監禁されていた女性が小さな部屋で子どもを産み、虐げられた暮らしからの脱出を図る。とてもショッキングな題材ですが、この映画は意外な場所に私たちを連れて行ってくれます。綿密に計画を立てて部屋を出ていく展開は、まさに手に汗握るサスペンス。『ルーム』はその緊迫感あふれるシーンを中盤に持ってきて、それ以降の母と子のドラマを丹念にすくあげていくのです。

 天窓から区切られた空が見えているだけの部屋で育った5歳の息子。物語はしばしば彼の目の高さで語られ、はじめて“世界”を知る瞬間のみずみずしい感触を鮮やかに伝えてくれます。(彼が青空というものを見上げた瞬間の表情を思い出すだけで、涙が出てくるほど!)一方で母親が向き合うことになるのは、好奇の目を向けてくる世間。限られた環境のなかで規則正しく生活してしつけをし、できることのすべてを注いで子育てをしてきた彼女が、次第に壊れかけていく姿には本当に胸が詰まりました。

 母にとって息子は唯一の光であり、息子にとっては母が世界のすべて。恐怖と隣り合わせの不自由な密室での日々は、皮肉なことに濃密な母子の蜜月時代でもあったのでしょう。

 でも誰もが小さな場所を出て、何が待ち受けているのかわからない“世界”へと踏み出す日がやってくる。特殊な設定から幕を開ける映画ですが、“これは私の物語だ”と思える、普遍的なメッセージを受けとりました。

TOHOシネマズ新宿、TOHOシネマズシャンテ他全国公開中。
『ルーム』

画像: ©ElementPictures/RoomProductionsInc/ChannelFourTelevisionCorporation2015

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