24歳、社会人2年目、自他共に認めるごはん狂。平野紗季子。毎日朝から深夜まで仕事に没頭しては、美味しいものに救われる日々(でも、仕事は好き)。それって私のこと?と思った、すべての女子へ。明日からまた頑張るために、東京を生きる女子のための食堂へ、ご案内します。
 

画像: 平野紗季子 連載「泣ける すりながし。」

どんなに疲れていても、なにか美味しいものを食べないと一日が終われない。だから深夜営業のお店は尊いし、西麻布にはみかづきがある。夜闇の中で発光する小さなビルの2階。すっかりコンタクトレンズも乾いた帰宅路でその明かりが目に入れば、雪山サバイバーが人家を発見した瞬間に匹敵するほど救われた気持ちになる。

私はみかづきの階段を登る。失われた生命力はその日のうちに必ず取り戻さなくちゃいけない。こちらの満身創痍モードを察してか、店主の井浦さんは何も言わずにサッと春菊のすりながしを用意してくれたりする。

鮮やかな緑の奥深き味わいの液体をそっと木匙でいただけば、ウゥッと涙がこみあげる。なんたる滋味。こういう沁み方は出来合いの食べ物からは決して得られないから、やっぱり全ての頑張る人に私はみかづきのような店が必要だと思う。

特に井浦さんは占い師を目指したとしても大成するだろうと思われるほど人の心が読める&料理が異常に達者であるために、お客さんに合わせて繰り出す食事のバリエーションが尋常でなく幅広い。ごはんと焼き魚とお味噌汁の日、OL的パスタの日、クレソンとチーズのサラダの日、あったかお鍋の日、紅茶とデザートを嗜む日……。

全天候型でお客さんの幸せを応援してくれるので、食前食後のビフォーアフターは明白。店に入る前と出た後では世界のきらめき方が全然違っていつも驚く。沁みる心に明日への希望。なにしろ虚無にはごはんが効く。
 

西麻布 みかづき
東京都港区西麻布4-5-4 2F
☎03-6418-5653
営業時間:18:00~翌2:00
定休日:月・第1日

 
※フラウ 2016年3月号から引用

 
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PROFILE

平野紗季子 Sakiko Hirano
フードエッセイスト。1991年生まれ。小学生から食日記をつけ続ける生粋のごはん狂。

 
文・平野紗季子 撮影・新津保建秀 取材・林理永

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