就職活動の裏にある人間模様をリアルに描き出し大きな話題を呼んだ直木賞受賞小説『何者』が映画に。その原作者である朝井リョウ、そして、映画で主役を演じた佐藤健。実は二人は私生活でも親交のある友人同士。

人気作家と人気俳優……彼らは一体「何者」なのか? 友人だからこそ語ることのできる誰も知らないお互いの “素顔”。そこから見えてきた、二人の “意外な一面” とは?

FRaU 2016年11月号掲載「心の中を見せない友人同士」インタビュー全文公開!

 

たこ焼きパーティーに
突然、現れた “佐藤健”

画像: たこ焼きパーティーに 突然、現れた “佐藤健”

佐藤 今さ、朝井君の『スペードの3』を読んでいるんだよね。

朝井 うそっ。それは嬉しい〜‼

佐藤 いや、凄く面白いよ……朝井リョウの性格の悪さが炸裂してて(笑)。

 
――撮影から始まった今回の取材。カメラの前で顔を合わせるなり、親しげなボーイズトークがスタート。それもそのはず、二人はプライベートでも親交のある友人同士。出会いは約4年前。朝井さんいわく「共通の友人である社会学者の古市憲寿氏宅に突然、佐藤健が現れた」のがすべての始まりだったそう。

朝井 僕はその時のことを一秒単位で明確に全て覚えているんですけど。驚くことに、彼は一切覚えていないらしいんですよ。

佐藤 なんで行ったのか、そこに誰がいたのかすら、覚えていない(笑)。

朝井 すごいですよね、これはもう人生における “晴れの日” の数の違いですよね。まあ、その日、何が起きたのか、僕の目線から詳しく話しますと……。まず、私は古市宅でたこ焼きを焼いていたんですよ。大学生時代、私は “たこ焼きパーティー” ばかりしていたので、たこ焼きを焼くのが凄く上手なんですけど。

佐藤 どうでもいい情報だな(笑)。

朝井 で、男4人でワイワイたこ焼きをつついていたら、突然、古市氏が「友達を呼んでいい?」と電話をかけ始めて。今でも忘れない、夜中の12時過ぎ、玄関のチャイムが鳴って現れたのが “俳優・佐藤健” だったわけですよ‼ でも、そこで「佐藤健だ‼」と騒ぐのは失礼だと思ったので、動揺をひた隠し、必死に平静を装いつつ「何飲みます?」と飲み物を勧めてみたりして。「具は何がいい?」なんて、気を使い、逆にたまにタメ口を挟みながら。

その驚きを素直に吐露できたのはその数時間後。健君が帰って、古市氏の家を出て、タクシーに乗った瞬間、友達と一緒に叫びましたからね。「東京だね‼」「東京ってすごいね‼」って(笑)。

佐藤 はははははは‼ 

朝井 もうね、とにかく驚いたし、初対面の人が集まるような場所に、普通に現れたのもまた意外だった‼

佐藤 普段は行かないんだけど……あの日はお腹が空いていたのかな。たこ焼きが食べたかったんですよ、多分(笑)。

 

意外とフランクな役者。
想定外によく喋る作家。

画像: 意外とフランクな役者。 想定外によく喋る作家。

――衝撃の出会いを経て始まった友情関係。初対面の印象を尋ねると、こんな答えが返ってきた。

朝井 最初の出会いも驚きでしたけど、さらに驚いたのが……この人、普通に一般客に混ざって、各都市の “リアル脱出ゲーム” に参加していたりするんですよ。 “リアル脱出ゲーム” は友達と一緒に行っても、シャッフルされて、知らない人とグループを組まされたりするらしいんですけど。そこに、まさかの佐藤健が混ざっているっていう。もう頭真っ白になりますよね、脱出どころの騒ぎじゃないですよね(笑)

佐藤 僕だって、できたらそれは避けたいよ。でも、それより「参加したい」気持ちが勝っちゃうっていう(笑)。

朝井 実際、そうなってしまった時はどうするの?

佐藤 他の参加客と同じ。真剣に謎解きに臨みますよ。普通に “たける” という名札をつけて、「よろしくお願いします」と自己紹介から始めますよ。

朝井 周りは平静を装いつつ心の中で「知ってるわ‼」と叫ぶんでしょうね。その気持ち、わかるなぁ(笑)

佐藤 ちなみに、古市宅の出会いの後、一緒に食事に行くことに。それが僕にとっての “朝井リョウとの初対面の記憶” になるわけですけど。その時の印象は「よく喋る人だな」。当時から朝井君のことはもちろん知っていたし、作家の友達も初めてだったから「どんだけ知的な人なんだろう」と思うじゃないですか。でもこれが、まあ、喋る喋る。しかも、その時の話の内容が「浜崎あゆみの声が一番よく出る母音について」で……。

朝井 結果、それに飽きた健君が電話で仕事の話を始めるっていうね(笑)

