福岡出身、同じ年の映画人である蒼井さんと松居さん。映画『アズミ・ハルコは行方不明』が初タッグとなったお二人には、互いのズレに自然にツッコみあえる、なんだかいい関係がありました。

 

運命!? たまたま会った
出身も年齢も同じ監督

蒼井優(以下、蒼井) はじめましてのときは普通に「よろしくお願いします」と丁寧に挨拶してくれる感じだったのに、撮影始まって2日目くらいに松居から「馬鹿野郎!」と言われたの。私、ホテル帰って泣いたもん。

松居大悟(以下、松居) 嘘つけ(笑)! 撮影してると、みんな平等に仲間だ! となるから、その流れで言っちゃったんだろうな。

蒼井 いつからこうなっちゃったんだろうね、私たち(笑)。

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松居 撮ってるときは僕はお酒飲んでないし、撮影後の打ち上げ以降だろうね。

蒼井 でも、全体的に松居はこういう扱い(笑)。私たち、福岡で生まれ育って、東京に出てきて、同じ年だから、駅とかですれ違っててもおかしくないよね。

松居 本当に。僕は蒼井さんのドラマや映画を普通に観てたし、いつか一緒に仕事したいなと思ってた。憧れの人でした。

蒼井 でも、同じ歳で同じ出身であることは、運命でも何でもないってことがお互いわかったよね。

松居 「あのときあの感じだったよね」「はいはい、わかる!」みたいなものは全くなかったね。

蒼井 「どこの塾通ってた?」とかね。地元のおいしいラーメン屋さんの話はしたりしたけど。でも、同じ歳という共同体みたいなものがあって、ここに松田翔太くんとかもいて。それはなんか嬉しいことですよね。余計な気を遣わなくていいから楽だし。

松居 確かに、楽は楽だよね。

蒼井 私、松居のデビュー作『アフロ田中』は観ていたけど、監督の年齢までは認識していなくて。『アズミ〜』の撮休で東京に帰ってきたとき、松居が監督した映画『私たちのハァハァ』を一人で観に行って、ハァハァTシャツを並んで買いました。

松居 それは嬉しい。

蒼井 それまでは男子を撮る監督という印象が強かったんだよね。夢見る悶々とした男子にスポットを当てている人だと思ってた。でも、今回描かれるのは女性で。しかも、高校生から30歳を迎えるまでの女性たちってものすごい勢いで生きるじゃないですか。だから、監督にどう撮られるのかしら? と思って、楽しみだなと。

松居 思ってないでしょ。

蒼井 思ってたよ。松居組って、スタッフと役者の線引きがないのがいいよね。

松居 同世代も多かったし、スタッフも役者も関係なく自然と一緒くたになっちゃうんだよね。

蒼井 現場でも松居はずっと愛されキャラだったよ。

松居 うるせぇな。

蒼井 本当によくみんなに心配されてた。実家の匂いがまだするというか、実家の麦茶飲んでそうな感じ。個人的にはどうかと思いますけどね(笑)。でも、松居が次何をやりたいのかってことに常にみんなの意識が向かっていて、それは監督としての才能だと本当に思う。とにかく愛され上手ですよ。

松居 撮ってるときは、日々一生懸命、映画を作ることしか考えてなかったんだよね。脚本を作ってるときや編集を仕上げてるときに周りから色々言われることはあったけど。僕が裸足でいて、風邪引いたりしてたからかな。

蒼井 「靴下履きなよ」ってホームセンターで5足入りの軍足を買ってあげましたよ。さっき、ひゅーいくんが「まっちゃんはアーティスティックな人だ」って言っていて、なるほどなと思ったよ。

松居 アイツ、いい奴だな。

蒼井 愛され上手なアーティストです。

松居 うるせぇよ(笑)。でも、僕、一人で抱え込むとかじゃなくて、すごく周りに相談するんです。自分の作りたいものだけが正しいとは思えないし、カメラマンだったり、専門職の人の方がよくわかってるから、「こういう絵にしたいんだけど」と話して、向こうの提案が面白ければそれを取り入れる。今回は、それをしたことで実際にもっと面白くなっていったという実感もあったんですよね。

 

30歳という節目だから
できたことがあった

蒼井 私は今、20代後半でやってくる第二思春期を超えた年齢。その感覚を実際の自分の経験として味わっているからこそ、春子と高畑充希ちゃん扮する愛菜の最後のシーンをすごく理解できたんです。手を差し伸べたくなるけれど、自力でおいでと思う気持ちもわかる。あれは、第二思春期のまっただ中の私にはできなかったなと。山内さんがこの作品を書いたのも、多分33歳頃ですよね。山内さんも第二思春期を抜けたから書けたんじゃないかなと思う。

松居 僕も、今回は大好きな山内さんの原作でもあって、主演の蒼井さんと、プロデューサーの枝見洋子さんとも同じ歳で。あまり意識はしてないつもりでいたけど、30歳の節目の作品だと計らずも考えざるを得なかったんですよね。

