仕事プライベートも充実、というのは今や当たり前!?それ以上に「プライベートの経験を仕事にも還元できたら……」と思っている人が増えているのでは?そこでこのたび itLIFE by FRaU は、世界最高クラスのホテルと名高いザ・ペニンシュラ香港の総支配人 兼 ザ・ペニンシュラホテルズ 香港・タイ地区 ヴァイス・プレジデントであるレイニー・チャン氏に取材を敢行。彼女のこれまでの歩みと日々の暮らしから見えてきた、最高のワークライフバランスの秘訣とは!?

スーパーホテルウーマンの
キャリアスタートはハワイから

画像: スーパーホテルウーマンの キャリアスタートはハワイから

 アジア最古のホテルグループであり、世界中のホテルファンから愛され続けてきたザ・ペニンシュラホテルズ。その旗艦ホテルであるザ・ペニンシュラ香港の総支配人であり、ザ・ペニンシュラホテルズ 香港・タイ地区のヴァイスプレジデントも務めているのがレイニー・チャン氏。彼女は女性ならではの視点を生かし、細やかで愛情溢れるサービスを次々に実施。2014年にはVirtuoso「年間最優秀ホテリエ賞」を受賞した。これは、ラグジュアリー旅行業界では最大の名誉と言われる賞でもある。

 そんなチャン氏に、なぜホテルウーマンという仕事を選んだのか、その魅力は何なのかを伺ってみた。

「私のホテルキャリアのスタートはハワイなのです。当時私はハワイに住んでいたのですが、ハワイにおける大きな産業といえば、不動産と観光でした。そのどちらかで働くことが一般的だったのですが、私はどう考えてもいいセールスマンになれるとは思えませんでした(笑)。そんなときマウイのリゾートホテルがフロントデスクエージェントを募集していて、そこで働くことを選んだのです」

 チャン氏はわずか9カ月で昇進。スーパーバイザーとなり、その後も昇進を重ね、働き始めてから4年後にはフロント業務のトップであるフロントオフィスマネージャーにまでなっていた。その活躍ぶりに目を止めてヘッドハンティングしてきたのが、ザ・ペニンシュラホテルズだった。

「実は最初、『香港に行く気はないか?』というオファーに『NO』と言いました。私はハワイが大好きでしたし、ずっとここに住みたいと思っていましたから。でもヘッドハンターに『ペニンシュラなんだけど……』と言われて、即座に『あら!? それならOKです』と言いました(笑)。ペニンシュラはとてもエレガントなイメージがありましたし、ホテルで働く人間にとっては憧れの存在でしたから。ちょっと不純な動機ですが(笑)、これが私のペニンシュラのスタートというわけです」

だからホテルの仕事はやめられない。
その理由とは……!?

 ホテルの仕事に魅力を感じたのは、最初は単純にエキサイティングだったからだと言う。大好きなハワイという場所で働くことができ、そこを訪れる、文化もバックグラウンドも違う様々な人に会うことができる。そんな日々がただ楽しかったのだ、と。

「でも次第に、お客様に心から喜んでもらえる機会を作ることができる、その魅力に夢中になっていったのです。たとえばあるお客様がハネムーンで泊まりに来られたという情報を得たとき、お部屋の清掃の際にこっそりとささやかなプレゼントを入れたり、特別な飾り付けをしたりする。小さなことですが、お二人にとって記念の時間をかけがえのないものに変える。これはホテルだからこそできることだと思っています。

 さらにもう一つ、マネージメントの仕事をするようになって、スタッフの成長を見ていく楽しさにものめり込んでいったと言う。

「ホテルというのは大きなチーム。働いているのは年齢もバックグラウンドも違う人たちですけど、皆、目的は同じ。ただ『お客様に気持ちよく過ごしてもらいたい』と思っています。そういった個々のスタッフたちに、ベストなトレーニングと成長の機会を与え、その結果彼らが成長し働く喜びを感じてくれることに、私自身も喜びを感じるようになりました。その愛情は、ときには母のように、先生のように、友達のように……。ちょうど昨日、私の部下だった女性が出産をしたのですが、一番に私にお子さんの写真を送ってくれました! とてもキュートな赤ちゃんです!! 彼女の次にお子さんの顔を見たのは私。とても幸せでした。こういう喜びがあるから、ホテルの仕事はやめられないのです」

