24歳、社会人2年目、自他共に認めるごはん狂。平野紗季子。毎日朝から深夜まで仕事に没頭しては、美味しいものに救われる日々(でも、仕事は好き)。それって私のこと?と思った、すべての女子へ。明日からまた頑張るために、東京を生きる女子のための食堂へ、ご案内します。
 

画像: 平野紗季子 連載「胃袋湯たんぽで、おやすみなさい。」

小さい頃は風邪を引くのが楽しかった気がします。風邪が単なる不調ではなく、家族の優しさやぬくぬくのベッドや昼間のテレビなんかが一体となった一種のエンターテイメントだったからでしょう。だけど大人の風邪は迷惑な不調であって、一刻も早く治しなさいという圧力もあったりして心底つまらない。ささやかな風邪こそ楽しく過ごしたいのにね。

そんなわけで私は風邪を引くとコチンニヴァースに行きます。コチンニヴァースのカレーは風邪に効くと信じているからです。喉が痛めばコチンチャンス到来。いそいそと電車に乗り込み西新宿5丁目まで出かけます。正直ちょっとニヤニヤします。

室外機の上に鎮座するカレーの神様に挨拶してから引き戸を開けると、小さな店内はクローブ、カルダモン、カレーリーフ……スパイスを炒めた香りで充満。店主のラメッシュさんが鼻歌を歌いながら鍋をふるうと、いっそうスパイシーな湯気が色濃く漂い、まるで浅草寺でお香の煙を浴びているような無病息災感に包まれます。

健康はカレーと一緒にやってくる。パラパラのレモンライスにのせてチェティナードプローンマサラカレーを頰張れば、口の中がインドの宮殿大になって旨みとスパイスが、ガーンと壮大に響きます。なんだこれはの衝撃。

辛味は旨みを残してじんと口に残るから次の一口が止まらず、一心不乱に食べあげて終わりにぐいっとチャイを飲み干せば、我風邪完治なり、といった爽快感。帰り道が寒くたって体はじんと温まったまま。明日は元気に生きられそう。胃袋湯たんぽで、おやすみなさい。
 

コチンニヴァース
東京都新宿区西新宿5-9-17 1F
☎03-5388-4150
営業時間:11:30~14:30(LO14:00)、17:30~21:30(LO21:00)
定休日:火

 
※フラウ 2016年3月号から引用

 
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PROFILE

平野紗季子 Sakiko Hirano
フードエッセイスト。1991年生まれ。小学生から食日記をつけ続ける生粋のごはん狂。

文・平野紗季子 撮影・新津保建秀 取材・林理永

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