映画『アズミ・ハルコは行方不明』で主人公のアラサーOL・安曇春子役を演じた蒼井優。安曇春子の相手役の幼馴染・曽我として映画デビューを果たした石崎ひゅーい。彼のガチガチの緊張をほぐしてくれたのは、現場での蒼井さんの豪快な飲みっぷりだったそうで…… 。

 

寝る時間を惜しんでも
飲んで話して作った映画

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蒼井優(以下、蒼井) 映画って、初日の前日に決起集会をやるんですけど、現地入りしているキャストとスタッフ全員でとことん飲むんです。ひゅーいくんとは、そこでいきなり打ち解けたよね。

石崎ひゅーい(以下、石崎) そうですね。明日から始まるのにこんなにお酒飲んでいいのかなってくらいみんな飲んでて。でも、良い時間でした。僕はガチガチに緊張していましたから。相手が蒼井優だし、蒼井優ってものに対する壮大なイメージがあるじゃないですか。こえー!としか思ってなかったので。

蒼井 失礼な!

石崎 でも、僕が想像していたのとは全く正反対のキャラクターで、ガッチガチに固めていた蒼井優像が一発でぶちこわされた感じでしたね。アレ?って。気さくな新橋とかにいる小さなおじさんなのかなっていうような印象で。豪快な人だなと。もう大緊張してたので、いい意味で打ちのめされて、心を摑まれました。

蒼井 適当な(笑)。

石崎 いや本当です。

蒼井 スタッフとキャストの境界線みたいなの一気になくなった夜でした。たぶんそのくらいのピッチで飲んでました。

石崎 撮影中にも、何度かみんなで部屋飲みをしたんです。それで、優ちゃんの部屋でやろうということになって、大女優の部屋に行くのは緊張するじゃないですか。で、行ったらイモ焼酎の一升瓶が10本くらい並んでいて。

蒼井 10本もないよ! 7本くらいだよ。

石崎 7本の焼酎に、イカとかおつまみみたいなのも並んでて。スナックのようで。集まる前から、既に焼酎を飲まれていました。

蒼井 撮影が終わった人からどんどん飲んでた。正直、私は飲んでも飲まなくてもどっちでもいい人間なんですけど、ここ数年で飲んだほうが早いなと思うようになりました。元々アンチノミニケーション派で、仕事場でコミュニケーションをとればいいじゃないかと思っていたんですけど、人見知りは永遠に人見知りなんですよね。昔の映画みたいにリハーサルをたっぷりして関係性を作って、現場でほだされていくみたいなことは今はないですから。そうなったらもう、気を遣わない同士の関係という雰囲気を自分たちで作っていったほうが早い。

石崎 最初は人見知りだったんですか?

蒼井 高校卒業してから一気に人見知りが激しくなっちゃって、現場で寝たふりとかしてた。

石崎 良かった……。撮影がその時期じゃなくて。

蒼井 私、最近またちょっと人見知りが戻ってきていて。

石崎 え、いま? 

蒼井 単なる低血圧なのかもしれないけど(笑)。テンションが上がり切らない。話しかけられるときと人見知りがひどくなるときがある。無理して無駄な体力を使わなくなってきたからかな。ひゅーいくんも自分から話しかけるタイプじゃないじゃない? 

石崎 そうかも。

蒼井 仕事に対する適当さとかも似てるかもしれない。仕事が全てじゃないという感覚については撮影中に語らったよね。

石崎 優ちゃんが撮影中に、「別に誇れるような職業じゃないんだ」と言ってたんですよね。それが、けっこう僕のなかでズシンと来て。表現するときの捉え方みたいなものの、懐がすごく広いなと。だから僕みたいな初心者が来てもケアしてくれるし。そういう感覚は、すごいなと思います。

蒼井 両足突っ込んじゃうとできなくなることが多いんじゃないかなと思っちゃうんですよね。どこかでここだけじゃないと思っていたほうが飛べる。

 

ミュージシャン vs 女優の
予測不能な化学反応

蒼井 私、俳優じゃない人が相手役というのが初めてだったんです。だから、学ぶことが多いだろうなとは思ってはいて。良くないんですけど、カメラの前で何か台詞を言ったり動くってことをずっとやり続けていると、どこか麻痺してきているところがあると思うんですよね。

ひゅーいくんは麻痺してるところが何もない分、目の前で芝居したら色々見透かされちゃうんだろうなっていう恐怖心がいっぱいあったし、そういった意味では緊張感がありました。だから、本読みの日に「やってて楽しくないなと思ったら教えて」と伝えたんです。

