静かな静かな時間だった。この取材のために、何ヵ月ぶりかで再会した瞬間、山口さんの長い腕がすっと伸び、希子さんをすっぽりと包んだ。「海外でいろいろあって、大変だったね」と、山口さんは言った。柔らかい声で。

癒やすような、労わるような、鎮めるようなハグ。たぶん、30秒ほど続いただろうか。先祖代々住み継がれる “ふるさと” を持たない希子さんが、まるで、ふるさとの大地に抱かれ、安らいでいるような、そんな時間だった。心と心で繫がっている二人が語り尽くす “愛と人生” とは――?

 

芸能界で唯一、ふらーっと
ごはんに誘いたい女性です。(山口)

画像: 山口さん分・トップス ¥279000 、スカート(参考商品)/ブルネロ クチネリ ジャパン(ブルネロ クチネリ) ネックレス¥915000、左手・手首側ブレス¥238000、チャーム¥600000、右手ブレス¥294000/ジ ュエルズ・オブ・ストラスブルゴ 左手ブレス¥60000/メタルスミス マテリアル 伊藤 丈士(FLAP) 水原さん分・ドレス ¥151000、 シューズ ¥124000/プラダ ジャパンカスタマーリレーションズ(MIU MIU)

山口さん分・トップス ¥279000 、スカート(参考商品)/ブルネロ クチネリ ジャパン(ブルネロ クチネリ) ネックレス¥915000、左手・手首側ブレス¥238000、チャーム¥600000、右手ブレス¥294000/ジ
ュエルズ・オブ・ストラスブルゴ 左手ブレス¥60000/メタルスミス マテリアル 伊藤 丈士(FLAP)
水原さん分・ドレス ¥151000、 シューズ ¥124000/プラダ ジャパンカスタマーリレーションズ(MIU MIU)

 撮影の間じゅう、二人は踊っていた。山口さんが差し伸べた手にちょこんと指先を置いて、希子さんがくるくると回ってみたり、思い切り顔を近づけたり、ハグしたり……。顔立ちに体つき、ファッションもメイクも世代もまるで違う。でも、見つめあったり踊ったりしている二人が、お互い強烈に惹かれあっていることはよくわかった。

 
――山口さんのリードで、女性二人の撮影ではまず見たことのないポーズがたくさん生まれて。撮影の間じゅうなぜかドキドキしっぱなしでした(笑)。

山口 せっかく貴重な時間を希子さんと共にするのだから、二人でしか成し遂げられないページにしたいと思いました。よくあるありきたりのポーズでは、私たちらしくないし、読者のみなさんもドキドキしないでしょ? だから物語を演じるようなイメージで、今日の私たちのテーマは「禁断の二人」(笑)。不思議な空気感が写真に表れたら面白いなと思って、希子さんと撮影しながら戦略を練って挑みました。

 
――お二人の出会いは約1年半前、ドラマ『心がポキッとね』での共演がきっかけですが、いつ頃から仲良くなったんですか?

山口 ドラマでは、希子さんと私、女性二人の台詞が膨大で、毎回崖っぷちに追い詰められている状況でした。だから、クランクアップしてからやっと、ごはんを食べにいける余裕ができました。共に戦を生き抜いた同志の絆です。

希子 でも私、いつも山口さんがスタジオにいる時は、隣にピターッてくっついていましたよ。山口さんって、荷物が多いんですよ。だから、ちょっと珍しいものを見つけると、「この水おいしいんですか?」とか質問して。

山口 お腹がすくと仕事に集中できないから(笑)、カツサンドとかデコポンとか、いろいろ詰まってる非常食用の鞄を常備していて……。

おやつをお裾分けしながら、希子さんといろいろ話すようになりましたが、やはり第一印象で感じていた通りの、頼もしい希子さんで嬉しかったです。芸能界で唯一、ふらーっとごはんに誘いたい女性です。

希子 私は、だから何かあるとすぐメールしちゃいます。そうすると、だいたい「今温泉にいます」って(笑)。

山口 そうなんです。私はしょっちゅう温泉にいるんです(笑)。

希子 でも私も、女優さんでメールしたりごはんをご一緒したりできる方はあまり多くないです。

 

世界にたった一つの
美しい花を咲かせてほしい。(山口)

画像: 世界にたった一つの 美しい花を咲かせてほしい。(山口)

山口 私は、希子さんの真面目さが大好き。いつも誠意を尽くして、懸命に戦っている。親子ほど年は離れてますが、心から尊敬しています。戦うといっても、周りと戦闘態勢にあるのではなくて、自分自身と常に戦っている。更に進化するために、いつも自分に挑んでいる。

希子 あー、今まさにその戦いの渦中にいるので、そう言ってもらえると、救われます。私、小さい頃から、「自分ってヘンなのかな?」とか、「みんながこうだって言うことに賛成できない自分はおかしいのかな?」とか、人との違いに悩まされることが多かったんです。

神戸にいた頃は、母親が韓国人、父親がアメリカ人なのに日本に住んでいることで、顔立ちから、着ているもの、聴いている音楽まで、何もかもが周りと違いすぎて浮いてた。その頃は、「みんなと一緒がいいな」とか「違ってて恥ずかしい」って思ったこともあったし……。

山口 そう思わなくなったのはどうして?

