こういう人生を私は選んできた

 ゆり子さんが、エンタテインメントの世界に足を踏み入れてから、30年の月日が経とうとしている。これまで、映画やドラマや舞台のみならず、声優としても、さまざまな〝女の人生〞を生きてきた。

画像: ブラウス¥43000/ジャーナル スタンダード ラックス 銀座店(ソーホー デ ルックス) ピアス¥416000/ミキモト カスタマーズ・サービスセンター(ミキモト)

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 2016年のドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』では、40代半ばで独身の、美しきキャリア女性を演じた。新垣結衣さん演じるみくりが、家事代行サービスに行った男性・星野源さん演じる津崎と秘密の契約結婚するのをきっかけにして、2人と、それを取り巻く人々の〝結婚観〞〝恋愛観〞〝仕事観〞が浮き彫りになっていくストーリーだ。

 
「役名が〝百合ちゃん〞っていうんですが、彼女はみくりの伯母なんです。一生懸命に仕事をしていたら、いわゆる〝適齢期〞を逃してしまった女性で……あ、〝逃した〞って言い方はあまり好きじゃないので、〝結婚・出産という選択をしないまま人生を歩んできた女性〞と言っておきますね(笑)。私自身、40代半ばで独身なので、〝百合ちゃん〞とは名前以外にもいろいろ似ているところはあるし、疑問点も特にないし、私が独身だったから、この役のオファーもいただけたんだと思います。

結婚については私自身、ここまで独身できたことを後悔しているわけではなくて、ただ45を過ぎてから、〝こういう人生を私は選んできた〞ということに対する覚悟とか責任みたいなものは、強く感じるようになりました」

 
 ゆり子さん演じる〝百合ちゃん〞も、ドラマの中で迷いながら、もがきながら、自分らしい人生を模索していく。原作の漫画を読むだけでも、〝女の人生に正解はない〞ことを痛感させられる。

 
「今って、女の人の生き方もすごく多様化していますよね。『結婚して子供を産むのが女の務めだ』って決めてかかる社会の風潮に対して、反発したい女性だって、実は大勢いると思う。40歳を過ぎても結婚していないと、『何であいつは結婚できないんだ?』とか『何か欠陥があるんじゃないか』とか詮索されますし、私も『石田ゆり子はなぜ結婚できないのか?』みたいな記事を何度か目にしたこともあります。そのたびに、『結婚できないわけじゃないの、しないだけなの!』って、ドラマのタイトルみたいなことを叫びたくなったりして……(苦笑)。

私からすれば、結婚という選択をしてもよかったタイミングは何度かあって、でもそこで結婚を決断しなかったってことは、〝その人ではなかった〞ってことなんだろうな、と自分では思ってるんです。事情もよく知らないのに、なぜ『できない』と決めつけるのか。結婚って、しなくてはならないものではないと私は思うし、たとえばパートナーがいても、結婚という形をとらない人たちもいる。人生の選択は人それぞれなのに、メインストリームから外れた生き方を選んでいる人のことを否定したり、悪く言ったりするのって、同じ大人として情けないですよね。他者に対する思いやりや想像力が欠落している気がして、悲しくなります」
 

姪たちには、
早く結婚することを勧めます(笑)

 ゆり子さんは、決して独身主義ではない。むしろ、「いつか誰かの〝奥さん〞になってみたい」とたびたび口にする。

画像: ブラウス ¥68000/ブランドニュース(マメ) ピアス ¥416000/ミキモト カスタマーズ・サービスセンター(ミキモト)

ブラウス ¥68000/ブランドニュース(マメ) ピアス ¥416000/ミキモト カスタマーズ・サービスセンター(ミキモト)

「私、甥っ子と姪っ子から〝りりちゃん〞って呼ばれているんですけど、よく、〝りりちゃん家にはパパがいないの? どうして結婚しないの?〞とか、〝どうしてテレビに出られるの?〞って聞かれるんです(苦笑)。だから、〝りりちゃんはね、自分が生きていくために一生懸命働いているんだよ。頑張って働いて、今は一人で暮らしているんだよ〞って答えるんです。最近は、〝結婚だって、この先するかもしれないよ〞って言ってみたり(笑)。

でも本当に、子供ってよく観てるんですよね。私の家に遊びに来たあと、ウチの母に言うんですって。〝りりちゃんの家には、足で踏むゴミ箱があって、いい匂いがして、ロウソクも何本もあって、コップもキレイだし、いいよね!〞って(笑)。だから、彼女たちが遊びに来るときは、ちょっとキレイなケーキを用意したり、花を飾ったり、一生懸命そのいいイメージを保とうとしています(笑)」

 
 こんなに綺麗で、上品で、優しくて、自立した大人の女性が身近にいたら、〝将来はりりちゃんのようになりたい〞と姪御さんが思ってもなんら不思議ではない。姪御さんたちから憧れられているのでは?と水を向けると、「だめ、私のような生き方は、絶対に勧められません!」と即座に否定されてしまった。

