現在公開中の日韓合作映画『蝶の眠り』で、余命を宣告された女性小説家を演じている中山美穂さん。“大切な人とのかけがえのない記憶は生きる糧になる” というロマンチックで切実なテーマの作品だが、映画もまた、観た人の記憶に残ることで “生きる糧” につながることがある。

かつて映画『Love Letter』で多くの韓国人を魅了した彼女が、映画に魅了された韓国監督の手によって、また別の魅力が引き出された。成熟した大人の女性が、病魔に侵されることで、少女のように無垢になっていく――。

成熟と無垢。『蝶の眠り』には、そんな中山さんの相反する魅力が詰まっていた。まるで、このシナリオが、ジェウン監督の中山さんへのLove Letterであるかのように。

 

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キレイに撮られたい気持ちは
一ミリもないです(笑)

――女性監督ならではの演出方法だなと思うことは何かありましたか?

中山:監督は、ドキュメンタリーも撮られている方で、こだわりも強いし、とてもアーティストっぽい発想をされるんです。アイディアも豊富なので、「こうしたい」と言った後に、「あ、でもこうかなぁ」なんて、いろんなことを提案されて、それを面白がって、ゆらゆら揺れながら演じている私がいました(笑)。

でも、演出は基本的に女性の可愛さを強調されることが多かった気がします。たとえば、チャネくんと二人でいるときも、「ちょっと彼の肩に頭をつけてみようか」とか、手を繋ぐときも、ただ手を重ねるんじゃなく、指と指を絡めた「恋人繋ぎにして」とか。普段の私だったら絶対にしないようなことを、グイグイと(笑)。

 
――映画での涼子は、ものすごくキレイに撮られていて、凛とした佇まいが素敵でした。でも、実際の中山さんは、綺麗に撮られたい欲はなさそうに思えます。

中山:ないですね(笑)。ジェウクさんにもたびたび驚かれました。「女優さんっていうのは、この角度から撮られたいとか、左右どっちの顔のほうが好きとか言うものだよ」って。私はそういう考えが一ミリもなくて、360度、どこから撮られてもいいようにしたいの。最終的には、フィルターがかかったり、光の回し方だったりでキレイに映るので、つくづくズルしているなと思います(笑)。

私は、キレイに映してもらうことよりも、それまで見えなかった感情が不意に表れる瞬間だったり、相手役の方とのセッションの中で生まれたものを大事にしたいんです。現場でも、扱い的には女優として扱ってくださっている方が多くて、それはすごく有り難いんですが、私はできるだけ現場にいたいし、人の仕事を見ていたい。

女優としてではなく、俳優部の、映画を構成する一つのパーツとして現場に参加しているつもりなので、現場に入るとウキウキしちゃう(笑)。でも、すぐ「どうぞどうぞ控え室に」とか言われちゃって、本当はそこにいたいんだけど、いると迷惑かな、と思って引っ込むんです。
 

画像: ドレス¥¥302000/IZA(ヌメロ ヴェントゥーノ)☎0120-135015

ドレス¥¥302000/IZA(ヌメロ ヴェントゥーノ)☎0120-135015

――中山さんの中に、向上心としてあるものは何ですか? 女優としての未来とか、課題について考えたりはするんでしょうか?

中山:お芝居が上手くなりたいのはもちろんですが、演じる上で、技術的な部分や熱量以外に、自然に滲み出てしまう何かというのが、必ずあると思うんです。その滲み出る材料が、年齢を重ね、経験を積むことで、自分の中に溜まっていけばいいなと思います。年を重ねること、経験を積むこと、などなど。すべてがお芝居の肥やしになる。

80歳ぐらいのおばあちゃんって、陽だまりの中で座っているだけでも、何かが見えちゃうじゃないですか。そういう豊かさが欲しいなと思います。年齢を重ねて、ちゃんと自分の “味” を出していけるのか。キレイでいるとか、若さを保つことよりも、私が自分の未来で興味があるのはそこですね。

 
――年齢を重ねる中で、何か心境の変化はありましたか?

中山:年齢を重ねることに不安はないし、今自分が何歳とか、あまり意識してはいないみたいですね、どうやら(笑)。年齢を重ねて楽しいのは、いろんなこだわりが、削がれていくというか……。一つ、何か豊かな部分を見つけられたら、その代わりに何かを手放していける。鎧を外していけているのかな。シンプルになっているのかもしれないです。

どんなつらいことがあっても、人前では自然に笑っていられるような、そんな芯の部分にあるブレない何かが太くなっている気がしています。それはたぶん、人の三周分ぐらいの人生を経験しちゃった気持ちだからかもしれない(笑)。いろんなことを乗り越えてきた私だから、きっと大丈夫、って思う。

 
――ところで、リラックスタイムはどんなふうに過ごしますか?

中山:意識して気持ちを切り替えたりはしないですね。家に帰れば自動的にだらんとした自分になる(笑)。時間があるときは、ひたすら猫とゴロゴロしています。それが一番の癒しです。

 
――旅はお好きですか?

中山:休みができたら、すぐ旅には出たいと思いますね。旅に出ると何かがリセットできるんです。普段の生活だと、疲れてるはずなんだけど、「全然疲れてないや」と思い込んでたりするんですが、旅に出ると、身体が正直になる。旅の途中で、ぼーっと景色を眺めながら、自問自答するせいかな。そうすると、普段見えないことにいろいろ気がついてくる。私、一人旅が結構好きなんです。

以前は、スペインが好きでよく行ってたんですが、毎回、次にどこに行くか、宿も決めないままの旅行でした。自分の勘や直感を信じてるのかな。一緒に行く友達がリサーチ魔だったりすると、疲れちゃうんです(笑)。最近は国内で行ったことのない場所に行って、見たことのない景色が見たいなと思います。

旅は、思い立ったら即行動、ってタイプなので、失敗も多いです。以前、撮影で大阪にいたときに、次の日が休みだったので、金沢まで最終の電車に乗って、お寿司を食べに行ったことがあります。でも、時間が遅すぎて、どこもやってなかった。だから、そのままホテルに泊まって、大阪に戻りました。そんな無計画の旅をよくします。

今は、直島に生きたいです。アートに触れる旅がしたい。ふらっと、気が向いた時に。

 

PROFILE

中山美穂 Miho Nakayama
1970年生まれ。東京都出身。1985年ドラマデビュー。歌、ドラマ、映画、CMなどで幅広く活躍。歌手としてはNHK紅白歌合戦に1988年から1994年まで7年連続で出場した。1995年、ヒロインを演じた岩井俊二監督『Love Letter』がアジア各国でも公開され大ヒット。アジア全域では抜群の知名度を誇る。

 

INFORMATION

映画『蝶の眠り』

画像: ©2017 SIGLO, KING RECORDS, ZOA FILMS

©2017 SIGLO, KING RECORDS, ZOA FILMS

売れっ子の女性小説家・涼子(中山美穂)は、自分が母と同じ遺伝性アルツハイマーに侵されていることを知る。死を迎える前に、何かをやり遂げようと考えた涼子は、大学で文学講師を務めるようになり、近くの居酒屋でアルバイトをする韓国人留学生チャネ(キム・ジェウク)と出会う。涼子は最後となるかもしれない小説の執筆をチャネに手伝わせることに。いつしか二人は、年齢の差を超えて、恋人のように惹かれあっていく。角川シネマ新宿ほか、全国上映中。http://chono-nemuri.com/

 
Photo:Akina Okada Styling:Hiroko Sogawa Hair&Make-up:Eriko Ishida(air notes) Inteview&Text:Yoko Kikuchi

 

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