希子 母から、「あなたは他の誰とも違う世界でたったひとつの可愛さを持っている」って言われたこと。13歳で本格的にモデルとしての活動を始めてからも、母は、ずっと私を守ってくれました。それでも、ハーフモデルがひしめき合うViViでモデルとして活動するようになるまでは、自分がある種の異分子であることに、ずっと負い目みたいなものは感じていたかもしれないです。

でも、山口さんは、私が直接出会うずっと前から、嘘のない、すごくオリジナリティに溢れた生き方をしていた。実際にお会いしてみると、自分の人生のことをすごく真面目にとらえていて、よりよい自分を常に模索している。山口さんに出会ってから、「今の自分のままでいいんだな」って思えたこと、何度もありました。

山口 異分子って、素敵なことだよね? 私は、色どり溢れるカラフルな世界が大好き。人はそれぞれ違うからこそ、互いに憧れたり、尊敬し合える。もし世界が、たった一つの色だったら……。ほんとうに淋しくてつまらない。人と同じ人生を生きる必要なんて全くないのだから、自分にしか醸し出せない色彩で、世界を楽しく面白く彩ることに、私も微力ながら参加したいと思っています。希子さんは、唯一無二の個性で、人として真っ当に生きてるから、いつも感心して見てますよ(笑)。

希子 真っ当に生きているかどうかはわからないけれど、真っ当でありたいとは思っています。私が、人前に出る人間として誠意をもって最後まで貫き通したいことは、〝嘘をつかない〞ってことなんです。

SNSが普及した現代には、私が発信したことが間違った解釈をされたまま広まってしまうことがあって、本当に、嵐の中にぽつんと放り出されたみたいな状態になったりしたんですけど……。

でも、今私が取るべき道は、自分が正しいと思うことは曲げないこと。長いものに巻かれるとか、易きに流れるんじゃなく、自分自身の決断を信じて戦うことなんじゃないかって……。今は理解してもらえなくても、嘘をつかずに生きていけば、その私の生き方を見て、5年後、10年後には、理解してくれる人もきっと出てくるんじゃないかと信じているんです。

山口 私は小さい頃から、テレビにたくさん夢や希望をいただいて育ったから、テレビというものは、崇高な世界だと思っています。事実、何よりも偽りを写し出すから信用できる。人間の本質を映す不思議な力があると思う。いくら取り繕っても、必ず視聴者にばれるでしょ?(笑)

テレビは、潔く正直に勝負できるフィールドだと思います。真っ当に力を尽くしていれば、ちゃんと伝わるし、みんな見抜いてくれる。だから希子さんも、明日明後日に出す答えだけに翻弄されず、たっぷり時間をかけて、世界にたった一つの美しい花を咲かせてほしい。

※フラウ2016年10月号より一部抜粋

 

PROFILE

山口智子
1964年生まれ。’88年NHK朝の連続テレビ小説「純ちゃんの応援歌」のヒロイン役でデビュー。「ダブル・キッチン」(’93年)、「29歳のクリスマス」(’94年)、「王様のレストラン」(’95年)、「ロングバケーション」(’96年)など代表作多数。映像制作にも携わり、2010年以降、世界の音楽文化を収めた映像シリーズ「LISTEN.」(BS朝日)をプロデュース。

水原希子
1990年アメリカ生まれ。兵庫県育ち。2003年モデルデビュー。’07年7月よりViVi専属モデルに。’09年「ノルウェイの森」で女優デビュー。’13年には「八重の桜」で大河ドラマにも出演した。’15年公開の映画「進撃の巨人」前後編ではアクションにも挑戦。この年、ドラマ「心がポキッとね」で山口智子と運命の出会いが。大根仁監督の映画「奥田民生になりたいボーイとすべての男を狂わせるガール」(’17年公開)では “すべての男を狂わせる” 天海あかり役。’10年「KIKO」、’12年「水原希子×蜷川実花 girl」という2冊のフォトブックを刊行。

 
●情報は、FRaU 2016年10月号発売時点のものです。
Photo:Akinori Ito(aosora) Styling:Keiko Shimizu(Yamaguchi/signo) Tatsuya Shimada(Mizuhara/TRON) Hair&Make-up:MICHIRU(Yamaguchi/3rd) Katsuya Kamo(Mizuhara/KAMOHEAD) Interview/Yoko Kikuchi

 
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