福岡が元気。中でもとくに元気なのが食の世界。福岡の元気の源は、元気な生産者にありました。

東京のワインバー〈アヒルストア〉の齊藤輝彦さんが、福岡の同世代の生産者を訪ね、元気の秘密を探ります。ユニークで進取の気性に富む生産者たちは、感性豊かで、おもしろい人たちばかりでした。

 

ちょっと変わってるけど
おもしろい人たちばかり

東京で店を開いて10年になる〈アヒルストア〉店主、齊藤輝彦さんが旅に出た。〈アヒルストア〉は、全国のワインバーなるもののお手本となった、すんごい店である。この店の登場が自然派ワインの人気を高め、立ち飲みの概念を変え、街に活気を与えた。

いまだに土曜日などは全国から「アヒル詣で」が絶えない。しかも、店主が威張っていたり、接客に差別があったりすることはない。フリの客にも常連さんにも、変わらぬやさしさで、ごく自然に接してくれる。それもまた「すんごい」理由の一つであるのだ。

さて、福岡へと旅に出ることになった齊藤さん、「実は僕、案外、腰が重い」んですと。そのせいで、なかなか生産者を訪ねたり、地方のレストランに行ってみたり、といった活動ができていなかったと言う。

そんな齊藤さんが重い腰をひょいと上げたのは、福岡におもしろそうな生産者、それも同世代の人たちがいるからだった。せっかくだから、あちこちのフェスティヴァンで出会う仲間の店も訪ねてみたかった。
 

そんなこんなでまず訪ねたのが、養豚&ハム・ソーセージ製造を手がける〈リバーワイルド〉。土手道の途中から、ヘアピンカーブどころじゃない鋭角カーブをキュインと曲がり、川沿いの道を走ると、まるで秘密の花園に続くような木立のトンネルが。そこを抜けて視界がパッと開けると、えらくカッコいい〈RIVERWILD〉の看板が現れる。その指示のままに森の中へ。

「こ、これはパラダイスだぁ」と齊藤さん、思わず声が出た。木々の中に佇むのは、カッコいい鉄の扉のカフェ。一瞬、どこの国にいるかわからなくなる。
 

画像: 杉さんの軽妙洒脱かつ真面目なトークに感動する。

杉さんの軽妙洒脱かつ真面目なトークに感動する。

カフェの奥からヌッと現れた、頭にタオルを巻いた代表の杉勝也さんの案内で、まずは豚舎へ。杉さんは農業大学を卒業してから動物用の薬品メーカーに勤務。その後、父親が始めた養豚業を継いで20年以上になる。「継いでから4年ほどやったけど、どうにもつまらん。どげんやったら楽しくなるか」と考えた杉さん、ハム工場を作り、加工品を作ってみることにした。
 

画像: 常に清潔に保たれた豚舎。仔豚ちゃんたちに齊藤さん、メロメロになる。

常に清潔に保たれた豚舎。仔豚ちゃんたちに齊藤さん、メロメロになる。

すると、豚の肉質が大事であることに気付き、頭数を減らし、よりよい豚を育てることにのめり込む。餌についても、同世代の、似たような環境の農家の人たちと手を結び、減農薬の柿や、葡萄、桃、莓、あるいは大吟醸酒の酒粕などを与えて育てている。

そうやって、近くの生産者同士が自然と連携を取り、イベントや食事会などを通して、楽しみながら刺激し合える環境ができているのも、杉さんパワーのなせるワザ。この農家グループの名、〈アグリパンクス〉という。ふむふむと話を聞きながら、齊藤さん、「ロックだなぁ」と感心しきりである。
 

豚舎で「うちのエース」のデュロック種と、杉さん。

豚舎の壁が、赤やオレンジなのにも驚いた。「まるで、ゴダールの映画みたいだ」と齊藤さんが言えば、「こういう色が豚が落ち着くと読んだもので」と杉さん。
 

画像: すぐそばにある、江戸時代にできたという、筑後川の水を水田にひく灌漑設備「山田堰」。

すぐそばにある、江戸時代にできたという、筑後川の水を水田にひく灌漑設備「山田堰」。

5年前には暴れ川(つまり、リバーワイルドってことですね)と呼ばれる目の前の筑後川が氾濫し、腰下まで浸水して200頭も豚が死んだ。それでも、親が残してくれた場所。移転するつもりはない。ワイルドで、どこまでもやさしい生き方だ。
 

筑後平野の大地の恵みを享受する〈いのうえファーム〉。別名〈農家井上〉。とれたて野菜の通信販売も行う。こちらは加工品用に、和樹さんが育てた野菜たち。

次に向かったのは〈いのうえファーム〉。井上和樹さんが丹精する、華小町やアイコなどのトマトにキュウリ、ナス、ピーマンなどが元気に育っているのだが、何と言っても注目は、奥様の亜矢さんが手がけるドライな加工品だ。
 

トマトに赤玉ネギ、スイカなど、もぎたてをすぐドライに。ギュッと旨みや甘みが凝縮され、生とは異次元のおいしさ。「これは完全に料理ですよ」と、齊藤さん、またまた感心するのだった。

リバーワイルド
福岡県うきは市吉井町橘田565
☎0943-75-5150

 

The Local Favorites
Fukuoka Address

〈とどろき酒店〉本店を表敬訪問。ワインや日本酒のラインナップをじっくりチェック。/福岡県福岡市博多区三筑2-2-31 ☎092-571-6304
 

フェスティヴァンでお世話になった〈クロマニヨン〉へ。メインは「活〆夏鹿ロースト」200g~(100g ¥2200・税込み)。/福岡県福岡市中央区大手門1-9-31 1F奥 ☎092-406-7487
 

〈クロマニヨン〉店主・市村大輔さん。
 

通好みの〈みやけうどん〉。セレクトは丸天かごぼう天うどんで。/福岡県福岡市博多区上呉服町10-24 ☎092-291-3453
 

つづく……
次回更新は、12月1日(土)です! お楽しみに!!

 

PROFILE

齊藤輝彦 Teruhiko Saito
東京・富ヶ谷のワインバー〈アヒルストア〉店主。設計事務所、ランチ弁当の屋台運営などを経て、2008年に妹の和歌子さんと開いた店は、ワインと料理、手作りパンを気軽に楽しめる超人気店に。

 
●情報は、2018年9月現在のものです。
Photo:Norio Kidera Text:Michiko Watanabe

 

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