古い港町ではやはり多様な文化が溶け合って、豊かな生活が育まれている。ブランディングディレクター福田春美さんが神戸の人に触れて感じるのは、それぞれが自分らしい世界の中できちんと地に足つけて暮らしていること。

シャイで親切で、ロマンチック。神戸らしさを追い求めて。“街のカオスを体感する” ために、異文化が交錯する港町・神戸を旅しました。

 

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文化が混ざり合うと
美味しいものが食べられる

ライトアップされた南京町のあずまや。

神戸港に集まった船がヨーロッパ航路のためか、欧米はもちろん、その経由地となった地域の人たちも神戸には多く住んでいる。インド、ベトナム、韓国など、アジアの人々が小さな集落を形成し、それぞれの国の生活を忘れることなく、神戸の街を謳歌している。
 

〈アイチャン〉の名物、テンジャンスープ。キムチなども本格派の浅漬け。春美さん曰く「塩加減がちょうどいい」。

中国人はさすが、きちんとチャイナタウンがある。春美さんが「この店だけはもう一度行きたい!」と、かつて友人に連れられてきたことがあるという韓国系の店〈アイチャン〉へ昼食を食べに行った。

住宅街の中にポツンとあるその店は、味噌仕立てのテンジャンスープが有名な店だった。春美さんにとって神戸の象徴的な味は、胃の腑に染み渡るような優しい韓国のスープ。
 

関西でもっとも大きなチャイナタウンである南京町。神戸牛、鮨、しゃぶしゃぶの看板と並んで、中国語の看板が掲げられている路地もあった。様々な国が混じり合う姿が実に神戸らしい。

「仕事で何度か来たことがあるくらいで、神戸はそれほど親しみがある街ではないんです。今回も神戸行きが決まってから、調べるほどに、芯を掴みづらいというか(笑)。それくらい多様なものがミックスされているんだと思うんですね。あそこに行けば神戸がわかる、なんてお店やスポットはないんだと思うんです。人それぞれの見方で街を歩けば、まったく違う景色が見えてくるのが神戸なのかもしれない」

だからこそ、行く先々で「神戸らしさ」を求めて人に会い、その出会いそのものが旅の目的になる。
 

 
市中心部からは少し離れた郊外の静かなベッドタウンである塩屋地区。海を望む小高い丘にある〈旧グッゲンハイム邸〉は、言うなれば過去と現在がミックスされ、更新されている場所だ。
 

〈旧グッゲンハイム邸〉のサンルーム。改装は元宮大工の手を借りて行われ、過去に改装された箇所は資料にあたり、できるだけ建設当時へと戻すように手を入れている。ディテールに時代を感じる。

明治・大正期に滞在したドイツ系の貿易商が建てた、いわゆるコロニアル・スタイルの洋館。明るいサンルームがあり、スワンネックと呼ばれる装飾の施された手すりがある。洋館らしい天井の高い空間は、築100年を超えた。
 

天井の高い1階の部屋では、大規模なコンサートやピアノや声楽の個人レッスンなども行われている。

さまざまな所有者の変遷を経て、現在は音楽家である森本アリさんのご家族が所有、管理し、音楽イベントや結婚式のために貸し出している。「最初は魅力的に思えなかった」と、森本さんは言う。

けれど実際に使い始めるとその空間の魅力に惹かれていった。過去の意匠を再現しながらの保全は次第にこの地域の他の建物の魅力の再発見にもつながり、現在の塩屋には、移住者も増えているという。

単に洋館だから素晴らしいのではなく、古い建物が時代に合わせて用途を変化させながら、実際に使われていることに価値がある。古いものを愛でるとともに、本質的な価値を認めることができる土地柄。春美さんの言う「ミックス感」は、こんな形でも表出している。
 

銅で開閉する窓からは、美しい他の洋館が見えた。

森本さんにも「神戸らしい店」について尋ねると、「一度しか行ったことがないのだけれど」と前置きをしつつ〈思いつき〉というなんとも可愛らしい名前の喫茶店を挙げてくれた。そこは80歳前後のおばあさん姉妹4人がやっている小さな喫茶店なのだという。そのわずかな情報だけで心が動かされるではないか。勧められるまま、店へと向かった。

 

つづく……
次回更新は、6月17日(日)です! お楽しみに!!

アイチャン
兵庫県神戸市須磨区大池町2-1-27
☎078-732-5444
 
旧グッゲンハイム邸
兵庫県神戸市垂水区塩屋町3-5-17
☎078-220-3924

 

PROFILE

福田春美 Harumi Fukuda
企業のプロジェクトをはじめ、インテリアスタイリングなど、ファッションからライフスタイル系まで、幅広くブランドディレクションを手がけている。

 
●情報は、2018年5月現在のものです。
Photo:Norio Kidera

 

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