旅好きセレクターによる、旅へと誘う本をご紹介! 今回は、「numabooks」の内沼晋太郎さんに選書してもらいました。

 

本と旅は一行や一瞬によって
もたらされる個人の宝

本と旅のどちらが好きか迷うところだ。遠くへ連れて行ってくれる本もあれば、圧倒的な風景を目前にしてどんな大作家も描けないはずだと確信する旅もある。それは本来、個別のものだ。

この本が最高だ、あの場所が感動的だというのは、建前にすぎない。何でもない一行、何でもない一瞬が、その人の記憶やことばと混ざり合って、個人の宝になる。そういうところがあって、どちらもやめられない。
 

画像1: 本と旅は一行や一瞬によって もたらされる個人の宝

ぼくは管啓次郎さんの『斜線の旅』が忘れられない。島々を旅しながら、現地のことばや神話や、鳥の名前や誰かの旅を取り込み、目の前にあるものを見る。その往復によってもたらされる管さんの感動が、丁寧に紡がれた文と初見の不思議な固有名詞により、遠く向こうに見えてくる。まるで管さんが指差し語りかけてくるようで、それは旅そのものだった。
 

斜線の旅
管啓次郎 著/インスクリプト(2009年)
ニュージーランドを拠点にしたポリネシアの大三角形踏破を軸にした紀行文。島旅の快楽、旅について、書くことについて綴られる思考のクロニクル。

 

画像2: 本と旅は一行や一瞬によって もたらされる個人の宝

テジュ・コールは小説家で、写真家でもある。〈Blind Spot=盲点〉の題の通り、写真は一見誰もなんとも感じない路面や壁、柱、布、そこにある跡、光、映ったもの。そこに写真家の思考が、小説家の言葉で、短く寄り添う。一枚の写真から、ここまで遠くに旅することができるのだと感服する。
 

Blind Spot
Teju Cole 著/Faber & Faber(2017年)
小説家であり写真家のテジュ・コール。〈Blind Spot=盲目〉をテーマに世界中で撮影した一見何気ない写真とそれに寄り添うエッセイ。

 

画像3: 本と旅は一行や一瞬によって もたらされる個人の宝

最後に定番の『旅の絵本』を。何気ない日常風景の中に、よく知られる物語や名画のいち場面が覗く楽しみもある。『Ⅷ』は待望の日本編。昔話がそっと隠された空からの眺めは、ひょっとしたら、あなたがいま機内から見下ろす風景かもしれない。
 

旅の絵本Ⅷ
安野光雅 著/福音館書店(2013年)
各地を舞台に旅の楽しさを描いた絵本。日本の花見や田植え、祭りに紅葉と、季節の移り変わりや、古き良き懐かしい風景が描かれる。

 

PROFILE

内沼 晋太郎 Shintaro Uchinuma
numabooks 代表。ブック・コーディネーター。自社で新刊書店「本屋B&B」と出版社を経営。著書に『本の逆襲』(朝日出版社)など。


●情報は、2018年5月現在のものです。
Photo:Toru Oshima

 

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