9.11、SARS、津波……
困難だらけだったキャリア人生

 もちろん、今日まですべてが順調だったわけではない。むしろ、チャン氏のホテルキャリアはハッピーなことより困難のほうが多かった、と言ったほうがいいかもしれない。

「ザ・ペニンシュラ香港に転職してから6年後の2000年に、ザ・ペニンシュラニューヨークのレジデントマネージャーに昇格しました。でも、新しい任務に胸をときめかせてニューヨークに渡った私を待っていたのは、“9.11アメリカ同時多発テロ事件” でした。私はホテルのナンバー2でしたので、お客様の動揺をおさえるのはもちろん、スタッフも安心させてホテルを円滑に動かしていかなければなりませんでした。とても忍耐が必要で、辛い時間でした。それを何とか乗り越えて、翌年に香港に戻りましたが、今度はそこで“SARS問題”が起き、何とか乗り越え、2004年にザ・ペニンシュラバンコクの総支配人に着任したら、その3カ月後にあのスマトラ島沖地震による大津波が起きたのです。もう本当に、自分を保てる限界を超えていました。でも必死に冷静さを保って、様々なことを瞬時に正しく判断しました。なぜなら私はリーダーでしたから」

 ただこの経験から、多くのことも学んだという。

「トラブルが起こった直後というのは、人はまずパニックになるものです。それからしばらくすると、ショックは落ち着くものの今度は精神的に不安定になってきます。実際に、お客様もスタッフもそうでした。それをどのようにして前向きな気持ちにさせてやる気を起こさせるか。そのノウハウについてはとても勉強になりましたし、今後も生かしていけると思っています。仕事をしていれば誰しも壁にはぶつかることはあると思いますが、それは苦しいだけではなく、必ず今後のキャリアにも人生にも生きてくる。FRaUの皆さんにも、そう信じて乗り越えてもらいたいと思っています」

オンオフのスイッチ切り替えは
ジムと映画と旅

 ホテルの運営にスタッフのマネージメントにと日々忙しく働くチャン氏の毎日は、どのようなものなのだろう? また、リーダーとして負う重すぎるほどの責任を、どうリフレッシュすることで担っているのか、そのコツについても伺ってみた。

「私の毎日はとても忙しいです(笑)。朝は大抵7時に起きて、すぐに仕事に向かいます。そこからは打合せ三昧。ホテルの業務というのは、どれだけ事前プランニングがしっかりできているかが鍵なので、綿密に打ち合わせるため、とにかく時間が必要なんです。たとえばもうすぐクリスマスですけど、そのプランニングは3月から始まっています。すごいですよね!? それでも打ち合わせの時間は1日のうちの3割。あとの7割はスタッフのマネージメント関連に費やしています。トレーニングだったり、能力開発だったり。彼らとのコミュニケーションは何より大事だと思っています」

 これだけ忙しいと、オフの時間にいかにリフレッシュできるか、その過ごし方が相当重要になってくる。チャン氏の場合、それはエクササイズだという。

「トレーニングジムに、平均で週に4回通っています。多いときは5回。頭でばかり考えることを止めて気持ちをスッキリさせるには、ジムはとてもいいですよ。どんなに大変な問題に直面しているときでも、強制的にスイッチを切ってくれるのでとても助けられています。それから映画を見に行くことも、気分転換ができて大好きです。自宅で鑑賞することもありますが、大抵は映画館に足を運びます。家とは違う場所で、大きなスクリーンで見ることで、日常を忘れられますから。

 場所を変えるという点では、旅も大事ですね。今年の4月に、初めてアフリカに行きました。自然の中で過ごすということは、想像以上にリラックスできて自分を開放させることができる、と発見しました。FRaUの皆さんも、まだ行ったことがなかったらとてもお勧めです。(そのときの写真を見せてくれて……)ほら、とてもリラックスした表情をしているでしょう? 実はこのとき、トイレを探していたのですけどね(笑)」

人生にとって欠かせないのが
チャリティ活動

 オフのリフレッシュで得たエネルギーは、再び仕事で頑張れるエネルギーへと還元されるため、誰にとってもその時間をどう過ごすかは非常に重要なところだろう。そういった意味で、チャン氏にとってもう一つ欠かせないオフの過ごし方がある。それはチャリティ活動だ。

