SDGsへの取り組みが遅れていると言われる日本。しかし全国各地を見渡すと、草の根的に新しい動きがはじまっていました。ここでは、一歩先を行く国内の取り組みをご紹介します。

一年の半分近くは冬。マイナス30度以下を記録する日本の最寒地域、北海道下川町。東京23区とほぼ同じ面積の約9割が森林に覆われ、1980年には人口減少率北海道ワースト1を記録したことも。だが、この町は今、SDGs未来都市として注目を集めています。

画像1: 豊かな森林で地域再生を実現した、SDGs未来都市・北海道下川町

  

豊かな森林資源で地域再生。
自然と共生し、人が集う町

画像: 下川町の町木、トドマツ。

下川町の町木、トドマツ。

下川町が地域活性化に向けて着目したのは豊かな森林資源。森を適切に管理し、建材や板材にして新しい産業や雇用を生み出した。
 

画像: 敷地内の木質バイオマスボイラーで間伐材のチップを燃焼し、地下配管を通して各家庭へ熱を供給。

敷地内の木質バイオマスボイラーで間伐材のチップを燃焼し、地下配管を通して各家庭へ熱を供給。

未活用の林地残材はバイオマス燃料として、町全体のエネルギー自給を図り、最後まで使い切る。
 

深刻化する少子高齢化問題については、過疎化が進む一の橋地区に「一の橋バイオビレッジ」を建設し、解決の糸口を見出した。点在していた高齢者の住宅を屋根付きの通路で結び、歩いて行き来ができるように。
 

画像: 無農薬ハーブで化粧品を作る「ソーリー工房」。全身に使える保湿用オイル「カレンデュラ・カモミールオイル(左)」、化粧水や入浴剤にもなる「ハーブチンキ カモミール(中)、カレンデュラ(右)」。

無農薬ハーブで化粧品を作る「ソーリー工房」。全身に使える保湿用オイル「カレンデュラ・カモミールオイル(左)」、化粧水や入浴剤にもなる「ハーブチンキ カモミール(中)、カレンデュラ(右)」。

地域おこし協力隊制度を利用し、町外からの移住を積極的に受け入れ、高齢者と若い世帯の混住を実現。協力隊の中には「ソーリー工房」の二人の若い女性のように敷地内の畑で育てたハーブで作る化粧品会社を立ち上げた人もいる。また、地元食材を使った料理を提供するカフェを併設し、町内外の人々の交流の場として活用している。

森に身近な暮らしに憧れて移住する人が増え、6年前からは人口転入超過の年もある。森の資源で人を呼び、持続可能な町を作る。下川町の再生物語はこれからも続いていく。
 

駅カフェ イチノハシ
北海道上川郡下川町一の橋603-2
☎01655-6-7878
営業時間:11:30〜13:30(ランチ)、15:00〜16:30(カフェ)
定休日:火・水
 
一の橋バイオビレッジ〈宿泊ハウス〉
☎01655-4-2511(商工観光担当)
一般の人も宿泊が可能。

 

トドマツの枝葉を活用し、
森の香りを暮らしに届ける

画像: 天然のトドマツが生きる自分たちの森で作業中。将来のことを話しあったり、山遊びをしたりもする大切な場所だ。

天然のトドマツが生きる自分たちの森で作業中。将来のことを話しあったり、山遊びをしたりもする大切な場所だ。

下川町のあちこちで目にするトドマツ。田邊真理恵さん、亀山範子さん率いる〈フプの森〉は森の手入れをするときに伐った木の枝葉の部分を活用して、香り豊かな精油やそれを生かした製品を作っている。
 

画像: 葉をカゴいっぱいに詰めて蒸留釜へ。蒸気を送り込み、植物の精油成分を気化させ、冷却。液体に戻った精油を抽出する製法は至ってシンプル。「だからこそ調整が難しいんです」と亀山さん。

葉をカゴいっぱいに詰めて蒸留釜へ。蒸気を送り込み、植物の精油成分を気化させ、冷却。液体に戻った精油を抽出する製法は至ってシンプル。「だからこそ調整が難しいんです」と亀山さん。

原料を採取するのはFSCR森林認証を受けた森のみ。伐った木の幹から枝葉を取り、大きな袋を葉でいっぱいに。約20㎏にもなった重たい袋を抱え、息を切らしながら森の坂道を登る。これを繰り返し、何袋にもなったトドマツの葉を蒸留工場に持ち帰る。4つの釜が連なった蒸留器で約2時間じっくり葉を蒸しても、採れる精油はわずかなもの。合わせて抽出できる芳香蒸留水も活用し、自社商品をコツコツと作っている。
 

