ダスティン・ホフマンとトム・クルーズが兄弟役を演じ、第61回アカデミー賞作品賞を受賞した映画『レインマン』。事業に失敗して破産寸前のチャーリーの元に、彼を勘当した父親の訃報が届く。莫大な財産を相続できると喜んだのも束の間、財産を受け取るのは、いるはずのない兄レイモンドだった。なんとかして財産を自分のものにしたいチャーリーは、兄を施設から連れ出した……。

障碍を持つ兄との出会いを通して、人間の成長を描いたヒューマンドラマで、ロードムービー的な側面も持つ映画史に残る名作が、この夏、舞台化される。

自由奔放な青年チャーリー役を藤原竜也さんが、重度の自閉症患者である兄のレイモンド役を椎名桔平さんが演じる。宝塚歌劇団の男役トップスター出身の安蘭けいさんは、チャーリーの恋人・スーザン役で出演。

以前から親しいという2人のトークは、しっかり者の姉とお調子者の弟のような仲のよさ。初共演とは思えないフランクな雰囲気で、終始和やかに進んでいった。

 

芝居が、今の自分を形成する
血肉になった(藤原竜也)

――『レインマン』は、有名な映画の舞台化です。藤原さんは、映画版ではトム・クルーズの演じたチャーリー役ですね。

藤原:今回は、僕にとっては初めて尽くしなんです。有名な映画の舞台版に出演するのも初めてなら、椎名桔平さん、瞳子さん(安蘭さんの呼称)と共演するのも初めて。演出の松井(周)さんも初めて。しかも、元がロードムービーであることにも、僕には若干の戸惑いがあります。舞台って、“密室劇” なんてものが存在するように、ロケーションが固定されていることのほうが多いじゃないですか。

でも、今回は旅を続ける中での内面の変化を表現しなきゃならない。本当に、僕にはまったく馴染みのないタイプの戯曲で。新鮮な気持ちで取り組ませていただいています。とくに松井さんは、稽古をすごく大事にする方。しかも、芝居の鮮度を求める方で、日々の稽古にまったく妥協がない。演出もすごく細かいですし、稽古時間もかなり長めです(笑)。

安蘭:それ、しょっちゅう言ってるよね(笑)。でも私は、そんなに稽古が長いとは思わないけどなぁ。竜也くんは台詞が多いから、集中力を保つのが大変だよね。今までのパターンだと、昼から稽古が始まったら、夕方には集中力が切れてるよね(笑)。

藤原:そうなんです(苦笑)。ここのところ、毎日16時頃には切れてますね(笑)。だから、ずっと集中力の切れない桔平さんや瞳子さんを見て、集中力の持続とはこういうことをいうんだなって、勉強させてもらっています。

安蘭:また調子がいいこと言って(笑)! でも、竜也くんのスタートダッシュの切れ味の良さと、集中力の切れたときの落差がすごいのは確か(笑)。台詞を通して人間的な成長を見せていかなければいけないから、端から、「大変な役だなぁ」と思いながら見てます。

藤原:僕自身は、そんなに台詞が多いとは思わないですが、チャーリーが物語を進める役だってことは自覚していて……。今回は共演者の方が大人だし、優しいので、僕の集中力が切れて芝居が雑になってしまっても、ちゃんと受け入れてくれるんです(笑)。でもそこに甘えてはいけないな、と。ちゃんとやります!

 

「竜也くんには “難役” が似合う(笑)」安蘭けい

画像: 「竜也くんには “難役” が似合う(笑)」安蘭けい

――藤原さんが、この初物尽くしの舞台に出演することを決めた理由は何だったんですか?

