琉球の風にたなびく芭蕉交布と、思わず触りたくなる丸みをもつパナリ焼。手仕事の目利きとして世界を旅する、中原慎一郎さんが訪ねたのは、沖縄・八重山諸島の西表島と石垣島。

古い物語に描かれたような景色の中で、アジアの大地と暮らしが生むプリミティブな美しさを見つけました。

 
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ものづくりも料理も
「素材の力」があればこそ

芭蕉畑にサヨナラを告げた後は、港へ戻ってフェリーで石垣島へ。ちょっぴりけだるい風に吹かれ、うつらうつら昼寝しながらの30分は極楽だ。

島に着いて最初の食事は、石垣に来たらここへ行かなくちゃ! の〈辺銀食堂〉。昼メニューから「西安風焼きすば」を選んだ中原さんに、「大正解! うれしいな、これ選んでくれて。ビールに合う焼きそばをつくりたくて考えたの」と、とびきりの笑顔で応える店主の辺銀愛理さん。

しばらくして出てきたそれは、カリカリふわっなアジアン卵焼きをのせた焼きそばで、卵焼きの下にはモチモチの特製麺。これを一緒に食べるのだから、おいしくないワケがない。

にんじんのシリシリやパパイアなど島野菜がいちいち旨いことにも目を丸くしつつ、西表島でパナリ焼と芭蕉交布を見てきたことを愛理さんに話す。

「それなら石垣の手仕事も訪ねなくちゃね。アダンの葉でつくる琉球パナマ帽、見たくない?」。(琉球パナマ帽って何?)と考えている間に、てきぱき連絡を取ってくれた。
 

石垣島〈やちむん館・工房 紗夢紗蘿〉で。

沖縄の民具を扱う〈やちむん館〉を訪ねると、庭で「ぼーしくまー石垣島」の面々が琉球パナマ帽を編んでいた。それは、沖縄特産の植物アダンの葉で編んだ帽子のことで、「ぼーしくまー」とはパナマ帽をつくる人という意味だとか。

戦前に沖縄の工芸として欧米で人気を集めたこの手仕事を再現する活動が、琉球パナマ帽づくりの名手、木村麗子さんを中心に広がっているらしい。
 

トゲトゲのアダンの葉を細いリボン状にしてから編む琉球パナマ帽。

アダンはアロエを巨大にしたような植物で、葉に鋭いトゲがある。それを指で3枚におろし、パスタをつくる製麺機でなめし、カッターでリボン状に割いて、と手間ひまかけて下準備をし、コツコツと編んでいく。

「天然素材なので、同じに編んでも柄や色の出方が違う。でも素材が力強いんでね、どんな形に編んでもピタッと決まるんです」と、編み手のひとりが言う。

たしかに、八重山のものづくりは「素材が力強い」のだ。「焼き物も布も料理も、素材がしっかりしていてプリミティブな力がある。素材に力があれば、時代に合わせて形を変えてもよさは伝わるんだと改めて思いました。芭蕉布の蚊帳が “バナナファブリック” と呼ばれて海外のインテリアになるなんて、最高じゃないですか」と中原さん。さらに印象的だったのは「島と島の近さ」だった、とも。
 

石垣島の離島ターミナルに具志堅用高氏の金の銅像!

「フェリーで気軽に行き来できる距離的な近さも楽しかったし、文化の共通点や人間関係の密接さを感じたのも面白かった。石垣さんが “アジアの手仕事” と言っていたけれど、自分たちの島だけを見るんじゃなくて、八重山諸島という大きなグループで考えてるんですよね」

そういえば、中原さんも話を聞くだけでなく、メキシコの土器やアメリカのコットンなど、海外のものづくりの話を伝えていた。受け取るだけの旅ではなく、こちらも何かを残していく旅。嘉陽さんも石垣さんも目をキラキラさせながら中原さんの話を聞いていましたよ?
 

画像: 天然記念物マングローブの群落が見られる西表島の仲間川。

天然記念物マングローブの群落が見られる西表島の仲間川。

「面倒だからと端折られがちな部分を、ちゃんとルーツの通りの手間と時間をかけてつくっているし、そういう環境に自分たちが居られることを大事にしていたでしょう。それは、ルーツを大切にするアメリカのものづくりと似てるなって思ったんです。そして、伝統工芸を繋げていくには、技術や素材より先に、まずものづくりの楽しさを伝えなきゃダメなんだとも感じたかな。だって、誇りをもって楽しそうにものをつくる姿に触れられたことが、今回の島旅でいちばん強く心に残っているから」

辺銀食堂
沖縄県石垣市字大川199-1
☎0980-88-7803
 
やちむん館・工房 紗さむさら夢紗蘿
沖縄県石垣市白保1960-15
☎0980-86-8960

 

The Local Favorites
Okinawa Address

石垣島〈でいご食堂〉の冷やし中華はふわふわ錦糸卵と大量のきゅうりが決め手。¥900(税込み)。/沖縄県石垣市新栄町21-20 ☎0980-82-7959
 

朝食におすすめ、石垣島の〈とうふの比嘉〉。/沖縄県石垣市字石垣570 ☎0980-82-4806
 

沖縄生まれの品種「ピーチパイン」は〈西表島ひらい農園〉で。とんでもなくジューシィ。濃厚な甘酸っぱさが口いっぱいに広がる。/沖縄県八重山郡竹富町字上原681-2 ☎080-8563-6690
 

八重山そばなら〈新八食堂〉へ。鶏と豚とかつおの出汁がしみじみ旨い。野菜ソーキそば¥900(税込み)。/沖縄県八重山郡竹富町字上原870 ☎0980-85-6078

 

PROFILE

中原慎一郎 Shinichiro Nakahara
1971年鹿児島県生まれ。1940~60年代のモダンデザインや民藝をルーツとしたものづくりを提案する「ランドスケーププロダクツ」を立ち上げる。東京のショップ〈プレイマウンテン〉のほか、サンフランシスコの店舗も好調。

 
●情報は、2018年8月現在のものです。
Photo:Norio Kidera Text:Masae Wako

 

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