飾らない自身の言葉で紡がれていく過去、そして現在。3児の母であると同時に、女優という夢の続きを歩き続けている彼女がその名を浸透させた10代の頃よりも一層、眩しく輝いて見える理由とは――。
広末涼子ロングインタビュー後編。

 
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――さっき、二度と結婚しないと思ったって言っていたけど、それを覆す出会いも、そこと同じだったのかな?

「友達にも言われました。二度と結婚しないって言ったじゃん! って。『すみません。本当にそう思ってたんです』って言った(笑)、でも、息子に兄弟を作ってあげたくて。ホントに結婚しなくても風媒花のように種だけ飛んでこないかなと。真面目にそんなことを考えてたくらい。

でも、一番のきっかけは、20代後半に、人生の中で最悪なことが訪れて――。自分の中では天地がひっくり返るくらいショックなことがあって、何を信じていいのか分からなくなってしまった――。でも、どうにかしようと必死だったんです。

そんなすごくしんどかった時に、今の旦那さんに出会いました。本当に神様からのプレゼントじゃないかなって思った。人生においての救世主のようだったというか――。彼と出会えてなかったら、息子がいなかったら、女優業はもちろんのこと、今こうして自分が存在できてなかったんじゃないかなと思う」

 
――生きていくことは出来ないと?

「もうしんどすぎて、これ以上頑張れないなって――。いつも気が付いたら高いところに行っていて、誰か背中を押してくれないかな――っていう感じだったので。本当にギリギリだったのかもしれない」

画像: ブラジャー¥3280/ピーチ・ジョン カスタマーサービス(PEACH JOHN) シャツ¥18000/ゲストリスト(サンドリー) その他/スタイリスト私物

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――そんなにも?

「だけど、私はひとりじゃない。私には息子がいて。実際、誰しも本当に一人きりの人なんていないし、必ず悲しむ人はいるのに、命を絶ち切るようなことはあってはならない。ましてやこういう仕事をしているのにそんな選択をする存在には絶対になりたくなかった。もちろん、踏みとどまれた一番の理由は息子の存在です。でも、初めて前に進めなくなるところまで追いつめられた時に、『止まりなさい』って、言ってくれたのが今の旦那さんだった。

みんな頑張れっていうし、打開策を見つけようとしても、自分が頑張らなきゃという結論しかなかった時に、穏やかに淡々と、別に優しくとか包み込むとかそんなキレイな感じじゃなくて、本当にシンプルに『止まりなさい』って言われたことがすっと心に入ってきて、一気に涙が溢れだして『そっか、止まっていいんだ』って――」

 
――その人が人生の新たなパートナーに。

「ダライ・ラマが、一番の試練がきた時は自分を成長させてくれるチャンスだと思いなさいって言ってたけれど、その渦中にいる時はやっぱり難しい。だけど、振り返ってみると、私にとって、彼との出会いは人生をやり直すために、引き合わせてもらった。単純に救いというだけじゃなく。そもそも、何か大きな問題が起きるというのは、自分が引き起こす要素であったことも絶対的にある。そういう反省も含めてすごく大人になれたし、そんな変化の時だったからこそ、今の旦那さんと大事な存在になれたんだと思う。本当に、それまでは息子と二人きりで生きていくと決めていたので――。いないと思いますね。これ以上の人は。

私は近しい相手にもいつも『大丈夫』だと思われがちなんですけど、いつもどんなに私が楽しそうで生き生きしていても『大丈夫じゃない』ことをちゃんと気づいてくれて、忘れないでくれて、常に私よりも上にいてくれる――。ずっと尊敬できる存在でいてくれる。先月号のフラウの記事で樹木希林さんの『女優とは結婚するもんじゃない。キレイなんて一過性のものだから』という言葉がありましたけど、私も自分が男性だったら女優となんて絶対に結婚したくない。リスキーなことばかりだと思う。きっと、相手がすごく強くないと継続していけないと思います。

以前、離婚を決めた時に、私たちをよく知る親友から『難しいと思う。涼子ちゃんの旦那さんになる人は超権力者か超金持ちか木こりみたいな人じゃないと無理だよ』って言われたんです。当時は、そんな社会から逸脱したみたいな人なんてどこで出会えるの? 出会いたいわけじゃないけどって思っていたけれど、例えるなら、今の旦那さんはその〝木こり〞みたいな人かもしれない(笑)。現実社会に捕われすぎず、きちんと自分の世界を持っている……」

 
――キャンドル・ジュンさんってそんな感じの方なんですね。

「すごく落ち着く人。私は自分に疲れちゃうようなタイプだけれど、静かで物腰が柔らかくて淡々と話す人ですね」

 
――やっと、自分にはこういう人がしっくりくるんだと腑に落ちた感覚?

