舞台「ヘッダ・ガブラー」で、女優なら誰もが一度は演じてみたいと願う悪魔的なヒロイン・ヘッダを演じる寺島さん。ヨーロッパの風土が生み出す、わかりにくいキャラクターに惹かれる理由は、結婚相手から受けた影響も多々あるようで……。

 

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君と一緒にいても
ちっとも面白くないって
しょっちゅう彼に言われました

――寺島さんが、今のご主人と結婚したのが11年前。最初から、お互いの感性に惹かれ合ったんですか?

寺島:全然(笑)! 付き合い始めの頃は、しょっちゅう言われましたよ。「君と一緒にいてもウンウン頷くだけで、少しも面白くない。何かないの? 君の意見は?」って(苦笑)。私は正直、彼の意見を聞いて「違うな」って思っても、面倒くさいから、「そうだね」って相づちを打っちゃってたんです。

そもそも、ヨーロッパで生まれ育った彼は、文化に対する知識量が桁違いで、小さい頃から自分の意見を主張するように育てられているから、弁が立つ。だから私は、最初の頃はちょっと萎縮しちゃったところもあったし、どうせ言い負かされるんだから面倒だと思って、自分の意見を主張はしなかった。でも、それじゃだめなんです。自分の意見をはっきり持って、それをちゃんと言葉で主張できないと、人間として認めてもらえない。

それに、彼は自分の意見は主張するけれど、それで相手を納得させたいわけじゃなくて、相手の意見も聞きたがるんです。だから、私が何かトンチンカンなことを言っても、否定したりしない。相手の考えをちゃんと尊重する。そこは、日本の男性にはあまり見られない感性の豊かさだと思いました。

 
――フランス人にとっては、経済的にだけでなく、精神、思想、感性もすべて自立していることが、 “人間の条件” なのかもしれないですね。島国で協調性を持つように育てられた日本人が、一緒に生きていくのは大変そうです。

寺島:そこは、本当に鍛えられました。文化以外にも、歴史のことも知らなきゃいけないし、興味や感心を持つ対象もグンと広がりました。その分疲弊や消耗も激しいですが(笑)。でも、徐々に知識をつけて、その上でわかりにくいものや、余白の部分をあれこれ想像することで、精神の豊かさのようなものは、確実に獲得できるんです。

映画だって舞台だって、「わからなかった」で片付けるのではなく、あれはこうじゃないか、いやそこは違うだろうって、一つの作品についての意見を交わし合うことができたら、観る側も成長できるでしょう? 実際、そういうお客さんが増えれば、演じる側も成長すると思うんです。
 

画像: ワンピース¥55000/ザ ダラス(シック)☎ 03-5464-6061 ピアス(右耳)¥7900、ピアス(左耳)¥8900/ともにステラハリウッド ☎ 03-6805-0390 リング¥28500/CALL MOON Mail:hello@call-moon.com

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――なるほど。どんな豊かな文化も、その栄養を十分に吸収できるかどうかは、受け手次第ですからね。見る目が育てられれば、演じる側ももっと磨かれる。だから、ヨーロッパの文化は成熟しているんでしょう。ただ、仕事もこれだけ大変なのに、日常生活の中で、人間としての感性も磨いていかないといけないなんて……。休む暇がないですね。

寺島:本当に(苦笑)。消耗し、疲弊していく一方です。充電したり、インプットしたりっていう余裕がまったくない。だから今は毎日、あっという間に夜が来て、あっという間に一日が終わっている感じです。ただ、子供がまだ手のかかる時期ということもあるので、今が一番大変なのかな、と思います。今回の舞台だって、こんなに立て続けにやるのは無茶だとも思ったんですけど、やっぱり、やりたかったんです。

 
――仕事のオファーを受けるとき、何か基準にしていることはあるんですか?

寺島:すべて直感です。ここまで、本当に直感だけで来た人間なんです。直感と、タイミング。だから、「やりたい!」って思ったら、それに逆らってはいけないと思っちゃうんです。結婚も、作品選びもすべてそうでした。ただ、今振り返ると、あの話がもし2ヵ月あとに来てたらできなかったな、ってこともよくありました。何一つ後悔はしていないです。

4月末に公開される「オー・ルーシー!」っていう映画はロサンゼルスで撮影したんですが、子供を同行させられたので、海外ロケが実現したんです。ちょうどそのとき、夫の娘が日本に1年滞在していたので、彼女も一緒にロスに連れて行って、子供の面倒をみてもらいました。彼女がいなかったら、私も撮影に集中できませんでした。

 
――それにしても、退屈のない毎日です。

寺島:そう。そこは、毎日退屈ばかりしているヘッダとは大違い(笑)。

 

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PROFILE

寺島しのぶ Shinobu Terajima
1972年生まれ。京都市出身。青山学院大学在学中の1992年、文学座に入団。2003年公開の映画「赤目四十八瀧心中未遂事件」で第27回日本アカデミー賞最優秀主演女優賞、「ヴァイブレータ」で東京国際映画祭女優賞を受賞。2007年、フランス人アートディレクターと結婚。2012年に一男をもうける。
 
2010年「キャタピラー」で世界三大映画祭の一つベルリン国際映画祭最優秀女優賞(銀熊賞)受賞。主演映画「オー・ルーシー!」は、4月28日ユーロスペース、テアトル新宿ほかにてロードショー。2019年2月には、パリのコリーヌ劇場で舞台「海辺のカフカ」が上演予定。

 

INFORMATION

舞台「ヘッダ・ガブラー」

画像: 舞台「ヘッダ・ガブラー」

時は19世紀末。高名な将軍の娘ヘッダは、いつも男たちにあがめられる存在だった。頼りの父親が世を去り、ヘッダは、将来を嘱望された学者と結婚する。長い新婚旅行から帰ったとき、ヘッダは既に結婚生活に退屈していた。懇意にしていた判事の誘惑を、かつての恋人との再会など、次々に起こる出来事の中で選んだ衝撃的な結末とは……? ヘンリック・イプセンの代表作を、栗山民也が演出。出演は寺島しのぶ、小日向文世、池田成志、水野美紀、段田安則ほか。
4月7日(土)~30日(月・祝)Bunkamuraシアターコクーン
http://www.siscompany.com/hedda/


Photo:Akina Okada Styling:Ayako Nakai(crêpe) Hair&Make-up:NaokiKatagiri(EFFECTOR) Interview&Text:Yoko Kikuchi

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