藤原:うーん……。とにかく、今までやったことのないような戯曲なんですよ。僕の場合、唐十郎さんや井上ひさしさん、寺山修司さんに三島由紀夫さん、シェイクスピアなどの戯曲との出会いがあって、演出家なら蜷川幸雄さんや栗山民也さん、野田秀樹さんに鍛えられて、芝居の役や台詞が、今の自分を形成する血肉になっている部分がある。作品ごとに、時代や言葉と格闘して、その都度、細胞のすみずみまで奮い立たせながらやってきたんです。

その中で、こういう誰もが知っているストレートなヒューマンドラマを今の自分がやることを、意外と思われる方はいるかもしれませんね(苦笑)。でも、目の前に、心温まるホン(台本)があって、初めての人たちの出会いがある。チャーリーも、自閉症の兄との出会いによって変わっていったわけで、僕も、作品に取り組んでみなければ、やり遂げた後に、どんな感情になるのか、自分の中にどんな変化が起こるのかはわからない。だから、“出会い” ですよね。そこに惹かれたとしか言えません。いつか振り返った時に、「あのクソ暑い夏、みんなで稽古して、いい芝居だったね」と言えればいいな。

安蘭:私は、昔、この映画を観てすごく感動した記憶があったので、お話をいただいたときは、「やった!」と、素直に嬉しかったです。でも、舞台に出演することが決まって、あらためて映画を観直したら、覚えていなかったことが結構あった(笑)。竜也くんの言う通り、映画のロードムービー的な展開が、舞台ではどうなるんだろうと。そこはかなり楽しみです。

あとは、桔平さんと竜也くんの共演ですよね。私、最初、竜也くんがレイモンド役なのかなと思ったの。もちろん、兄と弟だから年齢的には竜也くんがチャーリーなのは当然なんだけれど。竜也くんには、いわゆる “難役” が似合う気がして……。でも稽古をしてみたら、チャーリーもかなりの “難役” だってことがわかりました。夕方集中力が切れるのも仕方がない。

藤原:あんまりその話引っ張らないでください(笑)。

 

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PROFILE

藤原竜也 Tatsuya Fujiwara
1982年生まれ。埼玉県出身。1997年蜷川幸雄演出の『身毒丸』主役オーディションでグランプリを獲得し、ロンドンで初舞台を踏む。以降、舞台、映画、ドラマ、CMなど幅広く活躍。2003年、日本演劇史上最年少21歳でタイトル・ロールを演じた『ハムレット』で主な演劇賞を総嘗めに。映画の公開待機作に、大友啓史監督『億男』(2018年10月19日公開予定)、2019年公開の蜷川実花監督『Dinner ダイナー』では主演のボンベロを演じる。

安蘭けい Kei Aran
滋賀県生まれ。1991年宝塚歌劇団に主席で入団。2006年星組男役トップスターに就任。2009年宝塚歌劇団を退団。退団後も、女優として舞台を中心に活躍。2013年『サンセット大通り』『アリス・イン・ワンダーランド』の演技に対し菊田一夫演劇賞を受賞。近年の出演作に『リトル・ナイト・ミュージック』『スカーレット・ピンハーネル』『リトル・ヴォイス』『白蟻の巣』など。

 

INFORMATION

舞台『レインマン』

画像: 舞台『レインマン』

1988年に公開され大ヒットを記録し、各映画賞を総嘗めにしたヒューマンドラマの金字塔を舞台化。上演台本、演出を担当した松井周は、「誰かの存在が自分を変えてくれることの喜びを描きたい」と語る。脚本:ダン・ゴードン 上映台本・演出:松井周 出演:藤原竜也 椎名桔平 安蘭けい 横田栄司 吉本菜穂子 渡辺哲 主催・企画制作:ホリプロ

東京公演:2018年 7月20日(金)~8月4日(土) 新国立劇場中劇場 ☎03-3490-4949(ホリプロチケットセンター)
静岡公演:2018年 8月7日(火)~8日(水) 三島市民文化会館大ホール
福岡公演:2018年 8月11日(土)~12日(日) 久留米市ティプラザ ザ・グランドホール
大阪公演:2018年 8月14日(火)~15日(水) メルパルクホール大阪
宮城公演:2018年 8月18日(土)~19日(日) 名取市文化会館・大ホール
愛知公演:2018年 8月22日(水)~23日(木) 御園座 
http://hpot.jp/stage/rainman2018

 
Photo:Aya Kishimoto Inteview&Text:Yoko Kikuchi

 

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