江戸時代の長崎を舞台に、人間と信仰というテーマに迫った『沈黙』。遠藤周作の小説を『タクシードライバー』などで知られるマーティン・スコセッシ監督がついに映画化。重要な役柄に起用された窪塚洋介さんに舞台裏を聞いた。
 

高い山からの景色を見せてくれた作品に

画像1: 高い山からの景色を見せてくれた作品に

窪塚洋介さんの『沈黙―サイレンス―』への旅は、あるハプニングからはじまった。

控え室だと案内された部屋がオーディション会場で、「ガムを噛みながら入って行ったら、女性のプロデューサーの方が、〝あなたみたいな人、監督は大嫌いだから〞って」。言い訳もできないまま臨み、良い結果は出せなかった日から、2年後。

もう一度オーディションに呼ばれた窪塚さんは「まだ探してるの!? ハリウッドってすごいところだな」と驚きを感じながら、限られた時間のなかで自分のすべての引き出しを見せたのだという。そして初めて会った巨匠、マーティン・スコセッシ監督は、どこか懐かしさを感じさせる人物だった。

「蜷川幸雄さんに会ったときと似ているような気もしましたね。安心感と緊張感という、相反したものを同時に与えてくれる人なんです。マーティンは自分にとって最も芝居しやすい温度でポテンシャルを引き出してくれる、偉大なパワーを持っている監督です」

 
窪塚さんがつかんだ役柄は、原作では裏切り者のユダになぞらえられている人物、キチジローだ。

「信仰ではなく自分の気持ちを貫くこともあるキチジローは、弱いだけでも、強いだけでもない。僕が演じるからにはイノセンスを大事にしたいと思っていましたし、ジョーカーのカードみたいな役柄だともとらえていました。だからこそマーティンが日々、〝さぁ、今日は何を見せてくれるんだ〞と欲しがってくれたことが、何よりもうれしかったですね」

画像2: 高い山からの景色を見せてくれた作品に

セリフや所作、美術や衣裳、村人たちがくちずさむ歌。すべての細部に目を配り「文化として間違ったところはないか」と常に日本への愛情を持って心を尽くしていたという監督とのセッションを、存分に、必死に楽しんだ。

「ハリウッドに通用したのではなく、たまたまマーティンが僕を望んでくれて、キチジローという役がハマったのだと思っています。少しだけ開いた扉をもっと開くのは、自分のこれからの努力次第。37歳で新たな目標ができました」

すでにハリウッドに進出し「何年も英語を学び続けている浅野(忠信)さんの努力が活かされる瞬間を目にできたことも刺激になった」と語り、言葉の端々から監督やスタッフ、共演者へのあふれんばかりの敬意が伝わってくる。

「クランクアップの日、マーティンがシャンパンで乾杯しながら、〝初日から頼りにしていたよ〞と言ってくれたんです。役者人生がこれで終わりでもいいかな、とまで思えた瞬間でした。『沈黙―サイレンス―』は、今まで見てきたなかで一番高い山からの景色を、僕に見させてくれた作品です」


画像: ©2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.

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『沈黙 ーサイレンスー』
17世紀の長崎。キリシタン弾圧のなかで棄教したという師の真実を確かめるため、ポルトガル人の若き宣教師が日本にやって来るが――。マーティン・スコセッシ監督が28年間温めていた企画を映画化。2017年 1月21日より全国にて公開中。

 

PROFILE

窪塚洋介 Yosuke Kubozuka
1979年、神奈川県生まれ。映画『GO』で日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を史上最年少で受賞。そのほかのおもな映画主演作に『Laundry』『ピンポン』『凶気の桜』『同じ月を見ている』『ジ、エクストリーム、スキヤキ』などがある。2006年からレゲエDeejay卍LINEとして音楽活動もしており5枚のオリジナルアルバムをリリースしている。


Photo:Sasu Tei (W) Interview & Text:Mika Hosoya

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