『夏美のホタル』『あなたへ』『虹の岬の物語』(『ふしぎな岬の喫茶店』として映画化)などで知られる人気作家・森沢明夫さんの恋愛小説『きらきら眼鏡』が映画化された。

「最後の1ページまで切ない……」と絶賛されたこの物語に登場する “きらきら眼鏡” とは、心にかける眼鏡のこと。池脇千鶴さん演じるあかねは、心に大きな傷を抱えていた駅職員の明海に出会い、「見たものを全部輝かせることができる “きらきら眼鏡” をかけることにしてるんです」と話す。かくいうあかねもまた、余命宣告された恋人と向き合う日々を送っているのだった――。

 

監督は私より5歳年下
そういう世代になってきました(笑)

――映画を拝見して、とても、いろんな人たちの良心が詰まった映画だと思いました。池脇さんがこの映画にご出演を決めた一番の理由は何だったんでしょう?

池脇:ホン(台本)ですね。まずホンを読ませていただいて、何というか……優しいものに触れた感じがして。このお話が映画になったら観てみたいな、と素直に思ったんです。

 
――あかね役に関しては、すごく “池脇さんらしさ” みたいなものを感じました。というのも、私が池脇さんを見た最後が『万引き家族』で。あれは、ある意味 “池脇さんらしくない” 役でしたよね。

池脇:フフフ。そうかもしれないですね。
 

画像1: ©森沢明夫/双葉文庫 ©2018「きらきら眼鏡」製作委員会

©森沢明夫/双葉文庫 ©2018「きらきら眼鏡」製作委員会

――情けなくて、愚かだけれども善良な人たちが大勢出てくる中で、池脇さんと高良健吾さん演じる若い公務員の二人が、一番ステレオタイプなキャラクターだったというか……。ある種、イヤな役じゃないですか(笑)。でも、池脇さんが演じたことで、“公務員とはいえ、実はこの人も建前上こんなふうに厳しい態度を取っているだけなのかも” なんて想像したり。短い出番でしたが、すごく印象に残りました。いい意味での違和感があったというか。

池脇:演じていても、正直すっごく苦しかったです(苦笑)。役を離れた私自身、本当は、100%あちら側を擁護したい立場だったので。心を鬼にして演じるというか、そんな感じでした。

でも、『万引き家族』はホンがすっごくよかったから、どんな役でもいいから関わりたいと思った。私の場合、毎回そうなんです。出演を決めるポイントは、まずホンにそそられるかどうか。これが映画になった時に、自分は観たいか観たくないか。

自分の役のことは後回しで、一つの映画のシナリオとして魅力があるかどうかを、まずは考えます。『万引き~』も、彼女の背景については明かされていないので、もしかしたら、あんな厳しい態度を取りたくなかったかもしれないですよね。ただ、私は実は『万引き~』の完成品は観ていなくて……(※インタビューが行われたのは7月上旬)。

 
――えっ! 試写は?

池脇:試写を観るタイミングを逃してしまったというのもありますが……。あとは、私はできるだけ、映画は映画館でお客さんと一緒に観たいほうなんです。自分が出演した映画も、必ず映画館に観に行きます。『万引き~』はまだ人がいっぱいだろうから、もう少し空いてからにしようかなと思って(笑)。

 
――ドラマでも活躍なさってますが、池脇さんに肩書きをつけるとしたら “映画女優” が一番しっくりくるような気がします。

池脇:そう言っていただけると、嬉しいです。映画は小さい頃からの憧れで、映画を観るのも、出るのも大好きなので。
 

画像2: ©森沢明夫/双葉文庫 ©2018「きらきら眼鏡」製作委員会

©森沢明夫/双葉文庫 ©2018「きらきら眼鏡」製作委員会

――『きらきら眼鏡』は、原作者の森沢さんの出身地である船橋にプロジェクトチームが発足したり、いろんな情熱や愛が結集して生まれた作品だと思うんです。原作の中に流れる善的なメッセージをどう観た人に手渡すか。関わった人たちが、そういう高い志を持って作っているような感じがしました。

