言う。食べ物も、飲み物も、運動も、サプリも、出会った感動も。五感を通して取り入れたものが、今の彼女を作っている。

「自分の中に取り込むものは、シビアな目で選ばせていただきます(笑)」
 

 
 話を聞いて判明したのは、お風呂が大好きで自宅に銭湯並みの強力なジェットバスを付けたこと。家の照明にこだわって、キャンドルライトで癒やされていると、唐沢さんが全部の電気を煌煌(こうこう)とつけて雰囲気を台無しにすること。そして若い頃、ちょっと反省していることは、日に焼き過ぎたこと。近所の公園に水着で寝転んで、真っ黒に焼いていたと言う。

 
 それから、撮影の時のこだわりが〝風〞であること。

「学生の頃、陸上部だったのですが、顔面に風を受けて前に進むことが大好きで……。風に吹かれていると、自分の精神状態もハッピーになれる。風と共に私の人生はあるようなものです(笑)」

 すべての撮影とインタビューを終えると、彼女は、満面の笑顔で、そこにいたスタッフ全員とハグをした。風のように爽やかで軽やかな余韻が残った。

 
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PROFILE

山口智子
1964年10月20日生まれ。「中学生の時は、隣町に電車で映画を観に行くだけで補導された」ほど、カルチャーとは縁遠いのんびりとした田舎で育つ。
 短大進学のために上京し、ViViモデルを経て、’88年NHK連続テレビ小説『純ちゃんの応援歌』で女優デビュー。奇しくも、「家業を継ぎたくなくて逃げ道を探していた」その家業である、旅館の女将役を演じた。
 映画は、『居酒屋ゆうれい』(’94年)『スワロウテイル』(’96年)、ドラマは『スウィート・ホーム』(’94年)『王様のレストラン』(’95年)などに出演。20代後半から30代にかけて、〝自然体〞かつ〝等身大〞かつ〝男前〞な大人の女性として、同性からの圧倒的な支持を得る。’95年、唐沢寿明と結婚。
 2000年以降は、旅の映像シリーズに携わったり、もの作りを極める職人の元を訪ね文章に収めるなど、自ら出演する以外の方法でも、〝もの作り〞と関わるように。2011年より、音楽を入り口に世界を巡る映像シリーズ『LISTEN.』がBS朝日でオンエア http://www.the-listen-project.com/jp/)。未来に伝えたい美しい「今」を収めた「タイムカプセル」だという。毎年数エピソード放送。

●情報は、FRaU 2016年3月号発売時点のものです。
撮影/伊藤彰紀(aosora) スタイリスト/清水けい子(SIGNO) ヘアメイク/ MICHIRU(3rd) 取材・文/菊地陽子


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