いい女になりたい。でも、なにをもっていい女とするかはけっこう難しい。見た目も大事なのだろうが、歳を取るにつれて「中身も大事だろ」と思うようになってきた。しかしわたしの中身ときたら、長年ほったらかしにされ、曇ったり、ヒビが入ったり……早急にメンテナンスが必要な状況である。

 というわけで、この連載では、マンガ・映画・小説などに登場するいい女について考察していく、憧れすぎて自分の中に「飼いたい」と思ってしまうようないい女たちから、大いに学ぼうじゃないか。
 

今月のいい女

規格外のファッションセンスを持つ女

 変わった服を着るのが好きだ。買い物の基準はつねに「おもしろいかどうか」であり、どんなに上質で仕立ての良い服を見ても、つまらな ければ購入を見送ってしまう。もうすぐ40歳になる女がそれじゃヤバいかな〜と思ってまじめな服を買う練習もしているが、職場以外ではできるだけ変わった服を着ていたい。

 みなさんの中には「奇抜な服を着てる人ってなんなの? 恥の概念とかないの?」と思っている人がいるかも知れないし、実際「自意識過剰ですね」的なことをチクリと言われたりもする。が、そう思われてもなお変わった服を着たい。なぜならすごく元気が出るから! それに尽きる!

 「ふつう」とは言い難い格好をするとき必ず思い出すのは、子どもの頃に読んだ『長くつしたのピッピ』のことだ。おさるさんのミスター・ニルソンと一緒に暮らし、牛の角を素手でポキッと折れちゃうほどの怪力を持ち、とんでもない資産家でもある9歳児。作者もよくこんなスペック思いついたなと言いたくなるような、規格外ガールである。

 どれをとってもふつうじゃないピッピは、服装もなんだか独特。左右で色の違う靴下をはき、靴の大きさは足の2倍もあり、手作りの青いワンピースは、布が足りなくて赤い布で継ぎ当てしてある(それはもう青いワンピではないのでは)。でも、当時小学生のわたしは、そんなピッピをすごくいい女だと思った。似合う/似合わないを超え、着たいものを着たいように着る女のパンクな生きざまにしびれた。

 ピッピの隣人であるトミーとアンニカの兄妹は、自由すぎるピッピを見て、びっくりはするものの、あっという間に仲良くなる。わたしもまた、ピッピが大好きになった。そして、彼女から常識を疑うことの楽しさを学んだり、奇異の目で見られても堂々としているピッピってすげえ根性あるなと思ったりした。

 将来グレるとしたら、お揃いの特攻服でツルむよりは、ひとりでおかしな格好をする女になりたい。そう思わせてくれたピッピは、人生の師である。結局わたしはグレなかったけれど、変わった服への憧れはずっと消えず、初めて自分のお小遣いで洋服を買ったのはラフォーレ原宿だった。あそこに行けば変わった(それでいてオシャレな)服があると思ったから。で、HYSTERIC GLAMOURとBA-TSUのカットソーを買って、ボロボロになるまで着た。それを着ている間だけは、高倉健の映画を見終わったばかりの男の人みたいに、強気になれた。

 いまだに「ちょっと冒険がすぎるのでは?」という服を見ると、頭の中のピッピが煽ってくる(笑)。着ることは生きること。冒険のない人生でいいのかと。だからわたしは変わった服を着る。憧れのピッピにちょっとでも近づきたいから。


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PROFILE

トミヤマユキコさん
1979年生まれ。早稲田大学文化構想学部助教。少女漫画を中心としたカルチャー関連の講義、研究を行う。また、ライターとしても様々な媒体でコラムや評論を執筆中。「姿勢のいい女になりたくて、職場にバランスボールを導入しました。ゆらゆらしながらデスクワークをしています」

 
●情報は、FRaU2017年7月号発売時点のものです。

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