「20代の頃に惹かれた自分にないものという部分とは違うものでした。最初からこうだったらよかったのにって(笑)」

 
――燃え盛る炎というよりは、静かにずっと消えずにある暖かな灯みたいな感じなのかな。

「でも、そういうふうに見える男の人って、実はすごく情熱的で、逆に男らしかったり。優しさが強さだったりというものが見えてきたんでしょうね。私、今も幸せなんですけど、それ以上に、今後一生楽しみなんです。離婚してから、子供だけが私の楽しみだと思っていたんですけど、彼は子育てのあとが楽しみだと言ってくれてる」

 
――子供が巣立ってからの二人の時間?

「そう。そんなこと考えたこともなかったので、人生が広がりました。」

 
――共に生き抜くことが出来る相手を見つけたという安心感もあったり?

「安心感もあるけど、尊敬もしているし、誰もが唯一無二なんですけど、それ以上に、これ以上の人はいないって思う」

画像: ピアス¥14000/ココシュニック

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――友達からはなんて?

「よく言われるのは『面白い』かな。独特な世界観の持ち主なので、その世界が分かる人はグイッと食い込んでいくけれど、個人差はあるみたいです(笑)」

 
――あはは。ご自身は旦那さんのそういう部分はどう感じてるの?

「面白いって感覚かな(笑)。ウチの本棚を見て、『話してみたい!』という子もいたり、彼に共感して同じ道にいく友達もいて、『そういう人もいるんだ!』って意外な発見もあったり。それくらい彼の読んでる本や思考って強い部分があって、私はそことは完全にイコールなわけではないけれど、理解できるし、そういう世界を持ってること自体が素敵だなと思っています」

 
――同じ方向を向いて、同じ考えをしていないと共に進めないと思ってる未婚女性には新たな教訓かも!

「まったく同じじゃなくても、尊重し合えればいいんだと思います。あとはやっぱり、好きなことをしていたり、好きなことに向かうためなら厭わない、みたいな部分はお互い似ているんです。彼が私の仕事を理解して受け止められるのも、自分にも同じものがあるからだと思う」

画像: ピアス¥563000/ロンハーマン(パオラ ヴァン デラ ハルスト) その他/スタイリスト私物

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――家庭でのお互いの役割ってどんな感じ?

「今の時代、家事も分担制でみたいな形って理想的なんだろうけど、私はそうは思っていなくて――。家のことは自分の仕事! と思っていたほうが、協力してくれた時にありがたいと感謝出来るし、家庭と両立して仕事が出来ることにも感謝できると思うから。友達から相談を受けると、『だから、最初から自分がやるんだと思っときなよ』ってよく言うんです(笑)。やってもらえた時にラッキーって思えるくらいでちょうどいい」

 
――それって、広末さんの育ってきた環境も関係してる?

「そうですね。やっぱり昔ながらの家庭像や女性像が理想。そういうとすごくコンサバな感じを連想させるけど、実際に家庭のこと以外で優先してるのは男性的な感覚。だからこんがらがってしまいがち(笑)」

 
――週刊誌などの報道に対しての考え方も男らしいですしね(笑)

「私に関して世の中に出回ってるものの全ては真実なわけではない。ただ、その理由は全部説明すれば分かってもらえることばかりで簡単なことなんですけど、言い訳してるみたいで嫌。私は別に変だった時もないし、ちゃんとすべてに理由はあって、だけど、それを釈明弁明する必要があるかな? って。

近しい友達や家族は分かってくれていて。でも、読者はそれを信じてしまう人もいる。そういう意味では、応援して観てくださってる方たちには申し訳ない思いもあって、これからは変えていかないといけないなとは思ってるんですけど――」

 
――バカバカしいとしてもね。

「育児放棄なんてありえないし、新宿二丁目に通ってるとか、誰かのバイクの後ろに乗ってたとか――。その人が私にすごく似てたのか、単なる思い込みなのか、単純にそういう話にしたいだけなのか、いったいなんなんだろう?って」

 
――二丁目も行ったことない?

「ないです(笑)。機会があれば今後ないとも言い切れないですけど(笑)。作品の打ち上げひとつとっても『夜遅くまでいらっしゃいましたね、お子さんはどうしてるんですか?』って言われる。それはおばあちゃまに来てもらうとかパパがおうちにいてくれるとか、あるでしょ! って(苦笑)。

打ち上げに行ったからって飲み歩いてるってことなんですか? それはありがとうとかお疲れ様という気持ちがあってのこと。友達と飲むこともあるし、子供がいるので大体はうちになっちゃうんですけど、それがそんなに非難されること? っていうことだったり」

 
――ある瞬間だけを切り取って、母親としての良識を問うようなことはおかしいし、そもそも、ちゃんとしてる部分は話題にしないっていう。

「いい意味で、物は書き様、心の持ち様にしてくださったらいいけれど、そういう世界ではないから。そこは仕方ないかなと思うし、きっとみんなそうだと思うけれど、いいものを作ることで払拭していきたいなって思います」

 
――理不尽だと嘆いてもしょうがないと。

「子供がコンビニで週刊誌を見た時にどう思うかは、考えなくはないです。でも、うちの子がそれを見て、例えば夜遊びだのと書かれていても、夜家にいることは彼らが一番知ってるし、背中を見てるから。そんな記事は信じないから大丈夫って私は思ってます。だから、いいかな」

