映画『アズミ・ハルコは行方不明』で主人公のアラサーOL・安曇春子役を演じた蒼井優。本作の原作者である作家、エッセイストの山内マリコ。この映画をきっかけにグッと距離が近寄ったという二人に、本作、そしてお互いのいい感じの関係について話を聞いた。

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エッセイスト・山内マリコさんの書く小説の世界に共感するという蒼井優さん。共に働く30代の女性として活躍中の相思相愛の二人による、「30代は、20代よりももっと自由でもっと楽しい」対談、始まります。

 

蒼井優(以下、蒼井) 読んだ人はみんなそう感じると思うんだけれど、山内さんの本を読むと、この作者とは友達になれると思えてしまう。「わかる!」みたいな。読みながら、「飲みに行く?」って言いたくなる。そういう気持ち良さがとってもありますよね。

山内マリコ(以下、山内) わ〜、嬉しいです!

蒼井 もしかして20代前半だったら愚痴っぽく思えてしまう可能性もあることでも、今や自虐も含めた話のネタとしても完成度が高いものができ上がっているという感じに近いというか。「私たち、もう笑い飛ばせる年齢になったよね」っていう。

山内 (笑)。私、『リリイ・シュシュのすべて』の頃から蒼井さんのファンだったんです。高橋ヨーコさんの撮影した写真集も持ってるし、夫も同じのを持ってたので、家に2冊あるっていうくらい夫婦でファンで。だから、映画化の主演が蒼井優さんだと聞いたときは、本当に小躍りしました。この仕事でたまに芸能人の方とお会いすることがあって、だいぶ免疫がついてきたのでそこまでテンパらなくなりましたけど、今もちょっとドキドキしてます。

 

モヤモヤから抜け出せる人と
そうじゃない人の差

蒼井 原作を読んだとき、少し前、20代後半の自分と重なるなと思ったんです。私はそこまでヘビーではなかったけれど、なんか悶々と曇ってるなぁという気持ちが常にあったあの頃の時間と、たぶん春子が自分から動くこともせずに何かを待っている感じが、わかるなぁって。

山内 そこから抜け出せる人とできない人の違いをよく聞かれもするし、原稿を書いてても何だろうとよく考えるんだけど、やっぱり答えはわからないんですよね。同級生と会ったときに、以前と同じように話してたのに、この子と私とは全く違う人生を歩んでると思ったり、お互いの状況も全然違ったりする。なんでこんなふうになったんだろう?みたいな。

蒼井 私もわからないな。難しい。ちょっと不真面目というか、ふざけたところがどこあると抜けるんじゃないですか? 真面目な人はどんどん入っていっちゃう。ガッチガチになるともうがんじがらめになっちゃうし。

山内 自分のこと笑えるようになるかどうかとかも関係するかも。

蒼井 私の場合、29歳くらいから同世代、同い年の人たちと仕事をする機会が増えたんです。横のつながりがあるということ、それがすごく大きかった。

山内 そっか、特殊だもんね。年上の人たちとずっと同じ仕事をしてきているから。

蒼井 仕事で制服を着なくなってからはそうですね。学生を卒業したとしても制服を卒業するタイミングは役者さんそれぞれで違うんです。男性の場合は24〜25歳くらいまで平気で着れたりするので、そうすると学生モノの作品に参加するので同世代の集まりも多いんです。でも、20歳を超えた女優たちはセーラー服をずっと着ているわけにはいかないから、同世代と接する機会が少なくなる。

山内 大人の役が増えてくる。

蒼井 映画って、男の人のほうが出番というか、役が多いんですよね。男性キャストのなかに紅一点とか、それを邪魔して引っ掻き回す相手くらいの形が基本だから。となると、同世代同士で仕事するというよりは、先輩がいて、先輩と言ってくれる後輩がいて、この縦の道をてくてくとぼとぼ歩いてる感じだったんですけど、あるとき、ぶわっと横に歩いてる人がいる!と気づいたみたいな。

山内 どの辺りの作品でそう思ったんですか?

蒼井 ドラマ『若者たち』で満島ひかりちゃんと共演してからですね。『アズミ〜』の前に出演させていただいた山下敦弘監督の『オーバー・フェンス』では松田翔太くんがいて。今回は松居大悟監督も、プロデューサーの枝見洋子さんも同い歳だったんです。プロデューサーって、もうちょっと上だったりするのが当たり前だったけれど、85年生まれが揃っていて、こういう現場は初めてでした。同じ歳って、こんなに心強いんだと知りましたね。

山内 そんなに同世代が揃ってたんですね。私も似たような話だけど、そういう出会いがあったな。作家って、家のなかでパソコン叩いているだけの孤独な仕事じゃないですか。私は「女による女のためのR–18文学賞」を受賞してからデビューするまでが結構長くて、その間に同じ賞を受賞された先輩たちからすごく良くしてもらったんです。デビューもしてないし、本も出していない、何者なのかもわからない状態の私に、ほぼ初対面で声をかけてくれて。仕事のことを話したりできる、歳の近い女性のグループに入れてくれたんです。

ちょうど私は30前後で、全く仕事をしていないニート状態だったんですけど、1冊目を出版してからすんなりと作家業に移行できたのは先輩たちを見てたからかなって。

蒼井 そうだったんですね。

山内 30代前後のほうが、友達のありがたみがわかるようになってきたかもしれない。20代の群れてる感から、支えられてる感に変わってきたというか。

蒼井 何なんですかね。同世代だから喋れることってある。生きてきた年数がほぼ一緒だからかな。格好もつけようがないし、無理しなくてもいいって思えるんです。

 

30代女性として生きる
自由さ不自由さって?