画像: コスメと生活雑貨のブランド〈ナルーク〉。エッセンシャルオイル、リネンウォーターやキャンドルなどが揃う。

コスメと生活雑貨のブランド〈ナルーク〉。エッセンシャルオイル、リネンウォーターやキャンドルなどが揃う。

また、北海道モミの香りをメインにしたブランド〈フプの森〉の他に、より多くの人に森の香りを楽しんでもらいたいとコスメや生活雑貨をラインナップした〈ナルーク〉を2015年にスタート。だが、夢は事業拡大ではない。森の恵みを多くの人と分け合い、下川町の森林事業を知ってもらうこと。だから、小規模でもきちんとコンセプトが伝わるものを長く作り続けることに意味があると田邊さん。

「4年前には自分たちの森を買いました。いつか森の近くに拠点を持って、お客さんを迎え入れ、ワークショップも開きたい。森に包まれた心地よさを体感してもらえたら」
 

(左から)亀山範子さん、田邊真理恵さん、安松谷千世さん。それぞれ、森の暮らしに憧れ、道内外から下川町に引っ越してきた。

フプの森
北海道上川郡下川町北町609
☎01655-4-3223
https://fupunomori.net/
商品はオンラインショップで全国配送可能。

 

森で生きた時間と繋がる、
木の表情を生かした器

画像: 加工機を使って木材を器の形に削り出し、サンドペーパーで研磨。

加工機を使って木材を器の形に削り出し、サンドペーパーで研磨。

小鳥や木の葉など自然をモチーフにした作品で知られる木工作家の臼田健二さん。3年前、北海道東川町から下川町へ引越した。そのきっかけは、ふと頭をよぎった小さな疑問。

「ふだん使っている木材はどこから来ているのか。調べたらほとんど外国産だった。北海道に木はたくさんあるのになぜだろうって」
 

画像: くるみのオイル、ミツロウとひまわり油で仕上げ。ひまわり油は隣の名寄市で採れたもの。「くるみ油も地元のものを使いたいのですが、入手できなくてフランス産です」と少し悔しそうな臼田さん。

くるみのオイル、ミツロウとひまわり油で仕上げ。ひまわり油は隣の名寄市で採れたもの。「くるみ油も地元のものを使いたいのですが、入手できなくてフランス産です」と少し悔しそうな臼田さん。

道産の広葉樹は主にパルプ材になっていた。長い年月をかけて作られた美しい木目は紙になればわからない。木が生きた証を残す方法はないか。考えた末、木の器を作ることに。

「細い木材は家具には使えないし、太い木であっても曲がっていたり、節が多いとパルプ材になります。器作りがいいのは、太い幹からは大きい器を、細い枝からは小さい器を作れるところ。節や割れも避けて作れるので、無駄があまり出ないんですよ」

森林資源活用を推進する下川町に住めば地元の木材を使って創作ができることも知った。

「魅力でしたね。環境未来都市だというのもいいなと思ってすぐ住むことを決めました」
 

画像: ナラ、ニレ、カエデなどの器が並ぶ棚。一つの木からマトリョーシカのようにサイズ違いで器を作っているのがわかる。

ナラ、ニレ、カエデなどの器が並ぶ棚。一つの木からマトリョーシカのようにサイズ違いで器を作っているのがわかる。

現在は町が管理する木工施設にアトリエを構え、近くのパルプ工場から譲り受けた木材を使って黙々と作品を作る日々。制作過程で出た端材はバイオマスの燃料やパルプ材として回収してもらう。森の恵みをできる限り有効活用したい。臼田さんの思いから、美しい木目を生かした器が生み出されている。
 

クラフト蒼
北海道上川郡下川町緑町下川町 木工芸センター内
☎01655-4-3835
http://www.craft-so.com/
 
ウッドボウルや自然をモチーフにした木工クラフトを手がける臼田さんのアトリエ。作品はオンラインストアや展示会などで購入可能。2019年1月16日〜21日は南青山〈うつわ楓〉で二人展を開催。

 

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画像: 森で生きた時間と繋がる、 木の表情を生かした器

 
●情報は、FRaU2019年1月号発売時点のものです。
Photo:Akiko Baba Text:Mariko Uramoto Edit:Emi Fukushima

 

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