「我が子はスペシャルですが、過剰にスペシャルな接し方はしないでおこうとこころがけています」。2012年に結婚、そして2017年 7月に待望の第一子を出産した直木賞作家・西加奈子さんの子育てには、彼女独特の家族観、人生観が投影されていました。

 
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我が子に、スペシャルな気持ちを
過剰に抱きたくない

画像: 我が子に、スペシャルな気持ちを 過剰に抱きたくない

育児と仕事の両立も、母業も始まったばかりで、手探りだ。試行錯誤の道程で、昨日わからなかった謎が、今日解けることもある。

たとえば、出産したとき、空恐ろしい感覚があった。

「子どもにとって、私と夫は家族の最小単位になる。それがとんでもなく怖いなと思ってしまって。私の感覚が、子どものすべての基準になると思うと、さらに怖い。いてもたってもいられず、友達に相談したら “あんたの感覚って、親に似てる?” って聞かれたんです。“あー、似てないわー” それでね、楽になれたんです。親子だからって、すべて一緒じゃないんだなって」

子どもは、今はまだ、母としては認識しているかわからないが、少なくとも “大切な人” という認識はあるようだ。大切な絆をもつ親子ではあるが、西さんは独特の距離感を抱く。

「私はおっぱいがあるだけ。子どもにとって、そのくらいの存在でいい。私もまた必要以上に愛さなくていいと思っています。自分の子どもだけ、自分の家族だけ幸せならいいという考えはいやなんです。我が子はスペシャルですが、過剰にスペシャルな接し方はしないでおこうとこころがけています。

もちろん愛しているけれど、だからといって愛を返してくれなくていい。母が悲しむからこういう選択をしないでおこうと思う人になってしまうかもしれない。それは違うし、そう思ってほしくないんです。我慢しないでほしい。ひとりの人間として尊重したいし、自由に生きてほしいです」

自身、両親からそのような距離感で育った。いつでも絶対的な味方だが、自分の考えを押し付けることは一切なかった。だから、どんな人とつきあおうがなにも言わず、交友関係に口出しをされなかったし、勉強をしていい大学に行けとも、いい会社に入れとも言われたことがないのだ。そこには、ひとりの自立した人間として、尊重する視点が通底している。

 
だが、西さん自身は、「本来、利己的で独占欲が強い」と自己分析する。

「仲のいい友達とスクラムを組んで、その子達とだけ遊んで、その子達にしかわからない会話をしがち。自分が子どもを産んだら “私のもの” って思いかねない。だからこそ、ひとりの人間として尊重しよう。ちゃんとした距離感を持とうと思ったのです」

お母さんはこう思うけど、あなたはどう思う?と聞く。「ふつうはこうするものだよ」「みんなはこれができるよ」は絶対に言うまいと誓っている。

「主語をweにしない。weやみんなを主語にすると、“自分も皆と同じでないといけない” という思考になります。みんなに笑われることが怖くなってしまう。だから、weはやめておこうと」

小説との向き合い方で、正直に生きて笑われるのなら、喜んで笑われることを引き受けると語った西さんらしい。裏返せば、みんなに笑われることを恐れて、自分に嘘をつくような人間になってほしくないということでもある。

トークショーでも、つとめて「私はこう考えている」と伝えるよう気をつけている。それが世界のすべて、と思ってほしくないからだ。

「私の言葉で救われたと言われたら、それは嬉しいけれど、世の中にはなんぼでも意見がある。世の中に書籍がこれだけあるというのも、それだけ多様な意見があるという証。それに言葉は、ときに呪いになることもありますから」

子育ても同じだ。「私はこう思うけれどお父さんはこう思わないかもしれない。世の中にはいろんな考え方があるのだと知り、それらを参考に自分の頭で考えられる人間になってほしい」と、西さんはまっすぐの瞳で語る。

 

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