今までは、こういうものにしようとか、こうしなきゃいけないとか何かしら考えを絞って撮ることが多かったんだけど、今回は30歳でやるんだし、整理せずに全部をやってみようと思って。信頼しているメンバーが集まっていて、絶対に面白い原作と脚本が目の前にあったから、もう僕がやるべきことはこの作品をちゃんと成立させることだけだと。後は感覚だ! みたいな。だから、結構リラックスして挑めたんです。

蒼井 そんな現場は、泥舟でしたけどね(笑)。

松居 とにかく行っちゃえ! みたいな感じだったからね。

蒼井 とりあえず、急いで漕げ! みたいな感じだったよね。枝見プロデューサーも「ビジネスとかそういうことじゃなくて、思いだけでこの作品を作ります」みたいなことを言ってたし。みんなで何とか漕いで公開にたどり着いた。

松居 参加してる人もみんな、思いだけでそこにいてくれてた。だから、これはどう転んでも間違いがないだろうと信じていて。僕の思いはもうどうでもいいから、みんなの思いを全部汲み取ろう。その思いは間違いないんだからと思って頑張りました。

蒼井 それで風邪引いたりしてたんだね(笑)。

 

一人歩きする自分像と、
どう向き合ってますか?

松居 僕は、たとえば、〝童貞監督〞と言われ続けることについては、めっちゃ気にしますね。

蒼井 自分がテレビとかでそう喋ったんでしょう(笑)? でも、「もう違うんです」とも言いづらいしね。

松居 でも、僕の場合、レッテルを貼られたら、その逆をいこうって面白がりだしますね。

蒼井 逆をいけてないでしょ?

松居 まぁね。でも、期待を裏切っていこうとはしますね。そっちこそ、存在が一人歩きしちゃうことあるでしょ?

蒼井 私は傷ついたほうがプラスになるんだったら傷つく。貧乏性だから、ただでは起き上がりたくないんですよ。転んでも何かしら拾いたいという気持ちがあって。もう年齢も年齢だし、ガードしようと思ったら傷つかないという選択はだいぶ前からできるんですけど、そうすればたぶん感性がにぶってしまう。そうなったら、この仕事はおしまいだから、傷ついたほうが正しいのかなと思うこともあります。全部その時々でこちらで判断させてもらってる(笑)。

松居 すごい、かっこいいな。

蒼井 話変わるけど、こないだ劇を観に行ったあと、ふたりでお茶したじゃん。あれはまぁ盛り上がらなかったよね(笑)。

松居 俺は盛り上がったと思っていたんですけど……。

蒼井 舞台中、ずっと松居のお腹がなっていて、私もお腹が空いてたからごはんでも食べに行こうかと純喫茶に入ったんです。すごく面白い舞台を観たのに、舞台についての話が終わっちゃったら会話がポツポツとしか続かなくて。ああ私、松居と特に話したいことないんだなって(笑)。後日松居に会ったときに、「あの日、全然盛り上がらなかったね」と言ったら、さっきみたいに「俺はけっこう盛り上がった」とか言うから、本当に気が合わないなと思ったよ。ズレがあるよね、私たち。

松居 うん、ズレはあるね。

蒼井 ひゅーいくんと松居は気が合うよね。ひゅーいくんがここの間にいると、ちょうどいいバランス。松居は変わった人だから。

松居 そうかな。

蒼井 私、松居には映画を作る、演劇を作るスタートラインをずっと変えないでいてほしいと思っています。そこからの飛距離は経験でどんどん伸びていくけど、スタートラインを変えちゃう人っていっぱい見てきたんです。でも、松居は変えないことができるだろうし、そういう監督が同じ歳にいるというのは心強いから。

松居 めちゃくちゃいいこと言ったな、お前。びっくりしたよ!

蒼井 今日はこの後、ごちそうになりますよ!

松居 僕にとっても、蒼井さんは映画に限らず演劇だったり、色々共通言語もあるし……。

蒼井 盛り上がらないだけで。

松居 盛り上がらないけど。

蒼井 私に言いたいことは、特にないってことね。

松居 ……ずっと友達でいてほしいです。

蒼井 ずっと友達でいてほしい! 小学生か(笑)。

 

PROFILE

蒼井優 Yu Aoi
女優。1985年生まれ、福岡出身。'99年にミュージカル「アニー」で舞台デビュー後、『リリイ・シュシュのすべて』(’01)で映画デビューを果たす。

松居大悟 Daigo Matsui
1985年生まれ、福岡出身。劇団「ゴジゲン」主宰。全作品の作・演出・出演を担う。MV制作やコラム連載、漫画原作など活動は多岐に渡る。

画像: PROFILE

映画『アズミ・ハルコは行方不明』
どこにでもありそうな郊外の街から、ある日突然姿を消した、28歳のOL安曇春子。街中に貼られた彼女の捜索願いのポスターとともに、ポスターをモチーフにしたグラフィティアートが拡散されていく。失踪前と失踪後、ふたつの時間軸を交錯させながら、20~30代女性の葛藤と解放を描く青春群像劇。

 
●情報は、FRaU2016年 12月号発売時点のものです。 
Photo:Yuri Manabe Styling:Setsuko Morigami(shirayamaof¬ce) Hair&Make:Satomi Kurihara(air notes) Text:Tomoko Ogawa

 
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