そろそろ動き出したい季節到来。今年トライしたら楽しいこと、流行りの波が来ていることを旅、食、美容、インテリアetc. さまざまな角度から徹底リサーチ! 遠い、会員だけ、予約制、一点モノなどなど、今年はより限られたシチュエーションで、限られた人たちだけが楽しむモノ、コトがブームになっていきそう。この中からあなただけの楽しみが見つかりますように!

 

カルチャーの新時代は
コンプレックスだって愛する

モテない、かわいくない、社会にうまく馴染めない……。欠点を抱えて鬱々としたり、自我をもてあまして空回りするストーリーに共感する時代に終わりを告げ、これからはありのままの私で胸を張って生きる時代へ。

カルチャーの世界でも、ルサンチマンを抱えてその反骨精神でがむしゃらに何かを生み出すわけではない、コンプレックスを武器にするのではなく、「コンプレックスも楽しめばいいじゃん!」と新たな視点を投げかけてくれる存在が注目され始めています。実態のない何かや、私以外の誰かのために忖度するのはもう終わり。いまの私そのものに価値があると気づかせてくれる作品にぜひ、触れてみて。

 

コンプレックスをアートに昇華する
“NEOかわいい” オンナバンド

CHAI

画像1: CHAI

ミラクルな双子のマナ(Vo.&Key.)とカナ (Vo.&Cho.)に、最強にして技巧派のリズム隊であるユウキ(Ba.&Cho.)とユナ(Dr.&Cho.)の4人で編成された「NEO-ニュー・エキサイト・オンナバンド」。2017年には初の全米8都市ツアーを敢行し、本気でグラミー狙ってる。大物感しかない。
 

画像2: CHAI

〈YOU ARE SO CUTE NICE FACE カモーン YEAH! WE ARE SO CUTE NICE FACE カモーン YEAH!〉

〈目ちっちゃい 鼻低い くびれてない 足太い ナイスバディ! オーライ! NEOかわいい! change the world! ナイスコンプレックス〉

『N.E.O.』より

コンプレックスを隠すわけでもなく、見ないようにするわけでもない。克服もしなければ、ごまかそうともしない。持って生まれたものを才能と呼ぶのなら、コンプレックスだって立派な才能だと言わんばかりに、真正面から受け止め、堂々と「これが新しい時代の “かわいい” なんだよ」と提示する。音楽の力で肯定と快楽をもたらす。

双子によるツインボーカルは、ときに愛らしく高い声で踊るように響き、ときにヘビーな声色で叫ぶようにメッセージを届ける。抜群の演奏技術を誇るベースとドラムのリズム隊は、あまりにクールで思わず、自然と身体を揺らしにかかる。

彼女たちの前向きで凛とした姿勢は、その音楽性はもちろん、ビジュアルなどのアートワークに昇華されるだけではなく、音楽業界の定説にも切り込む。一例として、若さやルックスで人気を獲得し、つたない演奏も是とする「ガールズバンド」という言葉の持つイメージや風潮には異を唱え、そう呼ばれることも断固拒否。自らを「ニュー・エキサイト・オンナバンド」と称し、「本物の音楽を届けたい」と表明している。

そこまで言い切ってしまえるのは、それだけの覚悟があるから。最高にクールなライブの裏での、とてつもない練習も感じさせる。彼女たちのインタビューの受け答えを読むと、曲に込めた思い、ライブパフォーマンスへのこだわり、目指す方向性など、なにに対しても明確な考えを持っている。つまり、思想があるのだ。

あの歌詞のフレーズが頭から離れない、あの曲のメロディが思わずリフレインする、それと同様に、あのミュージシャンがインタビューでこんなこと言ってたな……みたいな記憶って、実はとても影響力があって、楽曲そのものに勝るとも劣らず聞く側の人生に影響したりするからあなどれない。

CHAIは、2018年の抱負として「全てのコンプレックスにポジティブの名を与え続けます」と語っている。それが「NEOかわいいってことだよ」と。音楽を以ってしてすべてを肯定する。これから目が離せないアーティストだ。
 

PINK
待望の1st Album『PINK』は、初期衝動とセンスを詰め込んだ全11曲収録。初回限定盤は新感覚前向きコンプレックス図鑑「COMPILEX」付き。3月には「春のCHAIまつり」を開催、3/25(日)大阪・梅田Shangri-la、3/31(土)東京キネマ倶楽部にて。

JASRAC出1801089-801

 

女同士の大切な関係と感情を描く
新時代を告げるシスターフッド小説

『完璧じゃない、あたしたち』

いくぞ、おまえらついてこい。ザッツシスターエンタテイメン! 活字離れ? 本は読まない? うるさいそんなの知ったことか! これがフィクションの力だ。パラレルワールド全開だ! 時代も身分もジェンダーも、いやいや人間だって超えてやる! どこにだって地獄はある。ってことは天国だってあるはずだ。え、ないの? じゃあ作っちゃえばいいじゃん、天国。幸せなんて歩いてくるか! だから走って行くんだよ! 腕を振れ! 足を出せ! 顔を上げろ! 自分の心と体で存分に生き抜け!

