旅をする——。その目的は、一体何だろう。美味しいものに舌鼓を打ち、その場所でしか見ることの出来ない景色に感嘆し、漂う空気や香りまでもそっと記憶のうちに閉じ込める。そんな非日常の瞬間をもっと深く味わいたいのならば、更なる贅沢な時間を手に入れるためにほんの少し遠くへ足を延ばしてみるのはどうだろう。最終日、観光地を巡るだけでは得ることの出来ない忘れ難い思い出で、心のメモリーはきっといっぱいだ。

台湾らしい風情を感じたいなら、一度は行きたい茶藝館。そこで台湾茶藝文化発祥の地と言われている台中へワンデイトリップ。伝統的な建物やゆったりとした雰囲気のなかでお茶をいただくのは都会では味わえない、最高に優雅なひととき。

 

建築美もともに味わう

耕讀園書香茶坊(台中市政店)

画像1: 耕讀園書香茶坊(台中市政店)

鯉がゆったりと泳ぐ大きな池を眺めながら、香り高い中国茶をいただく——。映画で観たような景色を体験できるのがここ。台湾ではかなり有名な茶藝館ながら、これまで取材をほとんど断ってきたため、日本のメディアには初登場。

池を取り囲むように建てられた趣のある建物は、中国の江南地方から取り寄せた古材や建具を使って再現したこだわりの建築。水路が多く、東洋のベニスと称される蘇州の古典庭園スタイルなのだとか。兎にも角にもこの景色に価値があるから、水代とお茶代に分かれる、茶藝館特有のシステムを利用してお気に入りの茶葉を持ち込んで過ごす人も多いよう。

せっかくだから、「工夫茶」という中国茶の作法を覚えてみたいという人は、スタッフに手本を見せてもらうといい。難しい作法を気にせずにお茶を飲みたいという人は、スタッフがていねいに淹れたお茶をポットでサービスしてくれる單人回沖組をオーダーすればよし。友達とおしゃべりをしながらもいいし、一人でひたすらぼんやりともの想いにふけるのもいい。ここに来たならば、旅先といえども時間を忘れて、のんびりとお茶の時間を堪能するべし。
 

画像2: 耕讀園書香茶坊(台中市政店)

「日本人には有名な阿里山のお茶が人気ですが、ぜひ梨山の茶葉も味わってみてください。茶葉が育つ最適な環境の高山で、とても丹念に世話をしながら育てている高品質の茶葉なんですよ。柑橘のような香りがする上品な味わいが特徴です」

梨山烏龍茶は、2両装(75g)で1080元。2人で6~8杯いただけるくらいの量。お茶請けには、オリジナルの金萱狀元糕がおすすめ。ミルクのようなコクのある金萱茶を使った、落雁のような台湾菓子だ。杏仁風味や緑豆風味もあり、日持ちがするので、お土産用に華やかなパッケージで販売もしている。また、キンモクセイの香りのシロップがかけられた桂花涼糕や、きなこの香りがする驢打滾など中国の宮廷菓子である餅菓子も人気。
 

画像3: 耕讀園書香茶坊(台中市政店)

耕讀園書香茶坊(台中市政店)
台中市西屯區市政路109號
☎04-2251-8388
営業時間:9:00~24:00
定休日:なし

 

研ぎ澄まされた洗練の美学

秋山堂

画像1: 秋山堂

国立台湾美術館内にあるこちらは、タピオカミルクティーで一世を風靡した春水堂のオーナーが、中国茶の原点に立ち返るために作った茶藝館。台湾の茶藝館のほとんどは、レストランとしても機能しているが、ここはお茶に特化しているところにもこだわりが見える。

扱う茶葉は最高級品ばかり。花や蜂蜜のような香りが漂う上質な茶は、品茶(ピンツァー)といって三口でいただくのが基本だという。ひと口目で浮面香を感じ、ふた口目で杯底香を味わい、そして最後に飲み干したあとの茶碗の冷香を堪能する。「品という字は三つの口でしょう」というウンチクを聞くのもまた楽しい。アートを見た余韻を感じながらお茶を楽しむのに、もってこいの空間だ。
 

画像2: 秋山堂

冬と春に台湾各地へ足を運び、希少な高山茶を厳選して仕入れているそう。阿里山烏龍や阿里山金萱、文山包種、蜜香美人など希少な茶葉を厳選。特に30年以上積み重ねてきた焙煎の技術で、最高のお茶に仕立てあげた阿里山焙火は珠玉の味わい。

