本は読みたいけど、自分で選ぶのは難しい……。そういうときこそ、人に聞いちゃいましょう。

今回は、著述家・速水健朗さんが、これまでの人生で出会った本と、その魅力を紹介してくれます。

 

本を読む人……

よにんめ:速水健朗さん

画像: よにんめ:速水健朗さん

PROFILE
1973年石川県生まれ。著書『フード左翼とフード右翼 食で分断される日本人』(朝日新書)など。最新刊は東京本2冊『東京β 更新され続ける都市の物語』(筑摩書房)と『東京どこに住む? 住所格差と人生格差』(朝日新書)

 

最新型アーバンライフを
送るための都市論本

映画『ズートピア』。田舎育ちのジュディは、夢を持って都会に行く。都会には、多様な仕事があり、ずるい人もいるけど、信じるべき友だちもいる。でも田舎って……といった具合の超絶都市礼賛映画だ。

現代は、都市の時代。地方移住がブームなんて嘘で、東京は、毎年10万人ずつ人口が増えているし、世界的にも都市に人口は集中している。なぜなら、お金も仕事も人間も皆、多様性のある場所に集まるから。『ズートピア』のテーマは「多様性」。都市はそれを体現する場所。

とはいえ最新の「都市生活者像」ってどんなだろう? 「夜景にワイングラス」みたいなものとは違うはず。現代の都市生活を捉えるための都市論を3冊取り上げてみたい。

 

NYの高級住宅地に住む
妻たちの実態を描くノンフィクション

画像: ウェンズデー・マーティン『パークアヴェニューの妻たち』(講談社)

ウェンズデー・マーティン『パークアヴェニューの妻たち』(講談社)

世界一家賃が高いといわれる街、ニューヨーク。その中の高級住宅地パークアヴェニューに引っ越してきた著者の悪戦苦闘が語られるノンフィクション。

女性で文化人類学者の著者は、フィールドワークのつもりでこの街で部屋を探し、そこに住む人々の生活に触れようとする。見えてくるのは、NYのアッパーミドル層の生活様式。ルルレモンのヨガウェアにクルマは高級SUV。子育て層が、いい公立学校の学区を巡っての部屋探し競争をする様は、中央区や文京区などのそれとよく似ている。

ちなみに、子育ても、郊外の一軒家よりも都心というのがいまどきの流行。NYといえども、白金や富ヶ谷などのセレブとさほどずれはない。今のアッパーな都市生活の動向を確認するための1冊。

 

タワーマンションが舞台の
ママ友ヒエラルキー

画像: 桐野夏生『ハピネス』(光文社)

桐野夏生『ハピネス』(光文社)

桐野夏生と言えば、社会問題をモチーフにしてきた小説家。『ハピネス』の舞台は、湾岸のタワーマンション。現在の東京で最も人口増加が激しい豊洲である。

題材に描かれるのはママ友コミュニティ。地方出身で一般的な家庭に育った主人公だが、虚栄心が高じてタワーマンションに住んでいる。

しかし、ここは分譲か賃貸かはもちろん、住んでいる部屋の階数でヒエラルキーが決まってしまう恐ろしい世界。そこで下のポジションを余儀なくされる主人公だが、マンション外から現れた「江東区の土屋アンナ」の異名をとる登場人物の「不倫騒動」により、そのヒエラルキーは崩壊していく。都市生活そのものが、ホラーでありサスペンスであるというのが本作の読みどころ。

 

地価の高い都心に住む理由とは?
「都心」と「それ以外」の格差

画像: 池田利道『23区格差』(中央公論新社)

池田利道『23区格差』(中央公論新社)

23区内で最高の所得水準を誇るのは港区の904万円、最下位は足立区の323万円。その差は2.8倍。こんな具合に、数値でわかる現代の都市生活の実態を探った本。

元々、東京都心部はドーナツ化によって人口が減っていた。それが変化したのは、この10年強。著者の分析によると、アッパー層が「都心に暮らすという生活価値の再発見」をしたのだという。アッパー層が郊外ではなく都心を選び始めているというのはNYと同じである。

経済的な成功者がわざわざ地価の高い都心に住む理由は何か? 教育での効果、コミュニティ、通勤時間の短縮など人それぞれ。ひとつ言えるのは、「都心」と「それ以外」の格差の拡大は、無視できなくなりつつあるという事実。さあ、あなたはどこに住む?

 

●情報は、FRaU2016年8月号発売時点のものです。

 

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