SDGs への取り組みが遅れていると言われる日本。しかし全国各地を見渡すと、草の根的に新しい動きがはじまっていました。ここでは、一歩先を行く国内の取り組みをご紹介します。

店を開くのは週3日。棚に並ぶのはハード系のパン4つだけ。かなり風変わりな店だが、おいしいパンを求めて多くのお客さんが訪れる。〈ブーランジェリー・ドリアン〉は、三代目店主・田村陽至さんの思い切った発想でパン屋の常識を次々と覆している。

画像1: 手抜きするからおいしい!? “捨てないパン屋” の働き方とは?【SDGs国内の取り組み】

 

手抜きするからおいしい。
未来に続く捨てないパン屋

画像: 人の顔よりも大きい「カンパーニュ」。石臼挽きした北海道産有機小麦と自家製の自然酵母を配合。ライ麦と合わせてコク豊かな風味に。日が経つにつれ、皮がしっとりと馴染み、麦の素朴なカラメル香が立ってくる。冷蔵保存で2〜3週間保存が可能。ほかには、ミネラル分を多く含んだ小麦で作った「ブロン」、貴重なスペルト小麦の「エポートル」、平飼い卵と発酵バターがたっぷりの「ブリオッシュ」がある。

人の顔よりも大きい「カンパーニュ」。石臼挽きした北海道産有機小麦と自家製の自然酵母を配合。ライ麦と合わせてコク豊かな風味に。日が経つにつれ、皮がしっとりと馴染み、麦の素朴なカラメル香が立ってくる。冷蔵保存で2〜3週間保存が可能。ほかには、ミネラル分を多く含んだ小麦で作った「ブロン」、貴重なスペルト小麦の「エポートル」、平飼い卵と発酵バターがたっぷりの「ブリオッシュ」がある。

約15年前、田村さんが父親の手伝いを始めた頃の店には菓子パン、惣菜パン、サンドイッチなど約40種類がずらりと並んでいた。当時は夜11時頃に起きて工房へ。材料を計量し、生地を発酵させ、捏ねて二次発酵。それから成形して焼く。その工程をパンの種類だけ繰り返し、夕方にやっと仕事が終わるハードな日々。

一生懸命焼いても、売れ残ったパンは廃棄しなくてはいけない。20リットルの袋にパンがいっぱいになる日は何度もあった。どうにかして変えないと。そう思い、まずは日持ちしないパンを作るのをやめた。2013年には、新設した薪窯で焼く香ばしいカンパーニュをメインにすることに。
 

工房併設の〈ブーランジェリー・ドリアン 堀越セルフサービス店〉は無人販売。客がパンを袋に詰め、代金を籠に入れる。買いやすい価格でパンを提供するため人件費を見直した結果だ。

廃棄量はぐっと減ったが、人気が出るにつれ忙しさに拍車がかかる。スタッフにパン作りを教える時間すらない。今は体力があってなんとかやっているけど、こんな働き方はずっとは続かないだろう。そう思っていた頃、以前修業したフランスのパン屋から、日本人の職人を探していると連絡が入った。そこでは、スタッフ全員がゆっくり昼食をとる余裕があった。働き方を見直すチャンスかも。家族やスタッフに話し、店を休んで渡仏を決意。

事情があり、その店で働くことは叶わなかったが、偶然訪れたオーストリアのパン屋を手伝わせてもらったことが転機になった。そこでは朝8時に作業を開始し、昼の12時に終わる。日本にいる時の3分の1ほどしか働いていない。それでもパンはよく売れ、廃棄も少ない。
 

その日のパンを焼き終えたら、翌日分の材料を切り分けて冷蔵保存。これで翌朝の仕事量がぐっと減る。

「生地は前日に計量して、捏ねて冷蔵発酵。二次発酵という概念がなく、翌朝は焼くだけ。あちこちで手を抜いていた。でも、食べると圧倒的にうちのよりおいしいんです。きちんとした材料といい種菌があれば、短時間でもおいしいパンは作れると気づかされました」
 

画像: 材料は滋賀県産減農薬栽培のスペルト小麦、北海道産有機栽培小麦など。国産のいい材料がなければパンは作らないのがポリシー。

材料は滋賀県産減農薬栽培のスペルト小麦、北海道産有機栽培小麦など。国産のいい材料がなければパンは作らないのがポリシー。

帰国後はそのスタイルを取り入れ、店を再開。材料は主に国産有機小麦にした。

「安心して食べられるパンを求めていたお客さんも増え、有機小麦の農家さんも喜んでくれる。廃棄の量を減らせたことも嬉しかった」

日本ではまだ珍しい薪窯パンはヨーロッパの田舎町で受け継がれている伝統製法。それが持続可能なパン屋のあり方かも、という。

「ヨーロッパでパンは日常食なので安くておいしいものを出すのが当たり前。だから、いかに労力を減らしていいものを作るか知恵を絞った結果が薪窯製法だと思うんです。新しさだけで勝負するパン屋はいつか飽きられるし、それでは職人がどんどん疲弊していく。無理せず続けられるパン屋への道は伝統から学ぶことがたくさんある」

ふわっと小麦の香りが立つパンを笑顔で作る田村さん。手抜きするぐらいがちょうどいい。楽しむ余裕ができますよと教えてくれた。
 

ブーランジェリー・ドリアン 堀越セルフサービス店
広島県広島市南区堀越2-8-22
☎082-224-6191
営業日:金・土
営業時間:8:00〜11:00
田村さんの奥様が店に立つ八丁堀店は木・金・土の週3日営業。オンラインストアの注文は随時。
http://derien.jp/

 

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画像: 手抜きするからおいしい。 未来に続く捨てないパン屋

 
●情報は、FRaU2019年1月号発売時点のものです。
Photo:Koichi Tanoue Text:Mariko Uramoto Edit:Emi Fukushima

 

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