お茶請けは、キンモクセイが香る秋桂茶梅や、わらび餅のような黒糖丸子、チーズパイなど。日本語のメニューもあるので、じっくりと選ぶことができる。洗練されたデザインの茶器も取り扱っており、世界中から作家を招いて茶器の展示会を催すことも多い。
 

画像3: 秋山堂

秋山堂
台中市西區五權西路一段2號 國立台灣美術館B1下凹庭園
☎04-2376-3137
営業時間:11:00~22:00
定休日:不定

 

どこか懐かしくほっとする空間

悲歡歳月人文茶館

画像1: 悲歡歳月人文茶館

店舗となっているのは、日本統治時代である1924年に日本人のために建てられたこの一軒家。何代もの住み手を経てきたが、障子や欄間があり、玄関で靴を脱いで畳に上がるという日本式の内装はそのまま引き継がれてきた。

オーナーの呉さんは、子どもの頃に家族と仲良く住んでいた思い入れのあるこの家をなんとか残したくて、茶藝館にすることを思いついたという。オープン当時の流行歌からつけたという店名には、「悲しいこともうれしいことも含むたくさんの思い出を大切にしたい」という気持ちが込められている。「ここは子どもの頃の私の部屋だった」と教えてくれたり、おばあさまの嫁入り道具の箪笥が置かれていたりと、アットホームな雰囲気に誰もがくつろいでしまうはず。
 

画像2: 悲歡歳月人文茶館

台湾では、なかなか手に入らないという碧螺春という珍しい茶葉がおすすめ。こちらでは昔から仕入れている縁があり、定番として販売もしているそう。芽を摘んで作る緑茶の一種で、茶葉が巻貝(田螺)のように縮れているのが特徴。茶碗に入れてお湯をさすと、ふわっと広がる様子がきれい。急須を使わないので、難しい作法を知らなくてもカジュアルに楽しめる。

お茶請けには、台湾らしい味付けで和えたガーリックそうめんや、お茶の粉をかけたたまごケーキなど、気取らないメニューが揃う。平日の昼にはランチがてらお茶を飲みにくるビジネスマンで混雑するそう。あたたかな居心地のよさを感じに、ぜひ訪れてみて。
 

画像3: 悲歡歳月人文茶館

悲歡歳月人文茶館
台中市西區大全街29號
☎04-2371-1984
営業時間:11:00~21:00
定休日:2/13~15

 

文化と品格を感じる名店

無為草堂

画像1: 無為草堂

台中でもっとも人気がある茶藝館といえば、ここかもしれない。台湾五大名家である霧峰林家にゆかりのある一家が営んでいるこちらは、代々伝わってきた古く美しい家具を展示する部屋があるような品格のある茶藝館だ。

400坪の広さがある敷地には、台湾や中国、日本の文化が入り混じった建物が池を囲むように建てられており、生い茂る植物の緑が目に眩しい。一歩足を踏み入れると街の喧騒が嘘のような静けさで、どの席でもみんな思い思いにくつろいで過ごしている様子。また、オーナーが画家や詩人、作家などを支援しているため、店内にはアート作品があちらこちらに飾られていたり、水・土曜の夜には中国琴が演奏されたりと、文化が色濃く薫る風雅な様も魅力的。
 

画像2: 無為草堂

「作法にこだわらず、気軽に自由にお茶を楽しんでほしい」と、オーナーの娘である凃小蝶さん。茶器には「水のようにやわらかく、自然に逆らわずに」という意味の「無為若水」という老子の言葉が書かれている。茶葉は契約農家から仕入れており、おすすめは淡い緑の薫りが感じられる杉林溪烏龍茶。購入して飲むこともできるし、茶葉を選ばずに10gの茶葉付きの「工夫茶」をオーダーすることもできる。

お茶請けには、ふわふわの食感がたまらない蒸しパン・黒糖糕や、サクサクほろほろのパイ生地にゴマ餡を包んだ芝麻酥が人気。鹿港の料理家がレシピを考案したという芋籤糕というひき肉を包んだタロイモの餅もぜひ。
 

画像3: 無為草堂

無為草堂
台中市南屯區市公益路二段106號
☎04-2329-6707
営業時間:10:30~21:30
定休日:なし

 

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●情報は、FRaU2018年3月号発売時点のものです。
Photo:Yumiko Miyahama Text:Kazuko Moriyama Composition:Shiori Fujii Coordinate:Sachiko Tanaka

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