いい女になりたい。でも、なにをもっていい女とするかはけっこう難しい。見た目も大事なのだろうが、歳を取るにつれて「中身も大事だろ」と思うようになってきた。しかしわたしの中身ときたら、長年ほったらかしにされ、曇ったり、ヒビが入ったり……早急にメンテナンスが必要な状況である。

というわけで、この連載では、マンガ・映画・小説などに登場するいい女について考察していく、憧れすぎて自分の中に「飼いたい」と思ってしまうようないい女たちから、大いに学ぼうじゃないか。
 

今月のいい女

おソノの適度な包容力

 わたしが昔からずっと大好きで、最高の女だと思っているのが、『魔女の宅急便』に登場するおソノである。いい女を紹介すると言っておきながら、いきなり所帯じみたパン屋のおかみさんの話ですみません。でも、大人になって“魔女宅”を観たらわかる。この映画におけるいい女は、おソノであると。

 まず、おソノには決断力がある。作品冒頭、主人公である魔女のキキに頼み事をしたおソノは、お礼をしたいと言ってキキを家に招くのだが、彼女が宿無しだと知ると、すぐさま屋根裏部屋に住むことを許可する。その決断のスピードもさることながら、旦那に全く相談してないのがすごい。だが、旦那はちっとも不満そうじゃない。妻の決断力を信じている感じ。横暴なんじゃなくて、頼れる女なんだってことがよくわかる。

 さらに、お節介なおばさんなのかと思いきや、案外そうでもなくて、抑制が効いているのも最高だ。風邪を引いたキキにミルク粥を食べさせたりはするが、べつにひと晩中見守ってるわけではないし(食べたらさっさと寝な!のテンション)。包容力はあるんだけど、他人との距離はキッチリ保つ、そのバランス感覚が絶妙なのだ。だからこそ、キキもおソノに依存しすぎることなく成長していくのである。優しいんだけどスポイルしない女って憧れる……。

 そして、男女の仲をとりもつおソノの巧みさといったらない。キキと彼女に興味津々なトンボとの親睦がなかなか深まらないことを見て取ったおソノは、トンボ宛の紙袋をキキに運ばせるのだが、その中にちょっとしたメモを入れ、口ベタなキキに代わってトンボに事情説明。この介入の素早さ、面倒見のよさ。年上の女として完璧な立ち回り方ではないだろうか。

 これだけデキる女でありながらキツそうな感じはゼロで、いつも「アッハッハ!」と豪快に笑っているのも素敵。ああ、若い女の子に慕われたい。地味だけど腕のいい職人の旦那に全幅の信頼を寄せられたい。おソノさん、わたしは小さいおソノさんを自分の中に飼いたいです。

 
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画像1: トミヤマユキコ連載 vol.1「おソノの適度な包容力」 画像2: トミヤマユキコ連載 vol.1「おソノの適度な包容力」 画像3: トミヤマユキコ連載 vol.1「おソノの適度な包容力」

 

PROFILE

トミヤマユキコさん
1979年秋田県生まれ。早稲田大学文学学術院助教(4月より)。少女漫画を中心としたカルチャー関連の講義、研究を行う。また、ライターとして様々な媒体でコラムや評論も執筆している。無類のパンケーキ好き。

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