山内 20代のときは本当に何もなかったんです。仕事もないし、お金もない状態。だから、31、2歳のときにデビューできて、何をしたっていい自営業で、仕事もありがたいことに困るくらいあって、ある程度自分で稼げるようになるようになったという意味では、すごく自由な気がします。同時に、30代になると20代後半の焦りとは違う、結婚や出産に対する、内的・外的プレッシャーみたいなものは日々感じていて。どっちをとっても悩みはあるけれど、どの道を選ぶかということは考えますね。

とはいえ、山口智子さんのように割り切ったスタンスにもなれないから、精神的には不自由と言えるかも。女性たちの人生にいろんな選択肢が並べられている中で、選択肢の数だけ悩みが増えているのが今ですよね。その上で、もう少ししたら選べなくなるものが出てきますよっていう期限が迫ってきているのを、ひしひし感じているというか。

蒼井 私は行き当たりばったりで生きちゃうから。なるようになるかなって思ってる。

山内 いいと思う! 蒼井さんは、そういうプレッシャーから解放されている感じしますね。

蒼井 あんまり真剣に考えたことがないんです。たぶん、色々言われてるとは思うんですけど。たとえば、「結婚どうするの?」「子どもどうするの?」と聞かれても、「おはよう」と言われているみたいにしか聞こえない。

山内 それが一番(笑)。

蒼井 「おはよう」って、本当にお早い(お着き)ですねと思って言っているわけじゃないじゃないですか。それと変わらなくて、私の子どもがどうとか結婚どうとかその人にとって一生興味のあることじゃないと、何となく聞いてるんだろうとわかっているから。あんまり重く受け止めても、向こうも困るだろうし。

山内 格好いい。そうありたい!

蒼井 以前、映画の賞の授賞式で、主演として85年生まれの女優さんが二人立っていて、私が助演として段下にいて、「ああ、既婚、離婚、未婚」と思って。私だけ戸籍がキレイとか、いいように捉えました(笑)。今楽しければいいかなと思っています。

山内 そういう話を聞くと本当に気持ちがいいね。私は結婚したし、楽しいけど、そのなかで生まれる日常的な不自由さとか制約はやっぱり多いから。

蒼井 私自身は、みんなでものを作るという仕事に就いているのがいいのかもしれないと思います。結婚がまたそれとは別なのはわかるけど。映画の現場はみんなが支え合って、仲間が増えていく仕事だから。『アズミ〜』のチームは仲良くなりすぎて、みんなでシェアハウスに住めるんじゃないかという話になったくらい。

山内 そんなに仲良くなったら、終わるとき悲しくならないですか? クランクアップした次の日から全く会わなくなるって。

蒼井 だからまだみんなでダラダラと会っている(笑)。

 

まるでインディーズ映画のよう
楽しい現場だった

山内 できあがった映画を拝見して、ピチピチの若さというよりも残量がもう、赤く点滅しているタイプの若さがスクリーンの空気感にしろ色んなところに滲み出てて、すごく良かったです。

蒼井 きっと、男性と女性で全く意見が分かれる作品ですよね。ひとつのシーンを取っても女性と男性だと捉え方が違うんだろうなという気がする。松居大悟監督ならではのガールズ・ムービーみたいな感じがあります。

山内 現場にお邪魔したときも、ピリピリしてたら嫌だなと思って行ったのだけれど、みんな若いからかインディーズ・ムービーを撮ってるような和やかな雰囲気がありました。

蒼井 全然! そうじゃない場面もありましたよ。結婚式の二次会のシーンだったり、人が増えると監督がすごくピリつくんですよ。だから、ミントタブレット買ってきてあげたりして、みんなで松居監督のお守りをし合うみたいな(笑)。

山内 楽しそう(笑)。

蒼井 なんかすごくいいバランスのチームだったんですよね。だいたい、ムードメーカーとなる中心人物がいてこそみんなで集まるものじゃないですか。でも、このチームにはそういう人がいないから、誰が来れても来れなくても集まれる。年下の高畑充希ちゃんがしっかりしてるから一番長女っぽい。松居はもう犬ですね(笑)。

 

PROFILE

蒼井優 Yu Aoi
女優。1985年生まれ、福岡出身。'99年にミュージカル「アニー」で舞台デビュー後、『リリイ・シュシュのすべて』('01)で映画デビューを果たす。

山内マリコ Mariko Yamauchi
1980年生まれ、富山県出身。2012年、『ここは退屈迎えに来て』で作家デビュー。最新作『あのこは貴族』(集英社)が11月25日に発売。

画像: PROFILE

『アズミ・ハルコは行方不明』 山内マリコ著
舞台は、男性を無差別に襲う謎の女子高生集団〝少女ギャング団〞が現れる街。元キャバ嬢の愛菜、覆面アーティスト・バンクシーに憧れ、グラフィティを始めるユキオと学。地元で再会した3人組は、遊びで消えた安曇春子探しをすることに。著者が執筆に1年をかけた書き下ろしにして、初めての長編。¥ 540/幻冬舎文庫 

 
●情報は、FRaU2016年 12月号発売時点のものです。
Photo:Yuri Manabe Styling:Setsuko Morigami(shirayamaoffice) Hair&Make:Satomi Kurihara(air notes) Text:Tomoko Ogawa

 
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