「私は、自分の人生だからいいですけど、もし姪たちに人生について相談されたら、早く結婚することを勧めます。ちょっと大袈裟な話になりますけど、私、人が享受できる最大の幸福というのは、自分がしたことで誰かが喜んでくれることだと思うんです。たとえば、一緒に暮らすパートナーにコーヒーを淹れたら、喜んでくれたとか。料理を作ったら、『おいしい』と言って食べてくれるとか。そういう日常の些細な喜びが、人生がもたらす幸福だと。私は……もうね、そういう意味では行き詰まってます(苦笑)。

一人暮らしは十分満喫したし、ここから先は誰かの役に立ちたいと、今は本気で思っていて。旦那さんや恋人じゃなくても、社会の誰かの役に立ちたい。俳優業だって、喜んでくれる人がいるから、私を必要としてくれる人がいるからやっているのであって、自分が綺麗に映りたいとか、そんなことはどうでもいい。もちろん、綺麗に撮ってもらえれば、有り難いし、幸せですよ。でも、そんな喜びは一瞬で消えていってしまう。

自分のエゴがないところで、自分のしたことを誰かが喜んでくれることのほうが、ずっとずっと価値がある。子供がご飯を食べて大きくなるとか、夜に夫婦喧嘩しても、朝には〝おはよう〞って挨拶をして、また普通の日常が始まるとか、そういう他者と共有する何気ないことが、幸せなんだろうなって。今ここまで一人暮らしを続けてきて、ラクだし幸せだと思う反面、〝他者と共有する喜び〞はないわけで、私もさすがに、人生そろそろ切り替えの時期なんじゃないかって、すごく思うわけです」
 

「誰にも選ばれなかった
人生より、幸せじゃない?」

 ドラマの中で、〝百合ちゃん〞は、(契約結婚ということを隠して)結婚を決めたみくりに対し、「(結婚することは)誰にも選ばれなかった人生より、幸せじゃない?」と口にする。台本で、その台詞を目にしたとき、ゆり子さんは、「このセリフを言うのは、ちょっと辛いなぁ」と思ったという。

「監督からは、『笑顔で、サラッと言ってほしいんです』と言われて、正直ちょっと痛いところを突かれた感じはありましたけど(苦笑)、でも本当に、その通りだなぁと思います」

 
 過去に、結婚を考えたタイミングは何度かあった。でも、結局踏み切らなかった。仕事もできて、優雅で、美人で、ユーモラスで。ある意味非の打ちどころのなさそうな、〝高嶺の花〞だから、男が尻込みするのか。それとも、彼女がパートナーに求めるレベルが高いのだろうか。

 あらためて、ゆり子さんに〝パートナーに求める条件は?〞と訊いてみると、「人それぞれ、魅力を感じるところは違うので、条件と言うのは特にないです」と答える。

「それに私、簡単に人を好きにならないんです。〝いいなぁ〞とか、〝素敵だなぁ〞と思う人はいても、恋仲になるには時間がかかる。〝とりあえず付き合ってみよう〞みたいな考えをしたことがないんですね。あとは、一度付き合うと長い、っていうのもあります。相手を信用してよかれと思ってやっていることが、結果的に相手を甘やかすことになってしまったり……(苦笑)」

 
 水泳の話や芝居の話に関しては、あんなにハキハキ話していたゆり子さんが、〝恋バナ〞では途端にしどろもどろになる。そのあたり、女性から見てもすごく可愛らしい。ではたとえば、家事一切を負担してくれるパートナーを、ゆり子さんが養うというパターンはアリなのだろうか。

「う〜ん……私は、男性はやはり外で働いて自分の持ち場で生き生きとしてほしいと思うので、それはないかなぁ。理想は、一緒に働きながら、家事も分担してくれる人ですね」
 

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PROFILE

石田ゆり子
1969年生まれ。東京都出身。’88年、テレビドラマ『海の群星』(NHK)でデビュー。以後、ドラマ・映画・舞台・執筆活動など多岐にわたり活躍する。映画『北の零年』(05年)で第29回日本アカデミー賞優秀助演女優賞を受賞。近年の主な出演作は、映画「悼む人」(15年)、『僕だけがいない街』(16年)、ドラマ『MOZU』(14年/TBS)、『コントレール~罪と恋~』(16年 / NHK)。映画『もののけ姫』(97年)、『コクリコ坂から』(11年)などスタジオジブリ作品では声優も務める。2016年には、ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS)に出演した。

●情報は、FRaU2016年12月号発売時点のものです。 
Photos:Takashi Honma Styling:Miho Okabe Hair&Make-up:Mizue Okano Interview:Yoko Kikuchi

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