画像: 人生にとって欠かせないのが チャリティ活動

「もともとは、恵まれない人たち、とくに女の子を助けたいと思って活動を始めたのです。当時の中国では、まだ女性の社会的地位が低かった傾向があったので、女の子たちに教育の機会を与えることがすごく大事だと考えていたのです。それによって強くなってもらえたら、と。そこから女性、そして子供たち全体を助けるボランティアへと活動を広げていきました。本格的に活動している方たちとは比べものになりませんが、チャリティ活動は私にとって、オフの貴重な経験となっているだけでなく、ホテルにおいてもチャリティイベントを企画して好評を得るなど、仕事にも好影響を与えくれています」

 そう語るように、チャン氏は10年前からホテルスタッフたちとチャリティ組織を作り、「高齢者のサポート」「子供のサポート」「教育のサポート」の3本を柱に、様々なプログラムを企画、運営している。

「2年前には映画館の1スクリーンを借り切って、恵まれない子供たちとホテルスタッフの子供たちを招待し、みんなで一緒に『アイアンマン』という映画の鑑賞会を行いました。恵まれない子供たちだけでなくホテルスタッフの子供も招待して、子供同士の交流をはかれたので、とてもいいプログラムだったと思っています。他にも一人住まいの年配の方たちとホテルの年配のスタッフを招待して、ホテル内で麻雀大会を開いたこともあります。スタッフにもチャリティ活動をしたいと思っている人はたくさんいるものの、どう活動したら良いか分からずに躊躇しているので、上司としてそのきっかけをあげられたこともとても良かったと思っています」

感情をおさえるのではなく
むしろ生かしてほしい

 これまでの細やかなサービスの提案・導入や、愛情深いスタッフマネージメントぶりが、今までにない取り組みと評価されホテリエ賞まで受賞したチャン氏。そのエネルギッシュな仕事ぶりも、上手なオフの過ごし方も、女性ならではの視点が影響している印象が強いが、FRaU読者にも「女性であることの強みを生かしてほしい」と言う。

「一般的には女性のほうが感情的になりやすいと言われますが、感情というのは時として仕事にとても良い作用をもたらすと思うのです。感情表現には、ただ泣いたり怒ったりするだけでなくて、本当に深い愛情から生まれてくるものもあります。それをロジックや事実関係の上にプラスすれば、とても人間味溢れた正しい選択、決断ができると思っています。私は、仕事においても結局大事なのは愛じゃないかと考えています。愛とは決して『I love you』と言うことだけじゃなくて、仕事への情熱や責任もです。そのためには、家族のような思いを抱いたり雰囲気を作ることが鍵となってくるのではないでしょうか。私はそう感じていますし、少なくとも私の成功はまわりの人たちに支えられてきたことが大きいと思っています」

 さらに自身の30代の頃を振り返って、こんなアドバイスも送ってくれた。

「30歳の頃は、とにかくたくさんのことを考えていました。自分の人生はどうあるべきか、どうしたらパーフェクトな人生を創り出すことができるか……。そんなことばかり考えて、自分をケアすることを忘れていました。でも40代に入って、人の幸せはそれぞれ違う、ということを感じるようになって。そこから、あらためて将来を設計し直しました。だから皆さんにも、結果を出したいと焦る気持ちもあると思いますが、パーフェクトな人生を作ろうとしすぎないで、と伝えたいのです。それよりも、何が幸せかをもっと自分の中で議論してほしい。きっと、自分がこの先をどう歩むべきか、その答えも教えてくれると思います」

PROFILE

レイニー・チャン
香港生まれ。1994年にザ・ペニンシュラ香港に入社。その後、ザ・ペニンシュラニューヨークのレジデント・マネージャー、ザ・ペニンシュラバンコク総支配人などを経て、ザ・ペニンシュラ香港の総支配人、香港・タイ地区のヴァイスプレジデントに就任する。2014年にVirtuoso「年間最優秀ホテリエ賞」を受賞。ファミリー向けのプログラムや、ザ・ペニンシュラアーケードのマネジメントなど、女性ならではの視点で様々なプログラムを開発している。

Photo:Masaru Furuya Text:Naoko Yamamoto

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