美しさが、凄みを増している。若い頃も綺麗だったけれど、今年42歳になる彼女の風貌には、大人の華やかさと、知性と、品格が加味され、何より生命力に溢れている。それは、日々を重ねることを心から楽しんでいるからこその成熟。彼女の話を聞いていると、知性と経験こそが、女にとっての最高の美容液だとわかる。

 
▼前ページはコチラ!

 

20代の時、大人の女性に言われた
身体も心も元気でね、って

画像: 20代の時、大人の女性に言われた 身体も心も元気でね、って

そんな流れで由夏さんは、自らの20代の時のことを振り返る。

「一言で言って、20代はキツかった(苦笑)。頑張んなきゃって肩肘張って、虚勢も張って、理想ばっかり高いんだけど、その理想に気持ちも身体も追いつかなくて、ムキになっていろんなことをやればやるほど雁字搦め(がんじがらめ)になったりして。

当時、大人の女性によく忠告されたんです。『身体も元気で心も元気、じゃないとダメだよ』って。でも、20代の時は、そう言われても、多少の無理はきくし、『え、だって元気だもん!』って思って、身体と心が繫がってることに、無自覚でした。でも、そうしたら20代の後半に、ついに身体が悲鳴をあげたんです。急に身体を壊しちゃって……。

そこからは、肉体的には健康体をめざしながら、内面の部分で、背伸びしたり、見栄を張ったり、肩肘張って無理してた自分を、心の襞からベリベリって剥がして、みんな丸めてポイッて捨てて(笑)。以来、私は、身体の声をよく聞くようになりました」

 
自然体なんていう言葉がバカバカしく感じられるほど、写真に撮られるときも、インタビューでも、ありのままの自分をさらけ出してくれる由夏さん。腰は高いし彫りは深いしで、ビジュアル的にはもちろん、美のミューズな素材感満載なのだけれど、美容に関する執着度は、いたって普通。ごくごくノーマル。いやむしろちょい雑め、かもしれない。

普段の美容法を聞くと、「えー、……普通ですよ」と若干口ごもりつつ、「洗顔して、化粧水と乳液を塗って、たまに美容液も。それでおしまい。ダメ?」と宿題の答え合わせをする子供のように、もじもじ恥ずかしがりながら答えたのだった。

ちょい雑めかも、と前置きしたのは、「メイク落とさずに寝るなんてことは?」と聞いた時、「そういうことも、たまにはあります」と呟いたからだ。でも、「さすがにもうちょっと何かあるのでは?」と食い下がると、「そういえば、肌と会話してます!」と、澄んだ声で答えてくれた。

「例えば洗顔して、何もつけずに30分放置してから、指で直接肌に触れて、『お、今日は調子がいいぞ』とか、そういうことを確認したりします。『調子が悪いな』って思ったら、理由を探る。最近ロケ弁続きで、野菜が足りてないせいだな、とかね。

とにかく、自分のコンディションは、自分で把握していないと気が済まない質。でもそれは職業病だと思います。体重も、体型も、その日の自分のことはちゃんとわかっておきたいし、把握してなきゃって思っています」

 

自分と会話できる人のことを
カッコいいと思う

画像: 自分と会話できる人のことを カッコいいと思う

さて、冒頭で、荒木さんの言葉を借りて、イイ女とは笑顔の種類が多い女であるという説を説いたが、板谷由夏という人は、とにかくよく笑う。樹木さんに比べたらずっと若いので、笑顔の種類が多いかどうかはともかく、笑いの音の数は、ビックリするほど多彩だ。

豪快なアハハにヒャハハ、ちょっと奥ゆかしい感じのふふふ、うふ。照れ隠しのようなキャハ、えへ。よく澄んだ、透明感のある声で響かせる笑い声は、まるで音楽のよう。叩けば笑い声の鳴る打楽器? それとも押されたツボに応じて高音も低音も自在な弦楽器? 呼吸音と混ざる軽快な笛? どの例えが一番ふさわしいかはわからないが、とにかく何やらイイ音の鳴る楽器のような人なのである。打てば響く、なんて慣用句もあるが、まさにそれは由夏さんのためにある言葉だ。