池脇:そういう、小さな奇跡が積み重なって作品が完成するのは、映画ならではですよね。だから、極端なことを言えば、誰でも情熱さえあれば映画は作れるし、誰でも映画に出られるんです。きれいごとに聞こえるかもしれないけれど、映画っていうのは、いろんな人の夢や希望が詰まっている世界だと思います。だから好きなんです。

 
――『きらきら眼鏡』のあかねは、どこにでもいそうな雰囲気ではあるけれど、独特のキャラクターでもあると思うんです。池脇さんが演じているからナチュラルに見えるけれど、明海くんに対する態度は、自分の寂しさを埋めたいからなのか、彼を慰めたいからなのか、その辺が最初はわからなくて。少し浮遊感がある感じが独特でした。特徴がなかった分、演じるのが難しかったのでは?

池脇:それはなかったです。台本を読んだ時点であかねの感情はすんなり掴めたので……。ただ、いい台詞はたくさんあるけど、それがともすれば説明的に聞こえるかもしれなかったので、彼に説教しているみたいに見えないように、自然な、感情を伴った台詞になるよう心がけました。でもおっしゃるように、ポジティヴさ加減が強すぎるので、周りに疎ましく思う人もいるかもしれないことは、ちょっとわかります(笑)。
 

画像: 監督は私より5歳年下 そういう世代になってきました(笑)

――2014年の『カミングアウト』、2016年の『つむぐもの』で注目された犬童一利監督は1986年生まれで、池脇さんより年下なんですよね。

池脇:そうです、そうです。だんだんそういう世代になってきました(笑)。

 
――明海役の金井浩人さんも、監督主催のワークショップから抜擢された新人なので、現場での場数を踏んでいるツートップが、安藤政信さんと池脇さん。「キャリアが長いんだから、しっかりしなきゃ!」みたいな気負いもあったんですか?

池脇:ちょっとはあったかもしれません。キャリアがあるからといって、偉そうにならないようにしようっていう気負いは(笑)。でないと、何か気になったことがあったときに、「それ、こうしたほうがいいのに」って言っちゃうので。

でも、誰かが考えて動いているのであれば、先回りして近道を教えちゃうより、失敗して気づく方がいいんじゃないかって思うんです。私は俳優部なので、そこの持ち場は守りたかった。

撮影にはボランティアの方も大勢関わってくださいましたし、人の優しさを感じられた現場でした。“みんなで一つのモノを作るんだ” っていう情熱に溢れていて、誰もが学びながら進んでいるような、そういう感じでしたね。

 

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PROFILE

池脇千鶴 Chizuru Ikewaki
1981年11月21日生まれ。大阪府出身。1997年「三井のリハウス」第8代目リハウスガールとしてデビュー。1999年『大阪物語』(市川準監督)で映画デビュー。2001年NHK連続テレビ小説「ほんまもん」主演。『ジョゼと虎と魚たち』(03年/犬童一心監督)、『そこのみにて光輝く』(14年/呉美保監督)で、国内外の数々の映画賞を受賞。公開待機作に『半世界』(阪本順治監督)、オムニバス映画『十年Ten Years Japan』などがある。

 

INFORMATION

映画『きらきら眼鏡』

画像3: ©森沢明夫/双葉文庫 ©2018「きらきら眼鏡」製作委員会

©森沢明夫/双葉文庫 ©2018「きらきら眼鏡」製作委員会

「時間って命と同じだから、もたもたしてたら時間切れになっちゃうよ」。恋人の死を乗り越えられずにいた明海(金井浩人・新人)にそう教えてくれたのは、一冊の古本がきっかけで出会ったあかね(池脇千鶴)。いつも前向きで笑顔のあかねは、見たもの全部を輝かせるきらきら眼鏡をかけていると言った。でも、彼女もまた、余命宣告された恋人の裕二(安藤政信)と向き合うつらい現実を抱えていた――。TOHOシネマズ ららぽーと船橋で2018年 9月7日(金)より先行公開。9月15日(土)有楽町スバル座、9月29日(土)シネマート新宿ほか全国順次ロードショー。

 
Photo:Aya Kishimoto Styling:Shihomi Seki Hair&Make-up:Noriyoshi Yamada Inteview&Text:Yoko Kikuchi

 

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