石崎 言われました。思っても言えるわけないですけどね。

蒼井 まぁ、本当に言われたら顎をゴンと(笑)。

石崎 僕にとっては、初日が一番難関でしたね。

蒼井 全然芝居するシーンじゃなかったんだけど(笑)。

石崎 レジを打つシーンだったんですよ。ピっと打って、セリフを言う。そのタイミングが全くわからなくて、初めからいきなり迷惑をかけたんです。頭真っ白になっちゃって、すごく時間を取ってるし、優ちゃんは端のほうで待機しながら笑ってて、まずいまずいまずいみたいな感じで始まりました。

蒼井 予測不能というか、「あー!」とか「ダー!」とか言ってるから、こんなに真っ白になれる人っているんだと。みんなが孫を見るような目で見守ってました。

石崎 タイミングが悪いと、レジがチーンと鳴っちゃうんですよ、そういうのをずっと繰り返してたんですけど。

蒼井 本人も予測できてないけど(笑)。曽我という役のどうしようもなさにある二面性のアウトプットの仕方が面白かったんです。曽我はすごく地味な男という設定だから、初の映画出演でやりやすい楽な方も選べるのに、そこからボンと突き抜けたり、不器用すぎて全力で拒絶したりと難しい出し方をしていて。でも、ライブを観たときに、ステージでも演劇のような表現をしていたので、普段からこれをやってるんだったらああいう芝居はできちゃうよなと納得しました。わかりやすい演出があるわけじゃないんだけど、圧倒的な表現力があったというか。

石崎 (照れながら)褒められた。最初は、曽我ってこういう人物だと考えて、優ちゃんとの撮影前には曽我を用意していかなきゃという思いがあったんです。そうしたら、読み合わせで松居監督に「そうじゃないだろう」と怒られて。簡単に言うと、「そのままやってくれ」っていうことと、「ちゃんと呼吸をしてくれ」と言われたんだけど、それはどういうことなんだろう、俺は呼吸してるんだけどなと思ったりして。撮影に入るまでに、何となくその意味を自分の中に頑張って入れて、役を演じることではいいのかなという意識ではやったんですけど。後は迷惑をかけない!と!

蒼井 それで、初日から迷惑をかけたっていう(笑)。

 

デリケートな監督を、
家族のごとく励ます日々

石崎 でも、現場にはすぐ慣れました。松居組のやり方もすごく良くて、うまい言い方じゃないかもしれないけれど、みんなで作るサークルみたいな感じというか。

蒼井 あんまり商業っぽくないんですよね。私、監督を呼び捨てしたのも初めてです。一応、20代前半チームは「松居さん」って呼んでたよね。

石崎 でもいじられてる。心の中では絶対呼び捨てだよね。僕は「まっちゃん」と呼んでいます。

蒼井 あの人は私のことを「馬鹿野郎」とか言いますからね。あの人の口癖なんだよね、すぐ言う。

石崎 優ちゃんは、「姉さん」って呼ばれてましたよね?

蒼井 「姉さん」とか「姉御」とか。

石崎 (笑)。まっちゃんが作りたいものをみんなで頑張って支えてたよね。まっちゃんは、すごくアーティスティックな人だと思うんですよ。誰よりも映画の中にのめり込んでいるから、疲れるんですよ。どんどんのめり込んで疲れていって放心状態みたいになっていて、それを姉さんである優ちゃんが見ていて「頑張れ!」と励ますみたいな現場で、一緒に作っている感じがすごくしました。

蒼井 松居監督が精神安定剤のようにミントタブレットを食べるんですよ。落ち込んでたりすると私が近くのコンビニに買いに行って、そしたら間違っていつも食べているのじゃない銘柄のミントタブレットを買っちゃって……。

石崎 高いのより安いほうのがお気に入りなんだよね。

蒼井 そういうわがままなところあるよね。松居が何を求めているのかをみんながしっかり見ているから、現場の動きが早かった。

石崎 まっちゃんは、たぶん誰よりも一番作品にのめり込んでるんじゃないかなと思う。ずっと裸足だし。終わった後、喘息になっちゃったりするんですよ。

蒼井 ミュージックビデオとか短い期間でも喘息になったりする。

石崎 ものすごい緊張するらしいんです、現場に入る前の日とか。ものもらいができちゃったり。僕は、彼の身体のことが心配です。

蒼井 気い遣いなんですよね。気遣いでわがまま。こないだ山田洋次監督が野村芳太郎監督に言われたというお話をされていたんですけど、「スタッフや現場にいる人間を信じることができるかどうかも監督の才能だ」って。そういった意味では、松居は才能に溢れてるし、現場でみんなを信じさせる人徳がある。「松居がいいと言うならよしやろう!」という気持ちにさせられる。今回は、プロデューサーも私も同じ歳だから、松居を信じながらもお尻も叩いてて、彼にとっては今までにない映画づくりだったのかもしれない。