「もともと、インタビューされるのが好きなんです。実は、26歳ぐらいの時かな。雑誌の取材で、“将来なりたい女性像” を聞かれて、私は、『自分と会話できる人がカッコいいと思います』って答えました。

私は、すっごいカッコいい女の人が、部屋の隅で、黙って何か考え事をしている、その感じを見るのが、以前からすごく好きだった。さっきの身体との対話の話じゃないですけど、自分を大事にできる人、孤独に耐えうる人、寂しさを知っている人じゃないと、自分と対話はできないと思うんです。ちゃんと、自分の心の声を聞ける、大人の女性じゃないと。

でも、実はその時のインタビューで聞かれるまで、自分がどんな女性に憧れているかなんて、自覚したことはなかった。だから、自分で口にして、ハッとしたんです。『そうだよね、私が好きな女の人って、そういう人だよね』って。

書くこととはまた違って、何か聞かれて、自分の気持ちを言葉という音にすることで、自分の潜在意識みたいなものが、確認できる。だからインタビューはすごく好きです」

 
自分の好きな女性像に気づいて以来、何か決めなければならないこと、考えなければならないことがあると、由夏さんは意識して、自分に問いかけるようにしている。「これ、どう思う?」「どうかな?」と、自問自答しながら、身体や心の音を聞く。自分でも、思いもかけない音が鳴る時もある。そして彼女が何より素敵なのは、年齢を重ねるとともに、鳴り響く音色を増やしていっていることだ。

現在、9歳と5歳の男の子を育てている由夏さんだが、20代の時には、これといって結婚願望はなかったのだという。「将来結婚して子供を持とうとか、そういうことは何も考えてなかった……!」と、過去の自分を振り返る彼女は、どこか申し訳なさそう。

世間一般の女性たちが思い描く幸福な40代のライフスタイルを、存分に満喫しているように見える割に、本人は、「流れに任せていたらこうなったまで」というような主体性のなさがまたユニークだ。では、由夏さんはなぜ結婚をし、子供を産む決意をしたのだろう。女優といえば人気商売、その後の仕事に何か影響があると考えたりしなかったのだろうか。

「ちょうどその話を昨日、主人としたばかりなんです」

相変わらず軽快な口調で、彼女は続けた。

「東京から結構離れた場所に自宅があって、仕事の時は、夫婦揃って車に乗って東京まで出勤することも多いんです。昨日は、主人が体調が悪かったので、私が車を運転していたのですが、突然、彼が私に言ったんです。『10年前、由夏は仕事もあったのに、よく子供を産もうと思ったよな』って。朝からすごい話をするなと思いました(笑)。

私たちは、ちゃんと大恋愛をしていたけれど、長男を授かるまで、結婚という話は出ていなかった。私の妊娠がわかった時初めて結婚しようという話になったんです。私は、だから長男に呼ばれたとしか思えない。その時も言いました。『私たちは呼ばれたんだよ』って。

私は、基本、何事も受け身体質なので、流れに身を任せることしかできない。でも、時が来たら、勘を働かせ、自問自答して、ちゃんと後悔しない決断をしてきました」

 

PROFILE

板谷由夏 Yuka Itaya
1975年生まれ。’94年からモデルとしての活動を開始し、’99年に『avec mon mari』で映画デビュー。その後多くの映画・ドラマで女優としての経験を積む傍ら、『NEWS ZERO』(日本テレビ系)ではキャスターを、『映画工房』(WOWOW)ではMCを担当。最近では『セシルのもくろみ』(フジテレビ系)での演技が話題に。また、’15年には自身のファッションブランド『SINME』をスタート。私生活では2児の母でもある。

 
※FRaU2017年11月号より一部抜粋

●情報は、FRaU2017年11月号発売時点のものです。
Photo:Saki Omi Hair&Make-up:Haruka Yuki Stylist:Hirohiko Furuta Text:Yoko Kikuchi Composition:Sachico Maeno

 
▼こちらの記事もチェック!

コメントを読む・書く

This article is a sponsored article by
''.