旅をする——。その目的は、一体何だろう。美味しいものに舌鼓を打ち、その場所でしか見ることの出来ない景色に感嘆し、漂う空気や香りまでもそっと記憶のうちに閉じ込める。そんな非日常の瞬間をもっと深く味わいたいのならば、更なる贅沢な時間を手に入れるためにほんの少し遠くへ足を延ばしてみるのはどうだろう。最終日、観光地を巡るだけでは得ることの出来ない忘れ難い思い出で、心のメモリーはきっといっぱいだ。

 

すべてを浄化してくれそうな
美しい雲海を見に行こう
南台湾・阿里山

独特の地形と悠久の自然が
織りなす幽玄の世界へ

画像: 日の入りがベスト!

日の入りがベスト!

日の出・雲海・森林・夕霞・鉄道の「五大奇観」で有名な台湾有数の観光地、阿里山。台北からのアクセスは決していいとは言えないながらも、一年を通じて多くの観光客が訪れる理由は、台湾の自然や文化をまとめて体験できる多彩な魅力にある。一番の目玉は、標高2000m超の頂から望む絶景だ。

そもそも阿里山とは一つの山ではなく、18の山々からなる高山一帯のこと。四方を高い山に囲まれた起伏の激しい地形によって一年中霧が発生しやすく、そのため雲海に遭遇できる確率もかなり高いのだ。台湾の人にはとにかく日の出が人気のようだが、夕日もまた格別。一面オレンジ色に染まった山や空が少しずつ闇に包まれていくさまは、まさに息をのむ美しさだ。

見晴らし台のある山頂付近は樹齢1000年以上を数えるヒノキの原生林が広がり、「阿里山森林遊楽区」として国定公園に指定されている。鬱蒼と茂る森の中を気軽に散策できるよう遊歩道も整備されているので、日の出の後や夕日を待つまでの間は森林浴を楽しもう。樹齢2000年を超える樹々は神木として保護されており、絶景とともに自然の神秘を感じさせてくれる。

また、雄大な自然に次ぐ阿里山観光の目玉になっているのが、インドのダージリン鉄道、チリ~アルゼンチンを結ぶアンデス山鉄道と並んで世界三大登山鉄道に数えられている阿里山森林鉄道。もとは日本統治時代にヒノキ材を運ぶために造られたもので、往時の面影を残すレトロな雰囲気と車窓からの眺めの良さから、この列車に乗るために阿里山を訪れる観光客も多い。現在は台風による被害で一部区間が運休してしまっているが、阿里山への入り口である嘉義駅〜奮起湖駅間と山頂側は本数が少ないながらも運行しているので乗ってみたいところ。また奮起湖駅では名物の駅弁を味わうのも忘れずに。

春は桜、秋には紅葉と四季折々の魅力がある阿里山だが、雲海目当てなら1~2月がベスト。日の出や夕日を狙うには山頂付近で1泊することになるけれど、まるで神話の世界に入り込んだかのような荘厳な景色にはそうまでして行く価値が十分にあるはず。刻々と変わる光の色と澄んだ空気のなかで、心洗われるような時間を体験して。

阿里山(アリシャン)
阿里山国家森林遊楽区
☎886-5-259-3900(阿里山国家風景区管理処)
定休日:なし
入場料:大人300元
駐車場あり
 
台北からは新幹線とバスを乗り継ぐルートが便利。台湾高速鉄道に乗り高鉄嘉義駅で下車(約90分、1080元)、阿里山行きのバスに乗り換える(約2時間、271元)。ただし本数が少ないので注意。本数は台鉄嘉義駅発の方が多く、2駅間は無料シャトルバスがあるのでこちらを利用しても。阿里山駅、山頂付近にも宿泊施設があるので安心。山頂までは約1時間程度。また山頂付近の平均温度は夏14度、冬5度なので防寒はぬかりなく。

 

まるでアジアのウユニ塩湖!?
台中・高美湿地

落陽を映す「天空の鏡」は
希少な動植物たちの楽園

画像: 落陽を映す「天空の鏡」は 希少な動植物たちの楽園

台中市清水區にある高美湿地は、台湾でもまだ知らない人が多い、新たな名所として注目の場所だ。もともとは海水浴場として賑わっていたが、’70年代中頃に近くに台中港ができると、ここに泥が堆積するようになり、ほどなく閉鎖。その後何十年ものあいだ人の手が入らず、さらにいくつもの条件が揃っていたことから、豊かな生態系が形成されていく。

満潮時に海水が流れ込むことで湿地に魚やカニなど多くの生き物が棲みつくと、それらを目当てに多くの渡り鳥たちが飛来し、ここで越冬するようになっていったのだ。現在、この湿地を棲み家とする鳥類は120種以上。点在する乾地には絶滅危惧種の「雲林莞草」が群生し、ここにしか棲息しない固有種もいることから一帯が野生生物保護区に指定されている。

渡り鳥の越冬地ということで近年はバードウォッチングのスポットとしては知られていたものの、誰もが気軽に訪れる場所ではなかった。それが、南米・ボリビアのウユニ塩湖と同じ「天空の鏡」が出現することが話題になり、一躍人気スポットに。週末こそ多くの人で賑わうが、まだまだ人気に火が点いたばかりなのと、とにかく広大な場所のため、他の観光地よりはずっとのんびり過ごせるのも魅力だ。湿地には長い桟橋が架けられているが、水位の上がる満潮時と大潮の前後、日没後以外は下に降りて湿地を歩くこともできる。水平線までを見渡せる湿地を歩いていると、今、自分がどこにいるのか分からなくなるような不思議な感覚を味わえるだろう。
 

画像: 日没がベスト!

日没がベスト!

水面に空が映りこむ「天空の鏡」が出現するのは、湿地に水が張り、夕方にかけて風が弱まるタイミング。ベストシーズンは3~10月。冬は水位が上がって湿地に降りられない日もあるのでご注意を。もし風が強く、水面が揺らいで「天空の鏡」が見られなくてもそこで諦めないで。やがて潮が引き、周囲が夕焼けの暖かい光に包まれると、ここからがこの湿地の最も美しい時間。水面に反射した夕日がきらきら輝き、空は水色からピンク、紺碧へとひと呼吸ごとに色を変えていく。やがて月が出て水平線が暗闇に溶けて見えなくなるまで、すべてが必見の瞬間だ。

一度として同じ姿のない夢のようなこの景色を、訪れた誰もが気が済むまで独り占めという贅沢は、近い将来できなくなるかもしれない。気になる人は、観光地としてまだ定着していない今のうちにぜひ!

高美湿地(ガオメイシーディ)
台中市清水區大甲溪河口
☎04-2652-3162(高美濕地文化創意股份有限公司)
定休日:なし ※桟橋の開放時間はその日によって異なる。公式HPで確認を。
駐車場あり
 
台北からは台湾高速鉄道に乗り、高鉄台中駅で下車(約60分、700元)。隣接する新烏日駅から台湾鉄路で清水駅へ(約35分、33元)。新烏日駅~清水駅間の電車は2時間に1本なので要注意。清水駅から309番バスに乗り高美湿地で下車(約75分、悠遊カード利用で46元)。ただし夕日を見ると帰路のバスがなくなるためその際はタクシーを。15~20分乗車で料金は約300元。

 

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●情報は、FRaU2018年3月号発売時点のものです。
Photo:ImagewerksRF/amanaimages (阿里山), Getty Images(高美湿地) Text:Kazuko Moriyama , Megumi Yamazaki Composition:Shiho Kodama

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