佐藤 聞きかじるぶんには面白いんだけど、さすがに一時間以上ぶっ通しで「浜崎あゆみのキーについて」熱く語られたらね。そりゃあ、かかってきた仕事の電話にも出たくなりますよ(笑)

 

こんなに会っているのに
未だに朝井リョウは “謎”

画像: こんなに会っているのに 未だに朝井リョウは “謎”

――撮影中、朝井さんの『スペードの3』の話題で盛り上がっていた二人。人気役者と直木賞作家、出会う前からお互いの作品はもちろんチェックしていたそう。

佐藤 『何者』を読んだ時も思ったけど、朝井君の性格の悪さが炸裂している作品は本当に面白いよね。

朝井 最高の褒め言葉ですね(笑)

佐藤 もちろん、褒め言葉です(笑)。ちなみに、朝井君は女性を書くことが多いよね。その理由に関して「同性は自分の想像を超えないから」なんて公言しているけど。「同性を書くとどうしても自分自身が重なる。自分の裸を見られるのが恥ずかしいから、異性でカモフラージュしている」という説が我々友人達の間で浮上しておりますが。

朝井 すぐこういうことを言い出すのが、彼の怖いところなんですよ〜‼ 他人を冷静な視点で見ているというか、分析しているというか。様々な人と触れ合う特殊な世界に身を置いているからか、目の前にいる人が “本物” かどうか、常に見極めているんだと思うんですよ。それを芸能界に入った17歳から続けているから、人を見る目は否が応にも養われているだろうし。だからこそ、見られているこっちはドキドキするんですよ。

佐藤 それは確かにあると思う。でもね、朝井くんに関しては、未だによくわからない‼ もう何回も会っているのに、この人だけは「本気で言っているのか」それとも「すべて嘘なのか」本当に判断できないんですよ。

朝井 ここに来て “偽物” かもしれないというまさかの展開(笑)

佐藤 今のこの発言のおどけた感じも演出の恐れがありますからね(笑)。まあ、これだけ「わからない」時点で、人としての深みはあるわけだから。そういう意味では “本物” なんでしょうけど。

朝井 基本、僕自身は何も考えていないんですけどね。でも、周りから「わからない」と言われることは本当に多くて。以前、僕のことをよく知る学生時代の友人達が、僕のいない場所で、僕について語るという雑誌の取材を受けたのですが。そこで飛び出したのも「何を考えているのかわからない」という言葉で。その誌面を読んで僕は衝撃を受けたんですよ。「高校時代、あんなにも同じ時間を共に過ごしてきたのに⁉」って。

佐藤 朝井君の場合は作品の影響も大きいんだと思うよ。同級生達からしたら「おい、俺達のことを見て、朝井はこんなことを思っていたのかよ」っていう。むしろ、同級生達のほうが衝撃を受けたというか(笑)

朝井 いや、それは本当にあるかも。

佐藤 実際に『何者』を書いた後、それ原因で友達が減ったんでしょう?

朝井 そうなんですよ‼ 大学時代の女友達の一人からは正式に絶交を宣言されましたからね。電話がかかってきて「滅多なことがない限り、今後、絶交」って。僕としては、彼女のことを書いたつもりは全くなく、執筆中に彼女を思い出した瞬間は1秒もなかったんですけど。本人は「自分のことを書かれた」と思ってしまったみたいで……。

佐藤 でも、それだけ多くの人が「自分のことかもしれない」と思える作品を書いたわけだから。それは作家としてはすごいことだと思うよ。

朝井 でも「この歳で絶交とかあるんだ」って。驚いたし、さすがにちょっと落ち込みましたけどね(笑)

 
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PROFILE

佐藤健 Takeru Sato
1989年 3月21日生まれ。07年「仮面ライダー電王」で初主演。その後、ドラマ『ROOKIESルキーズ』で注目を集め、NHK大河ドラマ『龍馬伝』、『天皇の料理番』等でその実力を高く評価され、映画『るろうに剣心』全三部作では国内外の話題をさらった。

朝井リョウ Ryo Asai
1989年 5月31日生まれ。大学在学中『桐島、部活やめるってよ』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。その後も数々の話題作を世に送り出し、13年『何者』で直木賞を男性史上最年少受賞。現在、『何者』のスピンオフ的な作品『何様』が大きな話題を呼んでいる。

 

INFORMATION

『何者』
就職活動を目的に集まるようになった拓人(佐藤健)、光太郎(菅田将暉)、瑞月(有村架純)、理香(二階堂ふみ)、そして「就活はしない」と宣言する理香の彼・隆良(岡田将生)。最初は協力し合っていた彼等だが、仲間の一人に “内定通知” が届いたその時、それぞれの本音があらわになる……。

 
●情報は、FRaU2016年11月号発売時点のものです。
Photo:Mai Kise Styling:Satoshi Yoshimoto Hair&Make-up:MIZUHO(ritaminz) Interview&Text:Miwa Ishii

 
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