「みうらじゅんさんといとうせいこうさんに憧れてペンネームを平仮名にしたほどです。そんなお二人の20年をかけた「レジェンド仲良し」っぷりを映画にしました。」(編集者など おぐらりゅうじさん) 

 

対談したのは……

画像1: 対談したのは……

いとうせいこうさん
1961年、東京生まれ。作家、クリエーターとして、活字/映像/舞台/音楽/ウェブなど
のジャンルで幅広い表現活動を行う。昨年、いとうせいこう&リビルダーズでトリビュート盤『再建設的』をリリース。
 

画像2: 対談したのは……

おぐらりゅうじさん
1980年、埼玉県生まれ。フリー編集者・ライター・構成作家など。雑誌「テレビブロス」編集部員。映画『ザ・スライドショーがやって来る!』では、構成と監督を務めた。
 

「ザ・スライドショー」とは……
みうらじゅんが撮りためた写真やバカネタを、スライドによってスクリーンに大きく映し、それを見たいとうせいこうが即興でツッコミを入れるトークショー。1996年に第1回が開催され、これまでに13公演、20周年を迎えた。

 

みうらさんの無意識を触診して
ビヨヨヨヨンと出てきちゃった

画像: みうらさんの無意識を触診して ビヨヨヨヨンと出てきちゃった

おぐら 最初の試写の後、みうらさんから「ここをこうしよう」というメールが届いたんですが、その細部に対する修正案が本当にお見事で。

いとう まず記憶力がいい。俺は何も覚えていないタイプだけど、パッと見の印象と逆なんだよね。

おぐら 一見、いとうさんのほうが細かくて、記憶力がありそうですよね。

いとう あと、みうらさんはものを作るうえでものすごく粘り腰。自分が関わったものに対して最後まで厳しいところがある。それに、実は、ものすごい心配性なの。「いとうさんが、スライドショーが、そう思われちゃったらどうしよう」という心配が常にみうらさんを襲うんだよ。

おぐら 自分ではもう過不足なしと思う構成で仕上げたつもりだったのに、みうらさんが「あのシーンの間に3分だけこれを入れたらもっとおもしろくなるよ」と言うので、最初は半信半疑で入れてみると、抜群にハマるんですよ。それで、格段におもしろくなる。あれはシビれました。

いとう 寝るときに考えてるんだろうね。ガバっと起きてメールが来るでしょ? 全然ゆるくない。たとえば、以前、四国のお寺にトークショーで呼んでもらったことがあって、おもしろそうだし一緒に行って楽しくやろうと思ってたら、みうらさんが「もしもお客さんが楽しまなかったらどうしよう」って。「そんなことないよ。みうらさんと俺のファンが来るわけだし」、「いや、こんな時間からやったら帰りが暗くなって、ぶーぶー言い出すと困るから、おむすびを配るのはどうか」と言い出して。「そんなのは要らないと思うよ」と言ってたのに、お寺と交渉して配ることにしちゃってるんだ。普通は、お土産にどうぞって持たせれば印象がいいのに、みうらさんはそのことに夢中になっちゃうから、出てきた途端に渡しちゃう。全員がバリバリ食ってるなかでトークして、やりにくかったわ〜! 

おぐら いやげ物と同じ発想だ(笑)。

いとう クレーム封じのためで、笑いを狙ったんじゃないんだもん。考え方が賄賂なんだよ。券を売って来たお客にはこっちからもお返しを1個する、という今までの興行界にはなかった変なシステムを作っちゃった。みうらさんが京都人だからというのもあると思うけどね。

おぐら それがみうらさんの言う、サービス業だったりしますよね。

いとう そういうことをやってお客がご贈答を返してくれたらまた返したとして、面倒くさい親戚のおばちゃんの世界になっちゃう。映画のタイトルだって、やっぱり変えたいとか言い出すから。

おぐら いとうさんは、タイトルの「レジェンド仲良し」を聞いたとき、どう思いましたか? 

いとう 突然、「レジェンド仲良しだ!」って言われても、よくわかんない。仲良し界のレジェンドだってことが言いたいなら、仲良しレジェンドでもいいじゃん。インフルエンザのときに思いついただけあるよ。

おぐら これまでの「ザ・スライドショー」の公演タイトルは、毎回いとうさんが決めてますからね。

いとう この映画に関しては、難しいんですよ。スライドショーは、みうらさんが勝手に撮り貯めた写真をいきなり出して、初見で僕がツッ込むという構造が基本的にあるんだけど、その中にいろんな駆け引きがあるじゃないですか。シンプルにできてるように見えて、実はシステムを細かく語ろうと思うと難しい。「レジェンド仲良し」に関しては、「どういう意味なの?」って、三回くらい聞いた。間を空けてだよ? でも、ロレりながら「アズカバンの秘密なんだ」って、要するに言い訳を思いついたの。どういうことなんだって追いつめれば追いつめるほど、言い訳でおもしろいことを言うわけ。それが、スライドショーのみうらさんの芸だから。何とか俺を説得しようとするときに、ぶっ飛ぶんだよね。

おぐら 今回も、後で調べたら「アズカバンの囚人」だったって(笑)。

いとう 確かにそうだ! 囚人じゃどうしようもねーじゃねーかよ。

おぐら (笑)。タイトルからして、いとうさんのツッコミ待ちなんですよ。

いとう でも、ずっとこのことで喋れるじゃん。狙ってないと思うけど、結果そうなってる。

おぐら みうらさん以外に、レジェンド級の仲良しっていますか?

