本は読みたいけど、自分で選ぶのは難しい……。そういうときこそ、人に聞いちゃいましょう。

今回は、作家・鈴木涼美さんが、これまでの人生で出会った本と、その魅力を紹介してくれます。

 

本を読む人……

ごにんめ:鈴木涼美さん

画像: ごにんめ:鈴木涼美さん

PROFILE
1983年東京都生まれ。セクシータレントを経て作家に。慶応大卒。東京大学大学院学際情報学府修士課程修了。著書『AV女優の社会学』(青土社)、『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』(幻冬舎)。

 

「オンナ」でいることを
100倍楽しむための3冊

どんな反論にあっても、私は断言する。オンナは、オトコより100倍複雑です。見た目、学歴、収入、愛嬌など、オトコにもオンナにもポイントは数多あるものの、オンナの場合、人間として高度になるべくポイントを上げても、オンナとしてのポイントは必ずしも上がらない、それどころか下がることだってある。

だからこそ、どんな生き方をするかの選択肢が無限に広がり、何を捨てて何をとるかの選択を何度も迫られ、悩みも多いけど、その分楽しい……というか、その複雑さを嚙みしめて楽しむ余裕がないと、オンナとして生きるのは結構辛いものになりがちなのであります。

本を読むのは、女の複雑さと付き合うため、とも言えるのです。

 

男女不平等さを逆手にとって
強かかつ器用に生きるOL達

画像: 小笠原祐子『OLたちの〈レジスタンス〉』(中央公論社)

小笠原祐子『OLたちの〈レジスタンス〉』(中央公論社)

企業の中でオンナたちがいかに強かに器用に生きているか、その生態にミクロ的な調査で迫った本。

私がこの本を好きなのは、女性である著者と、描かれるOLたちの距離感が非常にフェアで、日本企業の雇用形態を「不平等なシステム」と指摘しながらも、それを糾弾するのではなく、それがあるが故の女性の楽しみやおかしみを見出している点。

「構造的劣位の優位性」というのがまさにそれで、確かにある意味で劣位にあるそのポジションを、それはそれで自明なものとして、逆手にとって戦ってしまうような女の柔軟さが読み取れます。

男女不平等に意義を唱える本はたくさんありますが、弱者の楽しみ的なものも含めて、けして暗い存在ではないOLを描き出した傑作です。

 

数字で分析するセレブ妻の
出会いから悩みまで見えてくる一冊

画像: 森剛志・小林淑恵『日本のお金持ち妻研究』(東洋経済新報社)

森剛志・小林淑恵『日本のお金持ち妻研究』(東洋経済新報社)

どんな人と結婚したいか、と聞かれて、「お金持ち」と応える私のような薄情な女はそんなに多くないにせよ、「貧乏人」と応える人は非常に少ないのでは?

本書は、日本の高額納税者の妻たちへの調査を元に、どんな人がセレブと結婚しているのか、出会いのきっかけから、容姿、悩みまで、露骨に数字で分析しています。別に美人が金持ちと結婚しているわけじゃないとかの事実は勿論、日本でのキャリア形成の構造的な問題にまで迫った分析は面白く、セレブ女性誌に登場する「セレブ妻」が実は大半の「お金持ち妻」の実態ではないことも指摘。

なんというか、キノクニヤでパエリア買って、ボッテガのバッグで幼稚園お迎え、というほどシンプルではない彼女たちについて、見えてしまう本でもあります。

 

読後は代官山や銀座を
歩く気分が変わる一冊

画像: ジャン・ボードリヤール『消費社会の神話と構造』(紀伊國屋書店)

ジャン・ボードリヤール『消費社会の神話と構造』(紀伊國屋書店)

どうせだから女性研究で3冊揃えようかとも思ったのですが、労働者・妻、ときたら次はやっぱり消費者としての女について考えてみるのもいいんじゃないかと思い、私のだらしなく素敵な消費活動の原点となっている名著をご紹介します。

私は21歳頃小金持ちで、日本の多くの百貨店を頑張って支える女性たちの一角をなしていました。というかシャネルを重度に愛していました。シャネルのバッグを買うとは、現代社会においてどういう行為なのか、そういうことを考えるにあたって、キホンのキとなるボードリヤール。

私たちを魅了するのは何なのか、欲望の塊である私たちが欲しがっているのは結局のところ何であるのか、この本を読むと代官山や銀座を歩く気分もだいぶ変わります。

 

●情報は、FRaU2016年8月号発売時点のものです。

 

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