いい女になりたい。でも、なにをもっていい女とするかはけっこう難しい。見た目も大事なのだろうが、歳を取るにつれて「中身も大事だろ」と思うようになってきた。しかしわたしの中身ときたら、長年ほったらかしにされ、曇ったり、ヒビが入ったり……早急にメンテナンスが必要な状況である。

というわけで、この連載では、マンガ・映画・小説などに登場するいい女について考察していく、憧れすぎて自分の中に「飼いたい」と思ってしまうようないい女たちから、大いに学ぼうじゃないか。

 

今月のいい女:
スタイリッシュなおばあちゃん

数年前、『Advanced Style —— ニューヨークで見つけた上級者のおしゃれスナップ』という写真集が話題になったのを、あなたは覚えているだろうか。

ページをめくると、60歳から100歳代までのおしゃれなおばあちゃんが次々と出てくる。彼女たちのおしゃれは、基本的に自己主張が激しい。ぶりんぶりんのアクセサリーとか、ド派手柄のシャツとか、ものすごいデザインの帽子とか。みんな、「年相応ってなんですか?」みたいな感じで、着たいものを着たいように着ているのが最高だ。

わたしは単純だから、まんまと「ああいうおばあちゃんになりたい!」と思ったわけだが、考えてみれば、自分がどんなおばあちゃんになりたいか、具体的に想像したのは、これが初めてだった。

自分の年齢±10歳のゾーンには、お手本にしたい素敵な人たちがゴロゴロいるのに、年齢が上がれば上がるほど、ロールモデルがいなくなって、「まあ、わたしもお母さんとか、お祖母ちゃんに似るんでしょ」程度の、すごく雑なイメージしか持てない。

しかし、この程度の認識でいいおばあちゃんになれるほど、世の中甘くないのである。若いころから手をかけて育てた盆栽が、老後ようやくいい感じになるように、イケてるおばあちゃんになるためには、もう準備を始めないといけない。人生というのは本当に忙しい。

それで、いろいろなおばあちゃんのインスタアカウントを見たり(今どきのおばあちゃんは、インスタも余裕でやる)、小説やマンガに出てくるナイスな老女をチェックしたりしていたのだが、つい最近、すごく素敵な歳の重ね方をしているおばあちゃんを発見した。

それは、カラテカの矢部太郎さんが描いたマンガ『大家さんと僕』に登場する矢部さんの大家さんである。ちなみに御年87歳。

彼女には、長い人生をかけて築いてきたスタイルがある。明太子ひとつ買うにもタクシーで伊勢丹に乗り付ける。「ごきげんよう」と挨拶をする。畳の部屋に洋風の家具をセットして優雅に紅茶を飲む。借家人である矢部さんにかける言葉も、丁寧だけれど、なんだか独特。彼のことを「お2階の俳優さん」と呼んだり、舞台でスベった矢部さんに「シリアスな演技」と言ったり。こんな風に、言葉遣いひとつにも大家さんのスタイルは表れている。

歳を取るといろいろなことが面倒臭くなったり、だらしなくなったりしがちだけれど、大家さんは、自分のスタイルを大切にすることで、老いに抵抗して見せる。これは言うなれば、人生を美しくする上質な見栄っ張りだ。実にカッコいい。というわけで、外見は『Advanced Style』に学び、内面は大家さんに学ぶことにしたわたくしです。それではみなさま、ごきげんよう。

 

PROFILE

トミヤマユキコ Yukiko Tomiyama
1979年生まれ。早稲田大学文化構想学部助教。少女漫画を中心としたカルチャー関連の講義、研究を行う。また、様々な媒体でコラムや評論も執筆中。「年明けに友人の結婚パーティーがあるのですが、冬のパーティー服って難しいですね。厚着しちゃうと垢抜けないし、露出すると寒いし。いやー、弱りました」

 
 
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●情報は、FRaU2018年1月号発売時点のものです。

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