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――常に向き合ってる自負も自信もある。それがすべてってことですよね。

「子供の頃、母親がおでこに手を当てただけで熱があるのが分かったり、好きな人が出来るとすぐバレるのが本当に不思議だったけど、自分が親になってみて、そっか、それは分かるな、と――。だって、ずっと見てるから。生まれた時からずっと、ずうっと見ているから。その子が何か不安に思ったり疑問に思ったり、迷ったり、ましてや体調のことなんて、母親が分からないわけがない。

確かに仕事的に離れている時間も短くないから、心配になることもあるし『120%大丈夫です』とは、仕事をしてようがしていまいが、言えないかもしれないけれど、そこのコミュニケーションはみんなが思っている以上にとっていると思います。こういう仕事をしているからこそ余計に見ていたいんです」

 
――子育てにおいて一番重きを置いてることって?

「そこはあまり考えたことがないですね。一緒に成長させてもらってる感じです。でも、親としては、迷っちゃいけないなって思います。自分が迷うことで子供を不安にさせてはいけない。でも、親だからこれをしなきゃいけないとか、母親らしくあらねばっていうのは、結構、早い段階で崩れました。母親だから泣いちゃいけないとか、いつも笑って、一生懸命ポジティブでいなきゃいけないと気負ったことで逆に長男に寂しい思いをさせてたことに気づいて――。

男の子だから逆に自分も頼られたいという思いもあったようで、『本当は行きたくないんだ』とか『疲れた』って言葉を聞いたほうが嬉しかったりするみたいなんです。『頑張って行きなよ』って私に言えるから。母親は正しくなきゃいけないとか、泣いちゃいけないなんてことはない。それも子供が教えてくれたこと。そうやって一緒に成長させてもらっています」

画像: オールインワン¥84000/コロネット(エリザベス アンド ジェームス) フィンガーブレスレット¥34000/ココシュニック

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――人生の中でのこれからのひとつひとつの選択という部分ではどう考えてる? 何が軸になっていくんだろう。

「仕事の時は仕事。家では家。というのはこれからも変わらない。ただ、人生という括りの中では、子供がいるいないにかかわらず、やらなきゃいけないことややりたいことはあると思うし、それがいつ降ってくるか分からないので、そこも優先順位はつけていません。目の前のことに常に一所懸命であること。それだけです」

 
――今またすごく輝いてる! こうして話していても、そう感じるんですけど、その理由があるとしたら、何だと思う?

「過去を振り返って思うのは、『正直に生きてる』感覚があるときって、やっぱり幸せというかよく笑ってるなって。今の私もそう。何かあるとしたら、そこなのかもしれません。あとはバカだからかな(笑)。ウチの母親が私の友達とすごく仲が良くて、『なんでそんなに若いの?』って聞かれた時に『バカだからじゃない?』って母が答えてるのを聞いて、面白いなと。

しかもね、海外の映画祭で福山さんにお会いした時に『変わらないですよね』って言ったら『バカだからだよ』って、母と同じこと言ってて、あながち間違ってないのかも! って思いました。ある意味、自分に正直でいることもそこと共通してる気もしますよね」

 
――大人になると周りを気にし過ぎて身が縮まってしまうってこともあるけど、いろんな意味で柔軟にっていう意味合いもあるのかな。

「そうかもしれないですね。そういう意味では、日本一、女優さんぽくない女優だと思います(笑)」

 
――それは感じます(笑)。女優として扱ってください。みたいな雰囲気も皆無だし、あまりに自然体で気負いも飾りもない。親近感がありすぎて距離感が分からなくなるくらい(笑)。

「あはは。よく言われます。そんな私が、こうして女優を続けられているって、ありがたいことだなって思う。ウチの旦那さんですら、いろんなことが覆ったみたいなので。いいのそれで? っていう。でも、それが私。何かに集中したり没頭したりするのが好きで、マグロみたいに止まっていられない。ある俳優さんには『君は僕の5倍生きてるよ』って言われたことがあるんです。スポーツカーみたいなスピード感だって。確かに、忙しいほうが生き生きしてる自覚はあります(苦笑)」

 
――忙しいほうが逆に疲れない?

「もちろん、疲れますよ。でも、何かの広告で、『疲れていたら可愛くないぞ』ってあって、すごく心に響いて、よく思い出すんです。私もやっぱり一人の女性として輝いていたいと思うし、その通りって。ママ業も仕事も、みなさん絶対に大変だと思うし、私も頑張らなきゃいけないことばかりだけど、笑っていたい。キレイごとに聞こえるかもしれないけど、忘れちゃいけないなって思う確かなことは、それに尽きる気がしています――」

 
 
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●FRaU2016年7月号発売時点のものです。
Photo:ND CHOW Make-up:UDA Hair:KEIKO TADA(mod’s hair) Styling:Machiko Hirano Interview:Takako Tsuriya Composition:Mayuko Kobayashi

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