いい女になりたい。でも、なにをもっていい女とするかはけっこう難しい。見た目も大事なのだろうが、歳を取るにつれて「中身も大事だろ」と思うようになってきた。しかしわたしの中身ときたら、長年ほったらかしにされ、曇ったり、ヒビが入ったり……早急にメンテナンスが必要な状況である。

 というわけで、この連載では、マンガ・映画・小説などに登場するいい女について考察していく、憧れすぎて自分の中に「飼いたい」と思ってしまうようないい女たちから、大いに学ぼうじゃないか。

 

今月のいい女:
男を上手に振り回す女

 知人友人の勧めにしたがって、恋愛リアリティ番組『バチェラー・ジャパン』を観はじめたところ、見事にハマってしまった。

 同番組は、結婚以外の全てを手に入れたバチェラー(独身男性)の「久保さん」をめぐって、25人の女が恋のバトルを繰り広げるというもので、久保さん自身も言っていたが、あまり上品なものではない。そりゃそうだ。金にも顔にも恵まれた男が、オーディションを勝ち抜いてきた美女たちの中から「どれにしようかな」みたいな感じで、未来の奥さんを選ぶというのだから。

 しかし! 実際に観始めてしまうと、下品かどうかなんてことは心の底からどうでもよくなる! というのも、この女たちが「選び抜かれた女」であることで、久保さんとの駆け引きがまるでスポーツのように感じられてくるから。私たちが目撃するのは、プロ選手による「スポーツとしての恋愛」なのだ。

 これまでも存分にモテてきたであろう25人が、持てるテクの全てを使ってライバルを蹴落としたり、抜け駆けしようとしたりする様子は、ドロドロなんかじゃなく、むしろ清々しい。恋愛偏差値の低い私みたいな人間からすれば、彼女たちは嫉妬や蔑さげすみの対象ではなく、ただただすごい人達だ。

 25人の女たちの中で、とくに印象的なのが「ゆきぽよ」と「岡田ゆり子」のふたりである。彼女たちに共通するのは、久保さんを動揺させる何かを持っている、ということ。

 まず「ゆきぽよ」は今どき珍しいほどギャルギャルしいギャル。久保さんは、この異星人のような女に最初かなり引いてしまうのだが、それでも彼女は「大丈夫♡」「慣れてくる♡」とか言って、本当に久保さんの苦手意識を吹き飛ばしてみせる。

 そして「岡田」は、他の女たちが大勢いる前で「久保さんってどうやって愛情表現するの?」と訊き、彼をたじろがせた女だ。好きな女だけに見せる何かがあるのか、そのヒントだけでも知りたかったのだ。みんな久保さんに選ばれたくて、嫌われたくなくて、ただ待つだけの女になっているのに、彼女だけはみんなにいい顔をするバチェラーへの苛立ちを隠さなかった。

 このむき出しの感情に久保さんはうろたえたわけだが(この時の困り顔は本当に見物である)、私が男だったらこういう「突かれたくない所を突く女」は、怖いというより、自分の新たな一面を引き出してくれそうでわくわくする。奔放でわがままで、でも男に新しい世界を見せてくれている女……。良妻賢母タイプではないかもしれないけれど、こういうタイプもまた、いい女に違いない。

 久保さんは結局ふたりを選ばず、別の幸せを手に入れた。それはそれでおめでたい。が、私としては、あのふたりが久保さんを振り回す様子をもうちょっと眺めていたかったのである。


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PROFILE

トミヤマユキコさん
1979年生まれ。早稲田大学文化構想学部助教。少女漫画を中心としたカルチャー関連の講義、研究を行う。また、ライターとしても様々な媒体でコラムや評論を執筆中。35歳を過ぎてからハッキリと体力の衰えが。いい女になるためというより、生き延びるために運動をしたいです。


●情報は、FRaU2017年8月号発売時点のものです。

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