いとう いないし、欲しくも別にないわけよ。あんまり長い間しつこく「親友じゃないか」と言ってくるから折れたんだよね。「もういいよ親友で」って。それに、この数年のみうら
じゅんの人間の練れ方がすごいんだよ。いろいろ布団の中で考えたことがおもしろいんだよね。いいことを言うようになって、それは素直に評価したいし、これを伝えたいなって思うじゃないですか。そこはやっぱり、編集者根性が出てるよ。

おぐら いい素材に出会った!と。

いとう いい素材だよ。元々、世の中に優れたツッコミを入れてきたわけだけど、最近はボケとしても蛭子(能収)さん級に突入してますから。

おぐら いとうさんのツッコミで、みうらさんのボケのバリエーションが浮かび上がりますよね。

いとう 天然の部分もあるけど、基本はすごく組み立ててる人だから。組み立てをしてくるボケってなかなかいないと思うんです。毎回延々とある、みうらトラップのようなものに俺が引っかからないので、「クソー!じゃあ次はこれだ!」となるのがスライドショーなんだよね。

おぐら いとうさんもそこか!という視点でツッコミを入れるから。

いとう 普通の人は気づけないよ。 でも俺は「いとうさん、気づいて! 僕がここにいるんだよ!」って言ってるのがわかる。だから、とりあえず当たってみようと、こんこんとノックする。お医者さんの触診ですよ。ポンと触診してみたらビヨヨヨヨンと出てきちゃったのよね、ジャンピングフラッシュが、っていうショーなの。その駆け引きをわかってくると、何度見てもおもしろいはずなんだよね。その理由としては、二人の関係性もあるけど、スライド(機)っていう物があるのが大きいですよね。普通のトークショーだと、ボケとツッコミになりがちじゃん。みうらさんの無意識と自意識が映っている、一つボケてる物が真ん中にいるから。ネタを見てどっちをツッ込むのが良さそうかなと考えていると、サングラスの奥の目がギラっと光るから、自意識で来るんだなということがわかる。でも、俺は無意識をツッ込みたいから勝手にそうすると、みうらさんは「そんなことを言いたかったわけじゃない!」とガタガタと崩れちゃうわけ。それで、自意識のほうに戻そうとするときに、天然ボケに入る。

おぐら 改めて、すごい構造だ……。いとうさんの目を気にしすぎて、みうらさんがおかしくなってきたなと思ったこともありますか?

いとう これ以上はヤバいぞっていうのがあるよね。でも、言ってみれば、「いとうさんのために集めてきたんだよ」と僕に責任を押し付けてるんだよ。集めてこないでいいよ! カラスがゴミを集めてくるようなものじゃん。家のベランダで巣作りは止めてくださいって。そういう関係が爆笑を生むようになったんだよ。

おぐら 20年かけて、とんでもないレベルの高いショーに到達してますよ。

いとう 普通のマニアがやらないことを時間をかけてやることで、おもしろくない世の中をおもしろくしてるわけよ。ネガティブな承認欲求がいっぱいある中で、みうらさんの「見て見て!」は本当におもしろい。これが大事なんだよ、人生では。何が今おもしろいんだろうと考える人と、こうなんじゃない?と客観的に考える人みたいな組み合わせが、いっぱい世の中にできた。そういう意味では、リトルレジェンド仲良し、みたいな関係を作るだけで、人生は大きく変わるとは最近考えるんだよね。

おぐら 「レジェンド仲良し」って、そうやって使えばいんですね(笑)。

いとう まぁでも、俺はずっと、みうらさんには「今日のあなたが一番おもしろい」と伝えたくてツッ込んできたわけだけど、これだけやっても結果、「レジェンド仲良し」(笑)。こんなタイトルをつけてくるっていう巨大なボケという無意識があるから、みうらさんには。だから、ズタズタに切っても大丈夫なんだよね。
 

INFORMATION

画像: © 2017 WOWOW INC. ARK co., ltd.

© 2017 WOWOW INC. ARK co., ltd.

映画『ザ・スライドショーがやってくる!「 レジェンド仲良し」の秘密』
「ザ・スライドショー13」の舞台裏を中心に、過去の公演映像を交えながら、みうら氏が撮りためた膨大な量の写真に、いとう氏がツッコミを繰り返すイベント「ザ・スライドショー」の魅力をひもとくドキュメンタリー。

 
▼みうらじゅんさんとの対談は
 コチラをチェック!

 
●情報は、FRaU2017年3月号発売時点のものです。
Photo:Ryohei Tsukada Text:Tomoko Ogawa

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