福岡が元気。中でもとくに元気なのが食の世界。福岡の元気の源は、元気な生産者にありました。

東京のワインバー〈アヒルストア〉の齊藤輝彦さんが、福岡の同世代の生産者を訪ね、元気の秘密を探ります。ユニークで進取の気性に富む生産者たちは、感性豊かで、おもしろい人たちばかりでした。

 

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自然からの恵みを肌で感じる製塩所

画像: 「またいちの塩」を作る〈工房とったん〉。まさに糸島半島の突端にある。天気がよければ、壱岐島も望める。この何ともいえない手作り感が親しみを増し、代表のキャラが人気を呼ぶ。楽しい場所だ。

「またいちの塩」を作る〈工房とったん〉。まさに糸島半島の突端にある。天気がよければ、壱岐島も望める。この何ともいえない手作り感が親しみを増し、代表のキャラが人気を呼ぶ。楽しい場所だ。

太陽の光が肌を刺すような暑い日に、製塩所〈工房とったん〉へ、塩ができるまでを見学に。名前の如く、糸島半島の突端にある。この先には道もないし、人家もない。広大な土地である。ここもまた、木立の間の砂利道を抜けると一気に視界が広がり、目の前に海が現れる。「ここもパラダイスへの入り口だ」と齊藤さん。海は青く澄み、空が高い。

ここでできる塩の名は「またいちの塩」。またいちは又一。代表である平川秀一さんの、父・会長の名前とか。秀一さんは和食の板前。塩ひとつで、料理がおいしくもなれば、まずくもなる、なんてことを骨身にしみて感じている人だ。

「海水次第で、塩の味が変わる。いい塩ができる海水を求めるうち、この海に辿り着いた。ここは、玄界灘の内海と外海がぶつかるところなんです。内海は養分豊富、外海は常に動いているから新しくてきれい。山と海の豊かなミネラルが混ざっているんです」。
 

画像: まるで、現代アートのオブジェを見るように、立体式塩田に見入る齊藤さん。柱は山から切ってきた杉。潮水が伝うのは、竹。これをこつこつ作ったのだからすごい。

まるで、現代アートのオブジェを見るように、立体式塩田に見入る齊藤さん。柱は山から切ってきた杉。潮水が伝うのは、竹。これをこつこつ作ったのだからすごい。

海水がとくにクリアな日に汲み上げ、立体式塩田の上から竹を伝わせて落とし、また上に上げて、と循環させる。この竹と杉の木でできた立体式塩田というのが、もう壮大なオブジェのよう。「これが塩を作る設備とは思えない。まるでアート作品ですね」と齊藤さんが言えば、「昔からある方法なんです。でも、天候に左右される。雨が降ったり、風が強いとできません」と平川さん。
 

画像: 猛烈な暑さの中、真剣勝負は続く。少しでも間違えると雑味が入る。やさしくやさしく、混ぜていく。

猛烈な暑さの中、真剣勝負は続く。少しでも間違えると雑味が入る。やさしくやさしく、混ぜていく。

10日ほど循環させていくと、海水が濃縮され、1/3量になる。それを今度は平釜に移し、薪をくべて、少しずつ少しずつ煮詰めていく。熱源は薪ですよ、薪。秀一さんの額からは玉の汗。こんな作業を3日続ける。最初は大きな釜で2日。小さな釜に移してさらに1日。不純物を丁寧に取り除きながら、煮詰めていくのである。温度は60℃。

「肉でも卵でも、60℃という温度帯は大事でしょ」
 

画像: 「これが本物のフルール・ド・セル」と手渡された結晶は、どれもきれいなピラミッド形をしていて不思議。何だか、スピリチュアルなものさえ感じる。そういえば、卑弥呼伝説もこのあたり……。

「これが本物のフルール・ド・セル」と手渡された結晶は、どれもきれいなピラミッド形をしていて不思議。何だか、スピリチュアルなものさえ感じる。そういえば、卑弥呼伝説もこのあたり……。

そうやって仕上げの段階になったとき、一番最初にできる結晶を見せてくれた。これが、何とも美しい透明のピラミッド形の結晶。「大気温など、すべての条件が整わないとできないんです。いつもできるわけではありません」。あらら、我々はラッキーだったみたいだ。齊藤さんは「肉を焼いた上にのせたら、芸術品みたいになるね」と。

「これが、ほんとうのフルール・ド・セル(花塩)なんです。これはスペシャル。大切に採取します」と、秀一さん。フランスのフルール・ド・セルとはまったく違うものだ。食べてみると、雑味がなく、辛みが柔らかくて旨みを感じる塩だ。ンまい!

釜で3日間煮詰めてできた塩は、さらに木樽で1日寝かせてニガリを取って、乾燥作業となる。この塩、手間暇かけまくってできる、すごい塩だったのである。
 

 
さて、この製塩所にはいくつもの仕掛けが隠されている。秀一さんの遊び心だが、宝探し的にも楽しめる。自慢の塩や花塩プリン、サンドイッチなど軽食を販売するショップ(売店!?)はもちろんのこと、そこかしこにも手作り感があふれているのだ。

まず、駐車場から工房に進む入り口の看板の「塩」の字。おそらく元テーブルであったろう丸い接ぎ木の板に、細かい木片を接ぎ合わせて文字がかたどられている。ショップも工房もDIYの極致。ベンチや展望台も、もちろん手作り。
 

〈工房とったん〉で買った「塩ジンジャー」200mL ¥324(税込み)。

しつこいほど書かれている「この先、トイレなし」の看板も愉快だし、工房の煙突には「サンタさん、お断り」、展望台の上がり口には、「トンダリハネタリセンデネ。コワレルヨ」とある。もちろん、すべて手書き。ペット、車、バイク、チャリ進入禁止の看板もイラスト入りの手作りである。ふふっと笑っちゃう要素満載で、秀一ワールド全開といったところだ。

「いらしてくださるお客様をエンターテインしたい」。はい、そのお気持ち、十分に感じることができました。いやぁ、楽しい。

またいちの塩 製塩所 工房とったん
福岡県糸島市志摩芥屋3757
☎092-330-8732

 

The Local Favorites
Fukuoka Address

〈 一膳めし 青木堂〉のふわふわオムライス(¥590・税込み)。/福岡県福岡市中央区大名1-11-28 ☎092-751-0144
 

朝食にも昼食にもおすすめの、製麺所が営むうどん屋〈めん処三喜〉。定食もあるが、ここはうどんでしょ。いえいえ、イチ押しは「和風らぁめん」¥430(税込み)だ。/福岡県福岡市中央区春吉1-7-1 ☎092-761-0225
 

名店〈馬上荘〉の名物、一口サイズのほわっほわの餃子。注文を受けてから、皮をのばし始める。10個 ¥500(税込み)。/福岡県福岡市早良区西新1-7-6 ☎092-831-6152
 

〈捏製作所〉の「つくね五種盛り合わせ」1人前 ¥850(税込み)。口の中でいろんな味が弾ける。/福岡県福岡市早良区藤崎1-14-5 大産藤崎コーポ103 ☎092-833-5666

 
つづく……
次回更新は、12月15日(土)です! お楽しみに!!

 

PROFILE

齊藤輝彦 Teruhiko Saito
東京・富ヶ谷のワインバー〈アヒルストア〉店主。設計事務所、ランチ弁当の屋台運営などを経て、2008年に妹の和歌子さんと開いた店は、ワインと料理、手作りパンを気軽に楽しめる超人気店に。

 
●情報は、2018年9月現在のものです。
Photo:Norio Kidera Text:Michiko Watanabe

 

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