石崎 駄目な男と嫁さんみたいな感じでした。

蒼井 何でもないときに会うと、なんでこの人のことを信じてたんだろうって冷静になったりもするんですけど(笑)。全くビジネスの匂いがしない現場だった。時間がなくても3時間しか寝れないけ
ど1時間だけ飲もう!みたいな。楽しかったよね。

石崎 すごく楽しかったです。

蒼井 撮影がアラサーパート、20代パート、女子高生パートという3パートに分かれていたんですが、スケジュールが被ってて、同じタイミングで現場の足利にいられたのも良かったよね。私が撮影しているときに、ひゅーいくんは太賀くんや落合モトキくんとレンタカーを借りて日光まで日帰り旅行に行ってて、鮎を食べてる写真が送られてきたりして(笑)。

石崎 映画って最高だなと思いました。いつもは狭い部屋にこもって一人で音楽をやっているので。自分のシーンが終わっても帰りたくなくて地団駄を踏みました。

蒼井 高畑充希ちゃんだったり、下の世代の役者たちも、みんな勢いはあるんだけど優しい子たちばっかりだったもんね。

石崎 この撮影が終わった後に、新曲が5〜6曲できたんです。刺激的なことがあると曲が書ける。

蒼井 松居組はもう石崎ひゅーい親衛隊みたいになってる(笑)。かなり新参者が多い割に、ノリが
いいし、みんな全部歌える。

石崎 ライブ会場で一番うるさいんですよ。すごく目立つんです。

蒼井 みんなでカラオケに行くことがたまにあるんですけど、石崎ひゅーいの歌を全力で歌うんです。ライブを観た後にみんなでカラオケに行くって。

石崎 歌い方がすごいんですよ。

蒼井 みんな窓が曇るくらいに汗だくで歌う(笑)。

石崎 僕は片付けを終えてから参加したんですけど、部屋に入ったとたん熱気がすごくて。「ああ疲れた! もう歌わない」みたいなことをみんな言ってるんです。何だろうと思って。でも誰かが僕の曲を入れてイントロが始まった瞬間にみんな立って歌い始める。

蒼井 違うよ。イントロのときに「誰だよ、石崎入れたの」っていうくだりが絶対にある。「知らねーよ」という茶番があるんです。

石崎 僕は笑顔で見ていました。

蒼井 ひゅーいくんだけじゃなく、みんなで松居大悟が今後どういうものを作っていくのかも、ずっと楽しみにできる。本当にいいチームで、大きな家族みたいだったんです。毎年リメイクしようとか、勝手に言ってるんですけどね(笑)。続編になっちゃうと出れなくなっちゃう役者がいるから、全く同じ話の2017年版みたいなリメイクしかないと。ただ集まりたいだけの素人考えです。

石崎 まぁ僕は出なくてもいいんですけどね。スタッフとして関われれば。

蒼井 でも、音楽だったら現場にいなくてもいいよね。

石崎 現場にはいさせてください。ずっと(笑)。 

 

PROFILE

蒼井優 Yu Aoi
女優。1985年生まれ、福岡出身。'99年にミュージカル「アニー」で舞台デビュー後、『リリイ・シュシュのすべて』('01)で映画デビューを果たす。

石崎ひゅーい Huwie Ishizaki
1984年生まれ、茨城県出身。2012年、ミニアルバム『第三惑星交響曲』でメジャーデビュー。12月7日に最新アルバム『アタラズトモトオカラズ』が発売。

映画から派生してできたMV『花瓶の花』
友人の結婚式のときに書き下ろした、実体験を元にした石崎ひゅーいさんの楽曲「花瓶の花」。石崎さんが映画の現場で声をかけたことをきっかけに、松居さんが監督、蒼井さんが出演するミュージックビデオと短編映画が制作された。

 
●情報は、FRaU2016年 12月号発売時点のものです。
Photo:Yuri Manabe Styling:Setsuko Morigami(shirayamaof¬ce) Hair&Make:Satomi Kurihara(air notes) Text:Tomoko Ogawa

 
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