と、一気に読み終えてすぐにこの作品を紹介しようとしたところ、こんなテンションになってしまった。とてつもなく触発されてしまった。


本書に収められているのは、シスターフッドな短編が全23編。ありふれた日常の繊細な感情の奥に手を伸ばしたかと思えば、いきなりファンタジー世界にトリップするフィクショナルな物語が展開され、静かな暮らしのなかで営まれる大切な感情に寄り添ったのちに、怒濤の勢いで突き進む冒険活劇さながらの生き様が描かれる。代わる代わるやって来る登場人物たちが目の前で人生劇場を繰り広げる。ひとつの短編が終わるたびに、また新しい扉が開くことの喜び。その悦楽に身を任せているうち、いつの間にか虜になる。あぁ、物語ってこんなに楽しいのか。

作者は相当に本を読んできた人なのだろう。想像力という名の引き出しの数がハンパじゃない。出会ってきた人間を、自分の身に起きた出来事を、読んだ物語を、聞いた話を、しっかりと心と身体に刻みつけて、丁寧に向き合って、その都度ちゃんと喜んだり怒ったり悲しんだり楽しんだりしてきたんだろう。だって、世界を見つめる解像度があまりに高いから。

文芸と過ごした甘い日々と惰性で飲み込まれたインターネットのハイブリットのような文体で、トキメキとセックスに目を凝らしながら、現実と地続きの異世界を描き出す。なにより、こんなにも当たり前に全編シスターフッドで構成されていることのセンス。今の時代こういうのがいいんでしょ?的なあざとさが一切ない。当然そこには確固たる意志があるはずなのだが、とにかく華麗な手つきで成し遂げられているのだ。正確には、男性も何人かは登場する。だけど「女しか出てこなかったね」「男もちょっと出てきたよ」「でも女しか出てこなかった」「わかる」「そこがいいよね」「そこがいい」。この感じ、伝わりますかね? 読めばきっとわかると思います。

『完璧じゃない、あたしたち』/王谷 晶
すべて “女と女が主人公” の短編小説集。友達? 仲間? 憧れ?……恋? この関係に名前はつけられない、でも、あなたじゃないとだめ。大切な女同士の様々な関係を描いた物語、全23編を収録。ポプラ社刊

 

社会に適応した “普通の女の子” が
歩むこの道ははたして天国なのか
けもの道なのか

『ダルちゃん』

24歳の派遣社員として働く人間の姿はあくまで仮の姿で、本当はダルダル星人のダルちゃん。普通の人間に見せるために続けている毎日の惜しみない努力。気持ち悪いけどメイクをして、苦手なストッキングとヒールをはいて、完璧な擬似をこなす。

〈どうして私がここで こうして生きているのか〉ダルちゃんは自分でもわからないと言う。本意ではなく、死活問題として “普通の女の子” になることを選んだ。


職場と違って役割が曖昧な飲み会は苦手。ただそこにいるだけで、性的な視線を浴びてしまう。同僚の顔色をうかがい、他人の中にある正解を探りながら愛想笑いをしてみる。

〈会社の皆は誰も私が本当はダルダル星人だなんて気付きません〉この “ダルダル星人” のところに、どんな言葉を入れたら自分のことになるのか。作品で描かれる “擬態” は、現代社会を生き抜く女性たちが、意識的に、あるいは無意識的に演じている “私” とあまりに自然に重なってしまう。


そして、徹底的に現実を目指した結果、ダルちゃんの前に現れる男性は露悪的に描かれる。彼らもまた、男としてこの社会を生き抜くために、無意識のうちに男性性を内面化しているようにも見える。

16話ではダルちゃんに初めて友達ができた。光が差した。連載は1年間続く予定で、まだ半分にもきていない。この光は、果たしてなにを照らすのだろうか。

『ダルちゃん』/はるな檸檬
ビューティやファッション、カルチャーなどの情報を発信している資生堂の「花椿」(季刊誌/ウェブ)。同作品は花椿ウェブ内、ハナツバキコミックの第2弾として連載中。“普通の” 女性に擬態するダルちゃんの目線を通じて、ごくありふれた人間社会の中に潜むいびつさを徹底的に繊細なタッチで描く。

 
●情報は、FRaU2018年3月号発売時点のものです。
Photo:Yoshio Nakaiso Text:Ryuji Ogura Composition:Shiho Kodama

 

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