旅好きセレクターによる、旅へと誘う本をご紹介! 今回は、表現研究者の菅俊一さんに選書してもらいました。

 

失ってしまった日常の価値を取り戻す

以前、観光地と呼ばれている場所の近所に住んでいた時のことだ。見慣れた建物や食べ物に対して楽しそうに写真を撮っている人々を眺めながら、多くの人にとっては特別な物でも、慣れてしまうと価値は失われてしまうということを実感したことがある。そんな経験からか私は、旅というものを、慣れることで失ってしまった日常の価値を取り戻すための手段だと考えている。旅先では、普段は気にも留めないマンホールやゴミ箱も、何故か特別な物として気になって見てしまう。
 

画像1: 失ってしまった日常の価値を取り戻す

100の指令
日比野克彦 著/朝日出版社(2003年)
著者が考えた100個の「指令」を収録した想像力のエクササイズ本。生活の中で想像力を駆使できる指令が数多く紹介されている。

「価値を取り戻す体験ができる」というのは、実は旅と本の共通点なのかもしれない。例えば『100の指令』は「口の中をベロで触って、どんな形があるか探ってみよう。」などの指令に従いながら、長年連れ添った自分の身体や感覚にもまだ発見があることを実感できる。
 

画像2: 失ってしまった日常の価値を取り戻す

寝るまえ5分の外国語
黒田龍之助 著/白水社(2016年)
文法や会話表現だけでなく新たな世界の魅力まで教えてくれる語学参考書。読めば読むほど面白い筆者お薦めの103冊をこの一冊に。

『寝るまえ5分の外国語』は、なんと語学書の書評集だ。これまで、学びやすいかどうかという視点だけで評価していた語学書が、実は言葉の仕組みを通じて文化を知るドアでもあるのだと教えてくれる。
 

画像3: 失ってしまった日常の価値を取り戻す

ぼくのかえりみち
ひがしちから 作/BL出版(2008年)
道路の白い線だけを通って、家に帰ること決意したそらくんの冒険記。子どもの頃に誰もが一度は試みた遊びをダイナミックに描く。

最後は、子どもの頃によく抱いていた「この白い線から落ちたら死ぬ」という妄想を、道路に敷かれた白い線を断崖絶壁として描いて表現した『ぼくのかえりみち』。日常生活の中で大冒険をしていた子どもの頃を羨ましいと感じつつも、今からだって、本や旅の力を借りて見慣れた日常を冒険するように生きてもいいはずだと思っている。

 

PROFILE

菅俊一 Syunichi Suge
表現研究者/映像作家。人間の知覚能力に基づく新しい表現を研究・開発し、様々なメディアを用いて社会に提案することが主な活動。

 
●情報は、2018年8月現在のものです。
Photo:Toru Oshima

 

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