独特の存在感で、作品の中に際立った印象を残す池松壮亮。愛する映画のために選んだ場所で、今彼はどのように生き、そして何を考えているのだろう……。池松壮亮の目を通したこの街を見てみたい。インタビュー全文公開。

 
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生きることはすべて表現につながる

その後の活躍は、よく知られるところ。作品の中で見せる存在感は、弱冠26歳という年齢がにわかには信じられないほどだ。俳優はまさに天職のように見えるが、自身はどう感じているのだろう? 例えば、今後ほかの職業に就く可能性を考えたりもする……?

「考えますね、今でもけっこう。またこんなこと言うと……、別に誰からも怒られはしないですけど(笑)。俳優ってね、1本作品をやれば名乗れる職業ですし。逆にいつでもやめられるものだと思ってます。同時にプロとしてあり続けることが難しいと思います」

 
今考える “プロの俳優” とは?

「ふふっ……(笑)。これも難しい。俳優を職業にしているだけでプロと言えるのかどうか。曖昧な言い方ですけど、まっとうしきることじゃないかとは思ってます。何をまっとうするのかわからないけど、生涯、俳優を突き詰めた人って、すごいな、プロだな、カッコいいなと思う。ただ〝表現する〞ということで考えれば、どんな仕事でも同じだと思うんです。

こんなこと、もう当たり前のことすぎて言うのがダサイですけど。人が生きることって、すべて表現につながっている……。今、生きていること、その証しか表現になりえないというか」
 

映画に育ててもらって今の自分がある

画像: ジャケット¥330000、パンツ¥130000/クリスチャン ディオール(DIOR HOMME) Tシャツ、ソックス、シューズ/スタイリスト私物

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質問を受けるたびに深く考えこむ。発せられる言葉は、オリジナルかつ哲学的。ふだんから思索の日々を送っていることが想像される。そんな彼の現在の東京生活とは……。

「飲みに行ったりもしますよ。家でも飲みますね。自分の家、大好きなんですよ。自炊はあんまりしないけど、最近、(食材を)“焼く” っていうことを覚えました。フライパンに油をひいて、しめじとかもやしとかスーパーにあったものをひたすら。あとは、ひとりで散歩したり、映画館に行ったり、本を読んだり。考え事をしたりもしますね。休みの日ほど心と脳は忙しいんですよ。俳優って現場に入れば、やること限られてますし」

 
そうした生活を続けながら、これから先も俳優として、東京で生きていく自分の姿は今、見えている?

「やっぱり俳優としてのツールしか持ってないですし。やりたいことが次々に湧いてくるので、まだまだやるんだろうなとは思ってます」

 
その、やりたいこととは?

「言葉にしにくいんですけど、自分が思っていることをまだ伝え切れていないっていう気分なんです。自分はこう思う、これが好き、これが嫌い、そういうものを映画を通して届けたいと思います。それができるかと思って、一時期、SNSもやってみたんですけど、〝あ、こういうことじゃないんだ〞ってわかって、インスタもツイッターもいっせいにやめました。俳優をやってる自分が、表現の場を持っているのに、そうじゃない場所で発信しているのは、なんか違う気がして許せなかったですね」

 
やはり、映画が自分にとっての居場所だった、と。

「そもそも育った場所が映画。圧倒的に影響を受けたのも、救ってもらったのも映画。不良のおじいちゃんたちや、出演した作品の一本一本に育ててもらって、今の自分があるんだと思ってます」
 

映画に携われる幸せを胸に刻んでいたい

画像: 映画に携われる幸せを胸に刻んでいたい

石井裕也監督は、「疑わしい場所。だけど、何かがあるかもしれないという期待感を持たせてくれる」と東京への愛憎を語っています。改めて、街としての東京をどのように感じていますか?

「石井監督の言葉には共感しますね。ただ、今回の作品は、今、監督が思う、ありのままの東京を描くというところに重点を置いている。けっして否定的に捉えているわけじゃないんです。僕自身、今の東京が好きか嫌いかっていう好みの話をしたら、あんまり好きじゃないです。それは僕が田舎モンだからなのかもしれないけど。でも、東京には映画をやってきた人、やっている人、志す人がいる。僕が上京してきたのも、だからこそ。

明日、大地震が起きるかもしれない東京に、期待を持てるのかと言ったら、とてもじゃないけどはっきりと期待はできない。現在の日本映画に危機感はありますし、映画ならなんでもかんでもやりたいっていうわけでもない。でも、そんな中でも、僕らは誰かひとりにとって、生涯の一本になるような映画を作れるかもしれない。

世界には映画を作るどころじゃない国もある中で、今、そういう仕事ができているということは、本当に幸せなんだと思います。そのことをちゃんと胸に刻んでいたいですね」

 
 
骨のある発言と、時折見せる少年のような笑顔。そのギャップがなんとも言えない魅力だ。返してくれた答えに、いわゆる常套句はひとつもなかった。映画を愛してやまない俳優・池松壮亮は、最後に真剣な表情で、こんなふうに語った。

「雑誌の取材とかって僕には難しいなと思うけど、やっぱり映画を宣伝したいんです。だからどうしたら言葉が届くのか、ずーっと模索してます。でもやっぱり散漫な話になってしまいましたね」

 
言葉のひとつひとつに誠実な人柄がそのまま溢れ出てくる。静かに深く心にしみるような、濃密な時間が流れていた。 
 

PROFILE

画像: PROFILE

池松壮亮 Sosuke Ikematsu
1990年生まれ、福岡県出身。2003年『ラスト サムライ』で映画初出演。2014年『紙の月』、『愛の渦』、『海を感じる時』、『ぼくたちの家族』でキネマ旬報ベスト・テン助演男優賞ほか多くの映画賞を受賞。近作に『海よりもまだ深く』、『無伴奏』、『セトウツミ』、『DEATH NOTE Light up the NEW world』、『だれかの木琴』、『永い言い訳』、『続・深夜食堂』、『裏切りの街』など。
 

INFORMATION

画像: © 2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会

© 2017「映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ」製作委員会

映画『夜空はいつでも最高密度の青色だ』
最果タヒの同名詩集を気鋭の映画監督・石井裕也が映画化。東京の片隅に生きる若い男女の生活と心の動きを繊細に描き、リアルな恋愛映画として完成させた。看護師をしながら夜はガールズバーで働くヒロインに新人・石橋静河。そんな彼女と出会う、工事現場で働く青年を池松壮亮が演じる。死の予感ばかりの東京で、居場所を見失ったふたりが初めて見つける希望とは……。2017年5月13日(土)より全国ロードショー

 
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●情報は、FRaU2017年6月号発売時点のものです。
Photo:Motohiko Hasui(W) Hair&Make-up:Hiromi Chinone Styling:Babymix Text:Junko Wada

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