本は読みたいけど、自分で選ぶのは難しい……。そういうときこそ、人に聞いちゃいましょう。

今回は、音楽家・松永天馬さんが、これまでの人生で出会った本と、その魅力を紹介してくれます。

 

本を読む人……

ろくにんめ:松永天馬さん

画像: ろくにんめ:松永天馬さん

PROFILE
1982年東京都生まれ。“トラウマテクノポップ” バンド「アーバンギャルド」のコンセプターにしてアジテーター。ヴォーカルなどを担当。著作『自撮者たち 松永天馬作品集』(早川書房)、短編集『少女か小説か』(集英社)。

 

あなたは◯◯女子?
女子のアイデンティティ図鑑3冊

「◯◯女子」というワードは呪いの言葉です。呪いが言い過ぎであればややこしい言葉です。とかく社会からレッテル張りされがちで、近年ようやく男からの一方的な目線から解き放たれつつあった女たちを再びカテゴライズしかねない呪文だからです。しかも女子たち自身の手によって……。

年齢や学歴、職歴、恋愛歴に結婚歴などで自分や他者を分類したがるのは何故でしょう。ヒントがこの3冊にあるかもしれません。近年の日本人女性の生態を克明に記録したこの3冊は、いわば現代版・女の生き方図鑑と言えるでしょう。

そこには女による女のための肯定と否定が、提案と批評が、愛と憎とが渦巻いています。

 

性の自立や対等な自由恋愛を謳う
現代女性の今どき「ビッチ図鑑」

画像: 湯山玲子『 ビッチの触り方』(飛鳥新社)

湯山玲子『 ビッチの触り方』(飛鳥新社)

蔑称と尊称は昔からコインの裏表。オタクしかりメンヘラしかり、世が世なら罵倒語だったのが時代を経て「クールじゃね?」と逆転することはままあります。

著者はこの本を分水嶺として、日本ではまだまだ市民権を得ていないビッチという呼称をあえてブランディング化することを提案。芸能人の浮気や不倫に手厳しい今だからこそ声高に叫びたいビッチ讃歌! それはただの不道徳主義では当然なく、女性の性の自立や対等な自由恋愛を謳っている意味で非常に社会的。

本書の白眉は、逆輸入ビッチ、文化系ビッチ、路面カフェビッチなど、様々なビッチを網羅した「ビッチ図鑑」。「ネットで別人格になって、過激なセクシーショットをアップ」するバーチャルビッチなんて、SNSに冒された現代人を象徴する事例も。

 

著者・辛酸なめ子による
渾身の女子校研究レポート

画像: 辛酸なめ子『 女子校育ち』(筑摩書房)

辛酸なめ子『 女子校育ち』(筑摩書房)

自身はおろか祖母、母、妹と三代にわたって女子校出身者である著者による渾身の研究レポート。いわゆる「女子校あるある」で処理されてしまいそうなトピックも丹念に掘り起こし、実地調査やアンケートなども怠りません。その執着は本書が著者のアイデンティティを巡る旅でもあるからでしょう。

女子校という閉ざされた環境で多感な時期を過ごした経験は良くも悪くもスティグマを残し、彼女たちのその後の人生を大きく左右します。しかし得るものも少なくなく、特に文中で繰り返される女子校出身者同士の共感からくる結束の固さや友情は、やはりかけがえのないものなのでしょう。

女の敵は女と言いますが、女の味方だって女なんです。余談ですが、知り合いのぶっ飛んでる女性は女子校出身者が多い気がします。

 

雑誌の読者像を想定し
今を生きるリアルな女性を描く

画像: 能町みね子『 雑誌の人格』(文化出版局)

能町みね子『 雑誌の人格』(文化出版局)

「もしも雑誌に人格があったら?」そんな妄想がフルカラー図鑑となった1冊。取り上げる雑誌のステレオタイプな読者像を設定し、その人物を掘り下げることで雑誌の狙いや哲学を紐解いていくという企画。

出色は女性ファッション誌に対する考察でしょう。年齢やオシャレの傾向、経済力や未婚か既婚かなどで明確にターゲットの棲み分けがなされている日本の女性ファッション誌は、その読者像を想定するだけで現代日本を生きるリアルな一人の女性を描き出すことが可能です。

「自信のなさすら奥ゆかしさとして長所に転じさせる力を持ったモテる女子」ノンノさんなどに混じってもちろんフラウさんもいますよ! 「手の届くところにある贅沢を享受するのがうまい女子たち」とのことですが、いかがでしょう……?

 

●情報は、FRaU2016年8月号発売時点のものです。

 

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