旅をする——。その目的は、一体何だろう。美味しいものに舌鼓を打ち、その場所でしか見ることの出来ない景色に感嘆し、漂う空気や香りまでもそっと記憶のうちに閉じ込める。そんな非日常の瞬間をもっと深く味わいたいのならば、更なる贅沢な時間を手に入れるためにほんの少し遠くへ足を延ばしてみるのはどうだろう。最終日、観光地を巡るだけでは得ることの出来ない忘れ難い思い出で、心のメモリーはきっといっぱいだ。

 

山の深い緑を眺めながら
心地いい静寂のなかで美味を味わう

画像1: 山の深い緑を眺めながら 心地いい静寂のなかで美味を味わう

くねくねとした山道をタクシーで登っていく。深呼吸がしたくなるような深い緑に囲まれた場所に、目当ての食養山房は静かに佇んでいる。食養山房はここ数年、台湾通の人たちの間で話題になっているレストランだ。宣伝もしていないのに大人気で、予約は必須らしい。台北の街中から車で40分ほどで行けるとはいえ、周囲にあるのは豊かな自然だけ。いったいどんな店なのだろうと想像しながら向かった。
 

到着早々、入り口から息をのむ美しさに圧倒される。玄関の風情のある錆びた鉄の壁に、紫色の花が咲き誇っている。床には、大きな壺にたっぷりと活けられた花。一歩中に入れば、大きな白い提灯が連なる廊下に小さなキャンドルが点々と灯されていて、奥へ奥へと私たちを誘う。
 

画像2: 山の深い緑を眺めながら 心地いい静寂のなかで美味を味わう

新店で20年前に開業し、陽明山への移転を経て現在の場所へ。古い堅牢な石造りの家を生かしつつ増築した6號と、さらに山を登ったところにあるモダンなデザインの5・7號という2つの建物から成り立っており、設計から内装デザイン、庭の植栽に至るまで、オーナーの林氏が手がけている。林氏は中国の伝統文化や仏教、料理に造詣が深く、侘び寂びを感じさせる美意識は日本の文化の影響もあるそうだ。窓の外に広がる絶景を眺めながら、ゆったりと食事をいただくことができる。

こちらで提供されるのは2種類のコースのみ(ベジタリアン用も選べる)。地元で採れた素材を生かした季節ごとの創作台湾懐石料理である。どの料理も見た目に美しく、シンプルだけれど複雑な旨みが感じられる。しみじみと味わううちに、心が静かに落ちついていく。体が喜んでいることがわかる。満腹にはなるけれど、最後のデザートまでしっかりといただいても、体が重くなることはない。

さらに余韻をじっくり堪能したいなら、茶室でのティーセレモニーの予約もしておくべし。まるで白昼夢のような体験ができるレストランは、世界中から訪れる人で常に予約がいっぱいというのも納得だ。

【汐止(シーヂー)
新北市汐止區は、台北市の東側に接する隣町。古い街並みや古い建物、ローカルな雰囲気の商店街などが多く残っている。鉄道が通っているので、台北のベッドタウンという一面も。新山、五指山、大尖山などの山々と川に抱かれた土地で、満潮時に川を遡る汐がここで引き返すことから、清時代には「水返腳」(ツイトゥンカー)と呼ばれていたそう。食養山房の周囲は、五指山古道というハイキングコースとなっている。


あちらこちらで目にする
花の室礼(しつらい)
おもてなしの心を感じて

画像1: あちらこちらで目にする 花の室礼 (しつらい) に おもてなしの心を感じて

広い館内を散策していると、空間に余白があるのに無駄なスペースはなく、至るところにさりげなく活けられた花が目を和ませてくれることに気づく。
 

画像2: あちらこちらで目にする 花の室礼 (しつらい) に おもてなしの心を感じて

照明を落とした仄暗い空間に、原色の花がひっそりと佇んでいる様子はとても美しい。それはひとえにゲストに喜んでもらいたいという、こまやかな気配りの表れだ。
 

画像3: あちらこちらで目にする 花の室礼 (しつらい) に おもてなしの心を感じて

毎週、花市で仕入れる南国らしい鮮やかな色や形の花を、林氏の手ほどきによって、スタッフが思い思いに活けているとか。


地元の食材を存分に使った
体にも心にもやさしい懐石料理を

画像1: 地元の食材を存分に使った 体にも心にもやさしい懐石料理を

四季ごと(不定期)にメニューは変わる。冬のある日は、厳選された2種の中国茶から始まり、まずはなめらかな口当たりと、ぷるんとした食感の自家製ピーナッツ豆腐に甘いとうもろこしスープを添えた一皿を。
 

次にゴールデントマトの果汁のゼリーと松の実のソースがかかった貝柱が登場。自家製ビネガーで和えた海鮮や、ポルチーニやマッシュルームを詰めたライスケーキ、枝豆&きのこの炒飯と続き、締めくくりは緑豆餡を詰めたタロイモペーストや果物と菊花茶。
 

画像2: 地元の食材を存分に使った 体にも心にもやさしい懐石料理を

どれも個性が際立つ料理だが、特に人気なのが蓮花敦湯というスープだ。食べる直前にドライの大きな蓮の花を浮かべると、一瞬で花びらがふわあっと開いていくというプレゼンテーションも盛り上がる。薬膳料理のようにいろいろな素材やスパイスが使われているため、複雑な奥行きのある味わいで、体がぽかぽかと温まる。

食養山房
新北市汐止區汐萬路三段366巷6號
☎02-2646-2266、0931-381-528
営業時間:12:00~15:00、18:00~21:00(木は昼営業のみ)
定休日:月(祝日の場合は営業)、旧正月
※完全予約制

 

▼前回の記事はコチラ!

 
●情報は、FRaU2018年3月号発売時点のものです。
Photo:Yumiko Miyahama Text:Kazuko Moriyama Composition:Shiori Fujii Coordinate:Sachiko Tanaka(TOP TAIWAN)

This article is a sponsored article by
''.